第3章6話異世界初の巨大モール建設!~お正月のお参りで、大凶を引いた王女をマスコットとして拉致(スカウト)する~
クリスマスという狂乱の夜が明け、世界は一気に新年を迎えた。
俺――蓮のばら撒いた10万ポイントの財力により、異世界の広大な平原では、突如として巨大な鉄骨が組み上がり始めていた。異世界初の巨大ショッピングモール「メガしまくら & ハイパーユニクオ」の建設である。
「よし、モールが完成するまでの間、日本の伝統行事『初詣』をやるぞ」
俺はShopsの検索窓に『簡易神社セット、賽銭箱、おみくじ、正月衣装一式』と打ち込み、魔王城の敷地内に一瞬で立派な鳥居と社を爆誕させた。
「れ、蓮サマぁ……この『ふりそで』というお洋服、すっごく綺麗ですけど、帯がキツくて胸が強調されちゃいますぅ……!」
「ちょっとリリス、歩きにくいわよこれぇ。でも……網タイツのサンタ服より、なんだか高貴な感じがして悪くないわね……?」
スク水、ミニスカサンタを経て、今度は艶やかな振袖姿にアップグレードしたリリスとシルフ。和装による破壊力抜群のツインサキュバスが、お互いの帯を引っ張り合っている。眼福すぎる。
さらに、今回は男(?)連中の正月衣装も完璧に揃えていた。
「クハハハ! どうだ蓮! 我が輩のこの威厳に満ちた和の正装は! 動きやすく、かつ圧倒的な覇気を感じるぞ!」
そこにいたのは、最高級のシルクで編まれた漆黒の「紋付袴」に身を包んだ魔王だった。扇子を片手にドヤ顔を決めているが、頭にはまだ「謹賀新年」のハチマキが巻かれていて絶妙に胡散臭い。
そして、その横には……。
「グルルル……(主よ、なぜ我ともあろう者が、この頭にミカンを乗せて全身白いモチのようにならねばならんのだ……)」
圧倒的戦闘力を誇るバハムートが、まさかの「鏡餅の着ぐるみ」姿でこたつの横に鎮座させられていた。伝説の竜王、完全にお正月のお飾りデグレードである。
そんな、異世界で最も混沌とした神社に、カツン、カツンと上品な足音が響く。
「な、何なのですか、この不気味な赤い門(鳥居)は……! 救国のために『伝説の竜王』を探しに来たというのに、なぜ魔王軍が紋付袴を着てみかんを食べているのですか……!?」
現れたのは、プラチナブロンドの髪をなびかせ、豪華なドレスに身を包んだ、最高に気品溢れる美少女――隣国の第一王女、エリザベートだった。
国を滅ぼしかねないバハムートを味方につける(あるいは討伐する)ため、お忍びでやってきたらしい。
「ん? 誰だお前。お参りしに来たなら、まずはあっちでおみくじ引いて、すき焼きの残りの『お雑煮』でも食ってけよ」
「だ、誰がそのような怪しい施しを……! 私は断じて屈しませんわ!」
ツンとすまして睨みつけてくる王女エリザベート。だが、シルフから「これ、おみくじって言って、今年の運勢がわかる紙よ」と手渡されると、好奇心に負けてつい引き抜いてしまった。
ペラリと紙を開いた瞬間、王女の顔から血の気が引いた。
【運勢:大凶】
【願事:叶わない。国が滅ぶ】
【失物:見つからない。鏡餅(竜王)に食べられる】
【待人:来ない。むしろ紋付袴の魔王が来る】
現代日本の容赦ない『大凶』のテキストが、異世界の王女の心を的確にへし折った。
「う、嘘……私の国、滅ぶの……? 鏡餅に食べられるって……ひゃぅっ!?」
エリザベートがガタガタと震えながら視線を上げると、そこには鏡餅の姿で餅を丸呑みしているバハムート(竜王)と、紋付袴でコンソメパンチを食べている魔王がいた。情報量が多すぎて、王女の脳は完全にキャパオーバーを迎える。
「ふえぇ……もうダメですわ……お父様、お母様……我が王国は終わりですのよぅ……!」
ついにドレスのまま地面にへたり込み、ボロ泣きし始めるポンコツ王女。
「よし、大凶の呪いを解くために、現代日本のチートスイーツ『みたらし団子』と『甘酒』をShopsから召喚だ。ほら、食え」
「……はぐっ。……っ!? な、何ですかこの、甘じょっぱくて、モチモチした天上の食べ物はぁぁぁ!? おいしい、おいしいですわぁ!」
団子を一瞬で完食し、甘酒をクピクピと飲み干した王女は、すでに涙目ながらも胃袋を完全に掌握されていた。
「なぁ王女サマ。国を救いたいんだろ? だったら、あそこに建ててる『メガしまくら & ハイパーユニクオ』の巨大モールの広告塔になって、ウチのビジネスパートナー(マスコット)になれ。そうすれば、魔王軍も竜王も、お前の国には手を出さないって約束してやる」
「え……? 宣伝……するだけで、国が救われるのですか……?」
「ああ。ついでに、そのドレスじゃ動きにくいだろ。Shops製の一流ブランド服をやる」
「あったかい……! 何ですかこの、鳥の羽に包まれているような軽さと暖かさは……! わかりましたわ! 私は今日から、この『めがしまくら』の王女になりますわ!」
こうして、大凶のおみくじに絶望し、みたらし団子と防寒着に釣られたポンコツ王女エリザベートが、蓮のビジネス無双の新たな仲間に加わった。
「よし全員、新メンバーも増えたところで、建設中の巨大モールに乗り込むぞ! 異世界の商業を根こそぎ支配してやる!」
蓮の声に、紋付袴の魔王、鏡餅の竜王、W振袖サキュバス、そしてダウンジャケットを着た王女が「おおー!」と拳を突き上げる。
10万ポイントの大富豪・蓮の、異世界経済植民地化計画が、いよいよ本格的に動き出すのだった。




