第3章5話 異世界にメリークリスマス!~10万ポイントの大富豪はこたつですき焼きを喰らい、Wミニスカサンタに囲まれる~
「……なぁリリス、シルフ。お前らいい加減、その格好寒くないのか?」
売上金が10万ポイントを突破し、名実ともに異世界トップクラスの大富豪となった俺――蓮は、Shopsで召喚した「現代日本のこたつ」に下半身を突っ込みながら、目の前の光景にツッコミを入れていた。
異世界の季節は完全に冬。外は粉雪が舞い散っている。
だというのに、サキュバスのリリスと、その友人でありサキュバス界の重鎮である誘惑公爵サキュバス・ナイン シルフの二人は、未だに夏仕様のスクール水着姿だった。いくら魔族とはいえ、こたつから出ている上半身が寒さでガタガタと小刻みに震えている。
「ふ、ふえぇん……さ、寒いですぅ蓮サマ……! でも、サキュバスの正装はコレ(スク水)だって魔王様が言うからぁ……!」
「ちょっとリリス、この部屋の『こたつ』ってやつは最高だけど、冬のスク水はマジで尊厳破壊だわ。公爵の私がなんでこんな冷え性に悩まされなきゃいけないのよぉ!」
シルフも青い顔をして、リリスと一緒にこたつの布団にしがみついている。
「我が輩がいつまでもスク水でしろと言ったわけではない! 衣替えの予算をケチっただけだ!」
同じくこたつに潜り込み、みかんを剥いていた魔王がキレ気味に弁明する。その横では、伝説の竜王バハムートが犬のように丸くなって暖をとっていた。ドンキの駐車場メンバーと化した魔王軍の威厳は、すでにゼロである。
「よし、お前ら全員分の冬服をShopsで一括仕入れしてやる。ちょうど10万ポイント超えて使い道に困ってたんだ」
俺が不敵に笑うと、魔王軍の面々が「おおお……!」と色めき立った。
冬、そしてこたつ。現代日本人がやるべきイベントはただ一つ。クリスマスだ。
「Shops起動――検索ワード『クリスマス・パーティーセット、A5ランク黒毛和牛すき焼き、特大デコレーションケーキ、コスプレ衣装一式』。……よし、購入!」
脳内でポイントが引き落とされ、光の粒子とともに部屋の中に大量の段ボールと、魅惑の香りを放つ食材がドサドサとドロップした。
「な、なんだこの肉はぁぁぁ!? 霜降りが美しすぎる! 芸術か!?」
「この丸くて白い、イチゴが乗った魅惑の物体は……!?」
魔王とバハムートが高級食材に目を輝かせる。だが、俺が最初に手渡したのは、それぞれの配役が書かれた衣装の箱だった。
「いいから着替えろ。これが日本の伝統行事『クリスマス』の正装だ!」
数分後。部屋の空気は完全に「異世界のバグ」と化した。
「クハハハ! どうだ蓮! この真っ赤な防寒着、実に我が輩の覇道にふさわしいではないか! 髭もモコモコして暖かいぞ!」
そこにいたのは、悪のカリスマから「ただの陽気なサンタクロース」へと完全デグレードした魔王だった。ノリノリでShops製のフライドチキンを掲げている。
そして、その横には……。
「グルルル……(主よ、なぜ我ともあろう者が、この頭に二本のツノがついたカチューシャをせねばならんのだ……)」
圧倒的戦闘力を誇るバハムートが、哀愁漂う「トナカイ」の姿でこたつの横に座らされていた。完全に魔王サンタのソリを引かされるパシリの絵面である。
しかし、真の破壊力はその先にあった。
「蓮サマぁ、見てください! すっごく暖かくて、しかも可愛いですぅ!」
じゃじゃーんと箱から飛び出してきたリリスは、王道のミニスカサンタ姿。白のもこもこに真っ赤なミニスカート。スク水からのギャップが凄まじい。ただでさえ高いサキュバスの魅了スキルが、現代日本のあざとい衣装によって通常の3倍に跳ね上がっている。視線が釘付けになる。
さらに、もう一人のミニスカサンタ――ナイン シルフが、顔を真っ赤にして衣装の裾を引っ張りながら出てきた。
「な、なによこれぇ……! 確かに暖かいけど、リリスのより心なしか露出が高くない!? 胸元がシースルーだし、背中もガッツリ開いてるんだけどぉ!」
俺が仕入れたのは、公爵の気品(?)を引き立てる、少しセクシー路線のミニスカサンタ衣装だった。網タイツと絶対領域のコンボが容赦なく炸裂している。
「シルフちゃん、すっごく似合ってますぅ! ほら、蓮サマも鼻の下伸ばして見てますよ!」
「ちょっと、見ないでよ蓮! ……って、あれ? でもこれ、鏡で見ると……めちゃくちゃ可愛いじゃない……。悪くないわね……?」
サキュバス界のトップ層が、現代日本のコスプレ文化の深淵に触れ、新たな扉を開けた瞬間だった。
「よし、お着替えが終わったら、大富豪の打ち上げパーティー開始だ!」
グツグツと音を立てる割り下の海に、A5ランク黒毛和牛を投入する。
全員でこたつを囲み、一斉に肉を口に運んだ。
「ッッお、美味しいぃぃぃ!! お肉が口の中で溶けましたぁ!」
「なんという柔らかさだ! 我が輩、今まで貪り喰ってきた地獄の猛獣どもの肉は何だったのだ……!」
「グルゥゥゥン!(美味すぎる! ケーキという甘美な罠も止らん!)」
ミニスカサンタ、サンタ魔王、トナカイドラゴンが、こたつの中で足を蹴り合いながら、すき焼きとケーキを貪り食う地獄のような、いや天国のような贅沢空間。10万ポイントの財力が見せる、圧倒的な幸福の光景だった。
満腹になり、すっかり出来上がった魔王が、チキンの骨を片手に目をギラつかせた。
「おい、蓮。この『くりすます』という祭り、そしてこの『さんた』の衣装、さらにこの美味い飯……。これを異世界のバカどもに高値で売りつけたら、とんでもないシノギ(ビジネス)になるのではないか?」
「ふふん、気づいたか魔王」
俺はこたつでぬくぬくと温まりながら、不敵な笑みを浮かべた。
「冬の寒さに凍える異世界の連中に、この暖かくて最高なコスプレ衣装と、ご馳走を売る。そのためには、ただのネット通販じゃ足りない。圧倒的な実店舗……すべての商業を支配する『巨大な城』が必要だ」
「巨大な、城だと……?」
「ああ。次回のシノギは――異世界初にして最大の巨大ショッピングモール『メガしまくら & ハイパーユニクオ』の建築だ。異世界の物流を、根こそぎひっくり返してやるよ」
Wミニスカサンタの熱気に包まれながら、大富豪となった蓮の次なる悪魔的無双ビジネスの火蓋が、ここに切って落とされるのだった。




