第3章2話 異世界初の専門店!「しまくら」と「ユニクオ」のコンテナ仕入れ
ついにショップを開設
あの有名アパレルショップの名も、、!
「よーし、今日から個人せどりは卒業だ。俺たちの『ショップ』を開設する!」
俺――織田蓮がそう宣言した瞬間、こたつの中でみかんを剥いていたドンキの駐車場メンバーたちが一斉に顔を上げた。
「ショップだと? 主よ、それは一体どういうことだ?」
男子高校生スタイルの元魔王が、頭にネームランドのラベル【梱包アシスタント】を貼ったまま小首を傾げる。
「今までのように、誰かがフリマに出品した中古品を1点ずつ買うのは非効率だからな。ヘルカリShopsの機能を使って、現代日本の衣料品ベンダーから直卸しで『新品の服』をコンテナ単位で大量仕入れする。名付けて、異世界初のアパレル専門店『しまくら』、そして『ユニクオ』の経営だ!」
【現在の所持ポイント:6,000P】
個人アカウントの時は3,000ポイント前後でカツカツの取引をしていたが、ショップを開設した今の俺には「事業者向け一括バルク仕入れ」の権限がある。ポイントの価値が10倍、100倍の規模に跳ね上がるのだ。
俺はスマホの画面に新しく追加された『事業者専用仕入れモール』の検索窓に、日本のすべてのファッショントレンドと実用性を支える二大巨頭のパロディ型番を打ち込んだ。
『事業者卸 しまくら安心価格アソート 100着セット』
『バルク品 ユニクオ高品質フリース&極暖インナー 100着セット』
画面に表示されたのは、日本の地方都市のロードサイドを支配する、あの圧倒的な物量とコスパ。
『【事業者限定】しまくらプロデュース・トレンドカジュアル衣料 100着アソート(メンズ・レディース混合)。送料込み 3,000ポイント』
『【工場直送】ユニクオ仕様・超高密度フリース&機能性肌着 100着バルクパック。送料込み 3,000ポイント』
「ファッションセンター『しまくら』の安心価格と、世界を包む『ユニクオ』のテクノロジー……! 残高6,000P、全額一括投資ォォォ!!」
ピコン♪
【ショップ仕入れが完了しました! 魔王城前庭にコンテナを転送します】
ズガガガガガガガガッ!!!
魔王城の謁見の間の窓の外、広大な前庭に、ド派手な「しまくら」のロゴと「ユニクオ」の四角いロゴがペイントされた、超巨大な40フィートの鉄製貿易コンテナが2基、轟音を立てて降ってきた。
「な、なんだあの巨大な鉄の砦はぁぁぁ!?」
スクール水着の上にラップタオルを巻いたサキュバスのシルフが、驚きで胸元を抑える。
「ふふん、驚くのはまだ早いぜ。魔王、リリス、シルフ、バハムート! コンテナを開放しろ! 異世界の住人に、日本の『カジュアルファッション』の真髄を見せてやる!」
コンテナの頑丈なレバーを魔王が力任せに引き開けた瞬間――。
中から、ビニールできちんと個包装された、色鮮やかで新品の匂いがする大量の衣類が津波のように溢れ出てきた。
「おおおお! 触るだけで分かる、この圧倒的な生地の均一性と縫製の美しさ……! これがすべて新品だと!?」
ドカジャンを着た巨大トカゲ(バハムート)が前足でフリースを触りながら、そのなめらかさに目を見張る。
異世界の住人から見れば、それは【1ミリの綻びもなく、着用者に絶対的な清潔感と強靭な防御力を与える、天界の大量生産型聖衣『しまくら・ユニクオ』】。
異世界の高級仕立て屋が数ヶ月かけて作るシルクのローブすら、ユニクオの「フリース」の圧倒的な保温性と、しまくらの「安心価格」の前には、ただの「高くて重い布」に過ぎなかった。
「よし、仕入れは完璧だ。これより『ヘルカリShops:織田交易異世界支店』の販売を開始する!」
俺は城の門を全面開放し、アプリの集客機能(Shops専用広告)を最大出力で別サーバーに向けて発信した。
タイトルはシンプルかつ強力に。
『【公式Shops】日本直輸入! しまくら&ユニクオ秋の特大セール! 全品新品・送料込み50P均一!』
出品ボタンを、タップ。
……。
……。
ピピピピピピピピピピピピピピピピピピピピ!!!
その瞬間、俺のスマホのバイブレーションが火を噴き、画面の通知がマッハの速度でスクロールし始めた。
『【購入】しまくらロゴ入り裏起毛トレーナーが購入されました!』
『【購入】ユニクオ・極暖ヒートテックタイツが購入されました!』
『【購入】しまくら安心価格・お洒落チェック柄シャツが購入されました!』
「お、おい蓮! 通知が止まらん! 画面が真っ赤になって爆発しそうだぞ!?」
魔王が慌ててスマホを支える。
画面の向こうでは、服の概念やクオリティが中世レベルで止まっていた他サーバーの冒険者やエルフ、獣人たちが、『おい、あの50ポイントで買える聖衣、めちゃくちゃ軽くて温かいぞ!』『しまくらの服、デザインが豊富で超かわちい!』と大パニックを起こし、文字通りの「爆買い(サーバー負荷)」状態に突入していた。
ショップ機能の素晴らしいところは、個人取引のような「値切り交渉(膠着状態)」が一切ないことだ。提示した安心価格のまま、システムが全自動で即ポチ(決済)を繰り返していく。
「ガハハハ! 1着50Pが秒速で100回売れてる! 発送システム、全自動モード起動!」
コンテナから溢れ出た服が、購入された瞬間に次々と光の粒子に変わり、別サーバーのユーザーたちの元へ自動で発送されていく。それと同時に、俺の口座にポイントが怒涛の滝のように流れ込んできた。
ピコン♪ ピコン♪ ピコン♪
【売上金:5,000P】
【売上金:10,000P】
【売上金:15,000P】
「これぞショップ経営、これぞ大量流通の力だ!」
俺がバイヤーとしての絶頂に浸っていた、まさにその時。
突如として、城の前に広がっていた行列の空気が一変し、激しい地鳴りが響き渡った。
コンテナの前に現れたのは、しまくらのお洒落なワンピースを奪い合って血眼になっている、隣の武闘派サーバーの【オーク族の突撃隊長】と【エルフの聖弓騎士】だった。
おい人間! この『しまくら』とかいうブランドの、伸縮性が抜群で太った俺でも着られるストレッチジーンズは残りどこだ! 全部俺が力ずくで奪ってやる!」
「ふざけるな醜悪なオークめ、そのユニクオの『ウルトラライトダウン』は私が狙っていたものだ! 美しい我が弓の邪魔にならないこの軽さ、私のものだ!」
あまりの商品の良さに、異世界の種族同士が武器を構え、店前(魔王城の庭)でガチの流血沙汰(営業妨害)を起こそうとし始めたのだ。このままではショップの評価が下がり、コンプライアンス的に休店処分に追い込まれる。
(チッ、ショップが繁盛しすぎて『客層の治安』が悪化しやがったか……! だが、天下のしまくらとユニクオの売り場で、野蛮な揉め事は一切厳禁だ。現代日本の『あの最強の売り場管理アイテム』で、一瞬で整列させてやるよ!)
【現在のショップ売上金:18,000P(大爆発中)】
ショップの爆発的な利益を手にした蓮。
異世界初の「しまくら&ユニクオ」の売り場で勃発した客同士の暴動を鎮めるため、蓮が次に仕入れる、日本の商業施設ならどこにでもある「あの超定番の治安維持アイテム」とは――!?




