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第2章 7話 4,520円、日本のこたつが世界を救う(最終話)

3章は反応があれば書かせていただきたいと思います(*^^*)

【警告:最高執行官ゼノンの売却により、当アカウントは『ヘルカリ運営権』の51%を取得。あなたは公式を超越した、多次元宇宙フリマ交易の【筆頭株主(大魔王バイヤー)】に就任しました。アプリを最終アップデートします】

ピコン♪ ピコン♪ ピコン♪

俺――織田蓮のスマホから、まるでファンファーレのような電子音が鳴り響き、画面がゴールドに輝きだした。

最高執行官を「修羅場の同人アシスタント(スウェット仕様)」として4,500円で売り払った結果、まさかのアプリそのものを買収(掌握)してしまったのだ。

「お、おい蓮……! 赤いバグの光が消えて、世界が元に戻っていくぞ!」

子供部屋男子高校生スタイルの魔王がスマホを覗き込む。

「はわわ……もうBANされる心配はないのね? 私、もうプチプチを潰さなくていいのね!?」

ピンクのミニドレスを着たリリスが涙目で胸を撫で下ろす。

「……しかし人間よ。運営の脅威は去ったが、我らの神力や魔力はヘルカリに買い叩かれたままだ。これから我らは、このドンキの駐車場のような格好のまま、どう生きていけばよいのだ?」

緑のドカジャンを着て丸まっている巨大トカゲ(元創造神バハムート)が、切実な声を上げた。

確かに、こいつらは全員、俺が私利私欲のために出品して発送してしまったせいで、すっぽんぽんの無能力者(見た目はヤンキーの集まり)にデグレードしている。

(……へっ、元はと言えば俺のせどりバイヤーとしての強気な取引が原因だからな。株主になったんだ、最後はこれまでの売上金を全額ぶち込んで、この殺風景な魔王城(溜まり場)を『最高に快適な楽園』に変えてやるよ!)

【現在の所持ポイント:4,520P】

これまでの100均グッズ、高級アロマ、サンシェード、まとめ売り古着……すべての取引の集大成。4,000円台の予算があれば、日本の冬を完全に支配し、入った者すべての戦意を全自動で消失させる、現代日本が誇る『最強にして最凶の最終決戦兵器』が仕入れられる。

俺は検索窓に、全宇宙のバイヤーが恐れおののくその名称を打ち込んだ。

『新品 カジュアルこたつ 正方形』

タイムラインの最上部に、日本のリビングの王者が鎮座していた。

『【新品未使用】山善(YAMAZEN)カジュアルこたつ(75cm正方形・リバーシブル天板)。一人暮らし用に買いましたが使いませんでした。おまけのフリースこたつ布団付き! 送料込み4,500円。即購入大歓迎!』

「日本の冬の堕落を司る、絶対無力化の神の一柱……! 残高4,500P、全額ベットォォォ!!」

ピコン♪

【購入が完了しました! 発送ポケットをご確認ください】

発送ポケットから滑り出てきたのは、平べったい大きなダンボール箱。

俺は手際よくそれを開封し、謁見の間の冷たい大理石の床の真ん中に、4本の脚をガチッと組み立てて設置した。そして、おまけのふかふかしたフリース布団をふわりと掛け、リバーシブルの天板をドンと乗せる。

コードを壁の魔力コンセント(※プラグが奇跡的にぴったりはまった)に差し込み、スイッチを『強』に入れた。

「おい、お前ら。これが現代日本の最高峰の結界『KO-TA-TSU』だ。足を入れてみろ」

「む? なんだこの、お洒落な格子状の平たい机は……」

魔王、リリス、バハムートが、恐る恐るこたつの四方から足を滑り込ませた。

数秒後。

「「「…………ふぁあぁぁぁあ…………」」」

3人の口から、完全に魂の抜けたような気の抜けた声が同時に漏れた。

「あ、温かい……。我が黒炎の暗黒魔法など比較にならぬほど、足元からじわじわと、全自動で優しく包み込んでくれる……。もう一歩も動きたくない……」

男子高校生魔王が、そのまま天板に突っ伏してとろけていく。

「はわわ……心が、サキュバスとしての淫らな本能が、このふかふかの布団の中に吸い込まれて溶けていくわぁ……。もう一生ここでみかん食べてたい……」

キャバ嬢ドレスのリリスが、だらしなく這いつくばってこたつと同化していく。

「……極楽、これぞ極楽なり……。中綿のドカジャンとこたつのダブルの防護壁により、我が神としての尊厳は完全に消滅した。我は今日から、ただのコタツムリ(巨大トカゲ)として生きる……」

ドカジャンバハムートが、首までこたつに潜り込み、トロンとした目で尻尾をパタパタと振った。

異世界の最高幹部たちが、日本の暖房器具の前に、今度こそ分子レベルで完全に無力化(調教)された。

異世界の住人から見れば、それは【足を入れた者すべての戦意を強制的に剥奪し、あらゆる冷気や呪いを無効化して、永遠の怠惰へと誘う、天界の絶対封印結界『万魔滅殺の暖炉(アブソリュート・コタツ)』】。

日本のガチな家電メーカーが世に送り出すリビング家具の前に、異世界の魔王や神のプライドなど、ただの「冷え性」に過ぎなかった。

【売上金:0P(反映済み)。現在の所持ポイント:20P】

「よし、これで魔王城の平和(コンプライアンス)も永久に完璧だな」

俺は満足げに頷き、残った20ポイントで『即購入OK! 訳あり実家のみかん 1kg(20P)』を秒速でポチり、発送ポケットから出てきたみかんをこたつの天板の上にコロンと転がした。

「ほら、みかんだ。剥いてやるから大人しくしてろ」

「うむ、あざまる水産だ、蓮よ」

「蓮、私にも剥いてぇ〜」

「我がガレージ(こたつ)の王、蓮よ。我には皮ごと、ワンチャンよろしく頼む」

かつて世界を恐怖に陥れた魔王城の謁見の間は、今や、実家のリビング並みにアットホームな「ドンキの駐車場メンバーの溜まり場」へと完全変貌を遂げていた。

俺はスマホをポケットにしまい、自分もこたつの中へと滑り込む。

別サーバーからの刺客はもう来ない。なぜなら、俺はこのアプリの筆頭株主(大魔王バイヤー)だからな。これからは、こいつらを引き連れて、異世界中のあらゆるお宝を現代日本に出品し、日本の便利グッズを異世界に仕入れる、最強の「フリマ交易所」をここで経営していくつもりだ。

「さて、明日からは何を出品して、何を仕入れるかな……」

俺のせどりバイヤーとしての強気な取引(異世界無双)は、この暖かいこたつの中から、まだまだ始まったばかりだ。

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