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異世界では賢者になりたい。なお、脳筋です。  作者: 乙黒


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第6話 魔族との出会い

 僕はこの世界がどんな形をしているのか、本当に知らない。僕の住む村はどうやら世間とは隔絶されているようで、地図すら無かった。本当に森の獲物を狩るしか興味のない小さな村のようだ。

 住民も三十人ほどだしね。


 だから僕は自分の住んでいる国自体をあまり知らない。

 結構歩いたところに大きな街がある、と大人たちに言われたぐらいだ。行ったことはないけど。


 そんな僕が初めて遠出をしたので、テンションがすごく上がってしまった。


「いえーい! 神様見てるー?」


 僕は大きな月イリュジンに向かってピースした。

 昔に聞いた神話では、どうやらこの大地を作った神々の一柱が住んでいるらしい。だから神聖なものとして崇める者も村にいるので、僕も信心深く普段は頭を下げている。今は誰もいないからそんなことしないけど。


 そんなことを考えていると、鍬が下へと落ちていく。勢いが無くなったのだ。まあ、これぐらいだろう、と僕は下を覗き見た。ずいぶんと長い間落ちてから、僕は森に落下した。


「『念力テレキネシス』」


 僕は物体を浮かす簡単な魔法を使用して、その場に浮く。対象を動かす魔法だ。最初は小石しか浮かなかったけど、今ではこのように自分の体すらも動かせるようになった。


 普通に走った方が早いけど、落ちた時はこうやって浮くことができるのでとても便利な魔法である。

 魔法書の魔法って本当に便利なんだよね。


 そんな僕は普段歩いている山と、別の山に辿り着いた。

 うーん、なんか雰囲気が違うような感じがするけど、あまり違いはよくわからない。

 そもそも僕って狩人の訓練をあまり受けていないから、山についてもよく知らないからね。


 歩き方も知らないから、適当に山を歩く。

 夜の森は少し怖い気がするけど、僕には魔法があるから全然怖くない。最近知ったみたいだけど、僕の魔法って強いみたいだからね。


 そんな森の中を歩いていると、少し離れた場所で――爆発音が聞こえた。

 普通なら近づかないところだけど、今日の僕は狭い村から出て気分がよかったので近づいてみることにした。


 そんな村は赤々としていた。火がぼうぼうと燃え上がっているのだ。元は木の家が何個もあったのだろう。その全てが焼かれ、影があった。


「――人間とはこんなものか。酷く矮小な生き物だな。これなら赤子だって、喰えるものだ」


 そんな中心にいた影が、角の生えた人だった。

 あれが魔族かな?

 確か人類の敵、と村の誰かが行っていた気がする。普段は遠く離れた大陸にいるみたいだけど、時々人を襲いに来るみたいだ。

全く迷惑な話だ。

 なんだか面白そうだったので近づいてみることにした


「おや、まだ生き残りがいるみたいだ。どれ、我に喰われに来たのか? 大人しく逃げ回っていれば、命だけは助かるかも知れないのに」


 人と似たような姿をして、人と同じ言葉を喋るけど、なんだか考え方が違うみたい。僕は魔族も人も食べないからね。


「魔族って話通り人を食べるんだね。どうやら知識だけでは本当かどうか分からないから、勉強になるね」


 魔族って初めて見る。

 なんだか面白い存在みたいだ。


 頭に生えた二本の角は山羊のように立派で、服装は貴族のようにひらひらが多い服を着ている。この魔族の趣味なのかな。


「貴様、ふざけているのか?」


「別にふざけていないよ。本気だからね」


「よし、なら人思いに殺してやろう。貴様のような愚かでうるさい人間は、殺してから食べるに限る。死ね――」


 魔族は僕に向かって、炎の玉を放った。なんか黒色で禍々しかった。人一人なら軽く飲み込めるほどの大きな炎だ。子どもの僕なら簡単に死ぬだろう。

 ま、当たればだけど。


「――それが、魔族の魔法なの? なんだか色が違うみたいだね。技術体系が違うからかな?」


 僕は魔族の炎を『火炎放射フレイムスロワー』で簡単に打ち消して、ぱらぱらと舞う火の粉を見ていた。

 とても強い魔法だったけど、必死に鍛えた僕の魔法よりかは弱いみたいだね。


 強かったらすぐに逃げる用意はあったんだけど、これなら魔族にも僕の魔法は通じそうかな?


「――貴様、魔法使いか? 子供なのに大したものだ。我の魔法を相殺させるとはな。とはいえ、知らないのか? 魔族は人よりも強い魔力を持つ。今のは小手調べだ。次は全力でお前を殺してやろう」


「ふーん、それは楽しみだ」


 勝てなさそうだったらすぐに逃げるけどね。


「我の黒炎を防いだ貴様に経緯を払って、我が名の由来の魔法で殺してやろう。我は、灰のスタフティ、貴様をこの炎で灰に変えてやる――」


 なんだか大層に名乗った魔族は、空中に黒い炎の玉を幾つも生み出して、その全てを僕へとぶつけてきた。


 うーん、なんだかすごい魔法だ。きっとこの村の住民もこの炎で焼いたんだろうね。


 でも、当たらなければ意味ないね。


 僕は『鎮静サイレント』で音を消して、その間に鍛えた体で全力で魔族の後ろまで回り込んだ。

 賢い僕は魔法だけではなく、体も頑張って鍛えていたのだ。狩人の必須技能だから当たり前だけど。


「確かに当たれば強いかもね。――当たれば、だけど」


 僕は魔族の背後で、狡猾な笑みを浮かべながら言った。


「――なにっ?」


 魔族の驚いた顔が、僕にはとても嬉しかった。

 あれ、今の僕って頭良さそうじゃない?


 なんだかこの世界に来てから初めて現代人として、知的な行動を出来ているように思える。


「それで――君の魔法は終わりなの?」


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