第3話 どうやら魔法使いの先生は偏頭痛持ちらしい
そんなマイカの望む通り、村に魔法使いがやってきたのはそれから数日後のことだった。どうやら魔法学園のスカウトの為に、各村に魔法使いの派遣を行っているようだ。
魔法が使える者のスカウト、また魔力を持っている者に関しては魔法に目覚めさせて同じくスカウトを行うようだ。
僕たちの村にも何年かに一度来るようだ。普段は魔力を持っている者なんていないけれど、今回は僕がいる。
きっと僕のスカウトの為に来たんだと思うのだ! 僕は“黄金の血”持っているからね。
「私がこの村に派遣されたシルウィよ。宜しく〜!」
村にやってきた魔法使いは、分厚いローブからはみ出ている気がするボン・キュッ・ボンの金髪のお姉さんだった。なんだか馬鹿そうな気がするのは僕の気のせいだろう。
「あら、あなた、魔力があるじゃない〜! 意外ね! まさか“黄金の血”を持っているとは思わなかったわ!」
そう褒められたのは僕ではなく――
「え、私ですか」
――マイカだった。
どうやらマイカも魔法使いの素質である魔力を持っているようだ。水晶玉に手を翳し、少し照れたような顔をしている。
「坊やも魔力があるわね。何だか知っていたらしいけど」
僕も当然ながら魔力があるけど、何だか魔法を使えることも知られているらしい。腰に杖である木の棒をぶら下げているからかな?
もしくは僕から溢れ出る知性から、魔法が使えると悟られたのだろう。
よく分かる。
僕だって自分の顔を水たまりで見る度にとても聡明そうだと惚れ惚れするものだ。
「なんだか馬鹿みたいなことを考えている顔をしているね!」
そんな風に自惚れている僕をすぐにマイカが見つけるけど。
「僕のどこが馬鹿なんだよ」
はあ、分かっていないね、と僕は大きなため息を吐いた。
「うーん、逆に頭がいい要素がないんだけど、そのよく水が入った桶で顔を確認しているのは馬鹿としか思えないんだけどな」
だが、現代人だった僕は周りに鏡が多かったので顔を見るのは普通だったのだ。
やれやれ、これが異世界との違いかと僕は納得した。
「またなんか、変な勘違いしてそうだけど、べつにいいよ。今はそれより先生の方が重要だからね!」
呆れるように言うマイカは、すぐに魔法の先生へと振り返った。
「じゃあ、君たちに魔法を教えましょうか? この、上級魔法使いであるシルウィが! そう長くはこの村に滞在できないけどね!」
「上位の魔法使いなんてお姉さんはすごいですね!」
お姉さんの言葉にマイカが尊敬の眼差しを向けていた。
どうやら美人でナイスバディなお姉さんは、国の中でも偉い魔法使いのようだ。将来有望らしい。
「最も簡単な魔法の一つは、杖に光を灯す『ライチェス』ね。これは魔法使いにとっては必須技能よ。暗い夜でも明かりを灯すことができるからね」
シルウィさんから、僕とマイカは杖を受け取って、魔法を教わることになった。受け取った杖は白樺製であり、量産されている初心者用の杖の一つらしい。軽くて使いやすい杖だった。
「これで振ればいいんですね?」
「そうだよ〜! 呪文を唱えながら、魔法の骨子を考えるの。この魔法は魔力を光に変えて、ただ発光させるだけの魔法よ。仕組みは簡単。魔法の理論さえ考えれば、子どもでもすぐに発動できるわ」
なるほど。
聡明なる僕だと、きっと魔法名を唱えるだけで発動できるだろう。
シルウィさんの言う通り、『ライチェス』の仕組みを考える。どうやらこの魔法は杖の先に魔力を光に変えるだけの魔法だ。必要なのは最低限の魔力と、意識の集中、あとは杖という媒体に直接魔力を通すというコントロールだった。
「わっ! 出来ました!」
すぐにコツを掴んだマイカは、もう魔法を発動できるようになっていた。
「すぐに魔法を覚えるなんて、将来有望な子ね。じゃあ、君は、フリッシュ君はどう?」
やれやれ僕も魔法が使えるというところを、そろそろ見せておくか。
それも常日頃から訓練を行なっているので、マイカよりも優秀なところを見せないといけない。
この白樺の杖という普段よりも魔力の通りがいい媒体を通して、魔力を光へと変換する。さらに、マイカよりも優秀なところを見せつけたいから、いつもの訓練と同じように魔法に多くの魔力を注ぎ込んだ。
「『ライチェス』!」
「なんて魔力……!」
練習の成果を!
僕という偉大な魔法使いの魔法を!
「そんなに魔力を……! なんで最初から……駄目よ!」
先生の制止も聞かずに発動させた魔法は――爆発した。僕の白樺の杖が吹っ飛んでしまった。
ちなみに僕は無事だ。表面が焦げたけど、先生が気づいていないうちに腰の木の棒で治癒魔法を使った。一瞬で怪我も治った。
「これが『ライチェス』の真価か!」
失敗を隠すかのように僕はキリッとした顔をした。まるでこの発動の仕方が正しいかのように知的に振る舞うが、
「絶対に違うでしょ!」
マイカは大声で否定して、
「はあ、フリッシュ君、駄目よ――」
先生は困ったかのように眉間に手を当てていた。頭が痛いようだ。もしかして偏頭痛持ちなのかな?




