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異世界では賢者になりたい。なお、脳筋です。  作者: 乙黒


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第20話 スタンガンを持っている怖い女がいる

 僕は新たな可能性を探して、学園内の魔法具塔へとやってきた。そこでは魔法具を作るための職人がいて、彼らに師事する生徒がいるのだ。


 僕たちはまだだけど、後数年すれば魔法具科に進む生徒も現れると思う。


「あれ、フリッシュ君? どうしてこんなところにいるのですか?」


 僕が魔法具塔に入ろうとした時、どうやらカミーリャさんに見つかったようだ。


「魔法具に興味があってね。ここに調べに来たんだ」


「それは興味深いのです。是非、ご一緒しても宜しいですか?」


「もちろんだよ」


 僕は頷いた。

 この学校に通って長いカミーリャさんのほうが詳しいと思うからね。是非、魔法具について詳しいことを聞いてみよう。


「ここが魔法具塔です。フリッシュ君は来たことあるのですか?」


「あるよ。一階に杖制作室があるからね。何度も訪れているよ」


 本当はこことは別に魔杖塔もあるんだけど、ここでは初心者用を主に作っているようだ。

 魔法使いにとって杖は最も大切だから、魔杖塔一つだけでは足りなかったようだ。


「それは多分、フリッシュ君だけだと思います」


「そうかもね」


 僕以外に杖を壊している生徒なんて見たことないからね。そもそも杖はそう簡単に壊せるようなものではないのだ。


 僕たちは魔法具塔に入ると、すぐに杖を制作している人たちが目に入った。年上の学生たちが熱心に木工制作を行っている。


「フリッシュ君の興味があるのは上の階ですね? 特にどんな魔法具に興味があるのですか?」


「魔法を発動させるための魔法具かな。特に呪文を事前に唱えておく必要がある魔法具、あるいは呪文を唱える必要がない魔法具に興味があるんだ」


「なるほどです。それなら五階ですね。私も何度か訪れたことがあります」


 カミーリャさんの案内のもと、僕たちは上へと進む。


「カミーリャさんも魔法具に興味があるんだ?」


「ええ。私の魔法は“打ち出す魔法”ですから。何でも放つことが出来るので、魔法具を打ち出せば追加効果が狙えると思うのです。例えば爆発する玉や痺れる筒などです」


「恐ろしい魔法だね」


 人だったらすぐに死にそうな魔法だ。


「ええ、そうですね。でもまだ足りない気がするのです。もっと強くなるにはどうしたらいいのでしょうか?」


「それは分からないよ」


 まだ殺傷力を求めているカミーリャさんが、僕は恐ろしくなった。


 本当なら魔法って使えるだけでも便利だから、本当はそこまで破壊力っていらないんだよね。僕なんて鍛えすぎて今では通常魔法が範囲攻撃になっているから、周りを気にしないと使えないのが多いんだよね。


 全くもって不便である。


「ここが、魔法具の中でも特に“内蔵型”と呼ばれるものが主に開発されています」


 五階では数人の生徒が小包のような魔法具を作っている。


「内蔵型?」


 未だに授業で習っていない概念だったので、僕は首を捻った。


「ええ。杖は魔法を発動するための媒体なので、多種多様な魔法を発動させることが出来ますが、これらの魔法具は魔法を“内蔵”しています。中には魔力ですら持っているものもあります。必要なのは起動だけになります」


「おお! それは便利だね」


「でもこれには弱点があって、内蔵型魔法具に覚えさせることができる魔法は数種類が限度です。杖のように多種多様の魔法を発動させることは出来ません」


「へえ」


「さらに一つ一つが高価ですので、簡単に手が入るものではないのです。特に私たちのような平民には」


「そうだね」


 僕は頷いた。

 平民である僕たちは貴族とは違い無料で学園に通えて、金銭面でのサポートも幾つかあるけど、得られるお小遣いはそれほど多くない。学生が作っているといっても一つ一つが手作りで高価なので、簡単に買えるものではないらしい。


 だけど、侯爵家なら簡単に手が入ると思った。高価と言っても、テレサ様が持っている杖よりかは手間がかかってなさそうだからである。


「そう言えばカミーリャさんは魔法具を持っているの?」


「持っています。このようにいつも懐に。これは雷を出す筒ですね。ぶつかれば相手を気絶させるほどです。もう魔力も注ぎ終わっているので、あとは衝撃を与えるだけですね」


 スタンガンのようなものをカミーリャさんは取り出した。


「へえ。そういうのだと、衝撃だけで済むんだね。他の仕組みもあるの?」


「あります。衝撃だけではなく、紐を引っ張るもの、光に晒すもの、それ以外にも起動方法は山のようにあるようです。もちろん、出す魔法も――」


 僕たちはそれから最新の魔法具について、先輩たちの説明を受けた。


 興味を持ったものといえば、メガネをかけた頭の良さそうな学者のような人が開発したものだった。


ネバネバのネットのような罠についての説明だったり、地面から土を吸収してガトリングのように弾丸を打ち出す大きな箱。さらには魔力を注ぐだけで歌って踊る人形には、現代を見たかのように懐かしくなった。


攻撃魔法を再現する魔法具もあったが、一つだけ僕には気にかかるものがあった。


 魔法具は全てが大きいのだ。

 ネバネバのネットを出す罠はリュックほどの大きさで、ガトリングは乳母車ほどの大きさ、人形は小さな子どもほどの大きさだ。


 もしもあの庭に設置されているとしたら、誰でも気づくと思うのだ。氷の礫を作る魔法具もあることにはあったけど、冷蔵庫ほど大きかった。どうやら炎を作る魔法よりも、氷の魔法のほうが複雑なようでそれだけ魔法具が大きくなるらしい。


 うーん、やっぱりテレサ様が犯人で間違いなさそうだね。


 そんな結論を出してから、僕たちは魔法具塔を後にした。


「フリッシュ君、何か気になることはわかりましたか?」


「分かったよ。僕の気になっていることがね」


「そうですか。それは一体何なのですか?」


「それはね……」


 僕がテレサ様の事件について話そうとした時、目の前に“おかしなもの”が現れた。


「なんですか、あれは?」


「なんだろうね、さっき見た人形と比べるととてもブサイクに思えるよ」


 五メートルはあるかと思うほどの大きな人形、いや土塊が寮へ帰ろうとする僕たちを阻んでいる。


「まさか、あれはゴーレム!?」


「ゴーレム? って、魔法具の?」


 僕も少しだけはゴーレムのことを知っている。

 魔法使いが兵士として作った戦闘用人形型魔法具が、ゴーレムである。その形は千差万別だけど、眼の前のゴーレムはどう考えても腕をぶん回して戦う物理型だ。


 なんだか強そうだ。


「何もしないのなら、このままスルーして帰りたいところだが……」


「どう考えても、あの目は僕を見ているね」


 ゴーレムの赤い目が、僕を射抜いていた。

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