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フィナ・エバーリア⑪ ~グラン・ホロウフッド~



 ウサギがいなくなると、グランの隠し持っていた薄い箱が光り出す。

 虚ろな目になったグランは、自嘲しながら箱に話しかけた。


「ぼくの話はここまでだよ、精霊さん。莫迦な男のつまらない話は満足してくれたかい?」


『いやー、大変面白いお話でしたよ。それで『貴族と平民(ラガッツァソーニョ)』は、どういう最後なんです?』


「来世で一緒になる約束をした二人が心中しようとして失敗する。男は死んで、女は悲しみながら二度と恋はしないと決めて家に籠るんだ」


『ほほう。つまり、グランさんはいずれ死ぬおつもりだと』


「んなわけないでしょ!! だからさぁ、そこは上手くぼくが死なないで済むように精霊さんの幸運のお礼でなんとかならないかなぁ!?」


『あはははは、なるほどなるほど。わかりました、少しお待ちくださいね。えーと……ふむ。AIの未来予測によると、このまま最後まで演技を続けたら、確実にグランさんは物語通りに死にます。逃げても、地の果てまでイルブランドさんとウサギさんに追われて死にます。全て演技だということをフィナさんに伝えても死にます。両親に頼っても借金取りに追い詰められて死にます。どうやってもバッドエンド回避できませんね、あはははははっ」


「笑いごとじゃないよ! なんかないの、ぼくが死なない方法!!」


『うーん、おっと、なになに? えーと、未来予測には少しデータが不足してるみたいですねぇ。グランさん、いくつか質問しますから正直にお答えください』


「わかった。よろしくお願いします」


『もしもフィナさんが、エバーリアと無関係のただの街娘だったらグランさんはフィナさんと結婚できますか?』


「そりゃ、彼女は清楚で可愛いからね。エバーリアと無関係なら恋人になるのはいいけど、結婚はなぁ。家は借金抱えた貴族だから、嫁にきても苦労するだけだよ。理想としては、お金があって爵位の低い家の娘だと結婚相手としては最適かな」


『では、フィナさんが借金がなくなるくらいの大金を持っていたら、結婚できますか?』


「そうだね、それは願ってもないけど。彼女が貴族になりたいって思うかなぁ? って、もしかして彼女との結婚が死亡回避の条件なの?」


『そのようですね。……ふむふむ、なるほどなるほどぉ。グランさんへのお礼が決定しました。幸せな未来のために、グランさんはフィナさんと駆け落ちしてください』


「はぁ!? そんなことしたら、エバーリア一家に地の果てまで追いかけられて殺されるって!!」


『大丈夫です。駆け落ちする直前で、駆け落ちは中止にしてください』


「ちょちょちょちょちょっ!! そんなことしたら、その場でエバーリア一家に惨殺されるって!!」


『問題ありません。あとは、誰に何を言われても黙秘を貫いてくださいね。否定も肯定もしてはいけませんよ。あ、ただ、ちょっとでも間違えたらグランさん死にますから。注意してくださいね』


「え、ちょ、まっ……!! 何それ、絶対幸せになれない予感しかしないんだけど」


『不確定要素を取り除いたAIの未来予測は完璧ですよぉ。僕は急遽、次のサンプルのところに行くことになりましたので、これで失礼しますねー。あ、ご結婚おめでとうございます。それじゃ、お幸せに!』


「待ておいこらクソ精霊! お前本当は悪魔だろ!! ちょ、おい! ねえ、ちょっと何処行ったの? 精霊さーん! 精霊さんてばー、おーい!!」



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