居場所(1)
ついに、いや、ようやくスマホ買いました。
僕と鴻上くんは今までの地から少し離れた山を訪れていた。特に会話もなく...2人でいるようになってからこんなことはよくある、というかいつも。...き、気まずい。
「鴻上くんは...」 「バカノ。」
あれ、話しかけてくるなんて珍しい。自分よりやや背の高い彼を軽く見上げる。
「お前、他人に会ったのはいつが最後だ?」
「えーと日にちがわかんない位前かな。」
鴻上くんは だよな と言いながら落ちている長い木の枝を拾い、手で叩いては納得いかないようにポイと捨てる。
「それがどうかしたの?」
数歩後ろから尋ねると首だけこちらに向かせ、左手に持っている枝で急な坂の下を指す。慎重に近づいてたら おせぇ と手を強く引かれた。そのまま枝の先を見るが何もない。
「何かある?」
「よく見ろ。」
そう言われて再び目を凝らす..と
「バケツ?」
遥か下に見える清流に、まだ綺麗そうな青バケツが浮かんでいる。
「まだ綺麗だ。この先に誰かいるかもしんねぇな。」
その言葉がもたらすのは喜びと期待、そして不安。複雑な面持ちで僕らはまた歩き出した。そして、1つの証拠を見つける。それは枝にかかったタオル、加えて…
「“奴”の跡だな。」
タオルはズタズタに引き裂かれ、周囲の木々は台風により折れてしまったかのような形で倒れている。ぬかるむ土には“奴”の特徴的な足跡… ここにも、“奴”の手は及んでいる。僕はただ茫然と荒地を見ていた。
「いたっ!!」 「何ボケーとしてんだよ、行くぞ。」
後ろから木の枝で頭を叩かれる。鴻上くんは何も気に留めていないようす…
「鴻上くん、怖くないの?」
あ?と言って僕を見た後目を細めて顔をそらす。
「別に、いない分にはな。」
僕は怖い。“奴”のことを考えると絶望的な気分になる。圧倒的な力の差、数、そして知識。人間未知には少なからず恐れを感じるものだ、特にそれが…自分を殺すものなら…
「!鴻上くん!あれ!」
指さす先に小さな廃屋がある。昔、きこりチックな人が住んでいたのだろう。いつ崩れてもおかしくないそこにゆっくりと近づき、覗き込む。人がいるかもしれない。そんな期待も
「「!!!!!!」」
すぐに裏切られる。込み上げてきた吐き気に僕はすぐさま口を塞ぎ、顔をそらした。 あれは死体だ。“奴”に殺されて腐った死体… 床に大きく広がる赤黒い染み、黒ずんだ肉らしきものには…蛆が湧いていた。耐えられない。震える足を動かし、その場からやっとの思いで退く。 そんな僕と違って鴻上くんは険しい顔をしながらも様子を見ている。これじゃあだめだ。僕も、鴻上くんみたいに… 足を伸ばし、目を大きく開く。ちゃんと、ちゃ、ちゃん、ちゃん、ちゃ
「おえ」 「!?!!」
「お前なぁ、あんなの見たってしょうがねえだろ。」
「ごめんなざい。」
悪態を吐く鴻上くんではあるがすぐに川まで連れて行ってくれたのは嘘のようで本当の話である。耳が良いから川があるってことがすぐわかったらしい。僕には分かんなかったけど…
「でも、鴻上くんだって見てたじゃん。」
少しふてくされめに言ってみると、大きく顔を近づけられ「バーカ」と言われた。
「誰が見るかよ気持ちわりぃ。俺が見てたのは周囲の荷物だ。」
荷物?
「あの周りには大雑把に3つの荷物が置いてあった。1つは女ものだ。あと2つは男の死体のだろ。けど、ここに来る途中で見たタオル…あれは男ものだ。おそらく1人賢いのがいて、そいつが“奴”の注意をひきつけるために仕掛けたんだろ。」
お、おお。
「あの死体もバケツも、まだ古くない。ここの近くに最低でも2人は“人間”がいるってことだ。」
す、すごい。そんなこと考えてたんだ、鴻上くん。
「鴻上くんてさ、」 「あ?」
満面の笑みを浮かべて彼を見る。
「バカそうに見えて賢いビックリキャラだよね。」
「てめぇ殺すぞ。」 「へっ?!」
ほ、ほめたのに…鷲みたいに鋭くて怖い目がギラリと光って最早鬼のよう…
「こう見えても学校の成績は良かったんだよ。」
「へーどのくらい?」
「学年9位」
「なんか凄い意外なんだけど…」
「お前なあ…どうせお前は真ん中位だろ。」
「僕?んー掲示見たことないからわかんないや。」
「点数。」
「全部満点。」
・・・
「おら行くぞ!さっきの荷物から使えんのパクるんだかんな!!」
「え!?」
「さっさと来い、バ…ノロマ!!」




