居場所(2)
「鴻上、お前ももう少し大人しくなってくれるとだな、先生たちも嬉しいんだが…」
日が沈み、茜色に染まる職員室に俺と校長と、担任がいる。部活も終わる頃で外からは明るい声が聞こえてきていた。
「お前は頭だっていいんだ。くだらないことで将来を潰すんじゃない。」
「本当に申し訳ありませんでした。」
くだらないのはお前の方だ。そう思いつつも母さんに無理矢理頭を下げられ、自分の非を認めざるを得なくなる。俺は何も悪くない。
「いって…」
「お前ってやつは!!」
父さんが拳を振り上げ、顔に痛みが走る。誰も止めてくれない。なんだその目は…なんでそんな目で俺を見てんだよ、母さん。畏怖、憎悪、怒り、悲しみ…俺は、あんたらが思うように育ったのに、言いつけも守っているのに、なんでそんな目をするんだ。
「しばらく学校には行かせんからな。」
なんで誰も…
後ろに回された手のあたりで、鍵がかかる音がした。
そう、これは昔のおはなし…
「おいバカノ。おっせーよ早くしろ。」
「ご、ごめ、ちょっと待って!!」
山を下りはじめて結構な時間が経った。坂も緩やかになってきていて平地に近づいている。川の近くにはキャンプ(人が集まっているところ)があることが多いから俺たちは川沿いに歩いていた。
「わーあ、あー!あー!」
滑り落ちてる奴もいるけどな、ここに。ほんとどーしよもねー奴だ。こんなのも生き残ってんだから、まだまだ人間の数には期待できそうだな。 ふんと鼻で笑う鴻上に、泥のついた顔で困ったように笑う叶。
「はは、こんなんじゃだめだな。康人くんに申し訳ないや…」
こいつ、まだ康のこと考えてんのかよ。そんなんじゃこの先生きていけねーぜ。
「康のことなんてもう忘れろよ。いねー奴のこと考えたってしょうがねーだろ。」
そういうとバカノはまた困ったように笑った。そして口をゆっくりと開く。
「たしかに、鴻上くんのいう通りかもしれない。けど僕は一緒に過ごした友達を、忘れたくないんだ。」
馬鹿な奴。そんな思い出なんて背負ったところで後悔や罪悪感に駆られて生きることに絶望するだけだ。自分のためにならないようなことなんて、忘れた方が自分のためなんだよ。
そんなことを思いながら歩いていた時、ふっと知らない匂いを感じて足を止めた。バカノも気づいたのか眉がピクリと動く。これは…
バッ!!と大きな黒い影が草の中から現れ、手に持つ何かを振り上げている。俺は狙われているにも関わらず茫然としているバカノを強く押し、先ほど拾ったいい感じの木の棒を顔の前にやり、攻撃を阻止した。
「あり…」 「ちっ」
すげー力だな。枝が折れた…
「あーりゃりゃ。わりーわりー、俺ってば勘違いしちゃったー。」
太陽が雲に隠れ、逆光で見えなかった素顔が明らかになる。
「初めまして、生き残りさん。」
まだ若い男。茶髪の髪はぼさぼさとし、毛先が跳ねている。猫のような目でニッコニッコとしながら俺らを交互にみつめた。
「君たちもキャンプを探してるんでしょ?ついてきなよ。俺が案内してあげる。」
「も?」
俺が押した衝撃で倒れたバカノが、きょとんとした様子で男を見つめる。その男はそーそーというと笑顔でバカノに手を差し伸べた。
「結構前にチャラそうな男と可愛い赤毛の女の子が来たんだ。“友達”?」
彼の手を借りて立ち上がったバカノがぶんぶんと激しく首を振る。
「あー、そう。まぁキャンプに人が訪れるのは珍しいことじゃないからさ。君たちも放浪組ならなおさら来るべきだよ。あそこは情報の溜まり場だからね。」
男にしては高い声
「でもまぁ…3つ忠告しとこう」
それがいきなり低いものへと変わる。
「1つ、他人を信じるな。2つ、他人を信じるな。3つ、他人を信じるな…」
家族とのパソコン争いに負けてます…




