82 地下遺跡の報告
「……どうする?」
最初に口を開いたのはガンズだった。
巨大な地下空間。
青白く輝く魔光石。
無数の鉱脈。
そして中央に建つ謎の建物。
誰もが目を奪われていた。
◇
「行ってみるか?」
ゴルドが当然のように言う。
僕も正直同じ気持ちだった。
建物が気になる。
ものすごく気になる。
誰が作ったのか。
何のためにあるのか。
なぜ地下にあるのか。
知りたくて仕方ない。
だが。
「駄目だ」
ドラムが即答した。
「今日はここまでだ」
◇
「えぇー」
思わず声が出てしまった。
「なんだその反応は」
「いや、だって気になりますよ!」
僕は建物を指差した。
「あれですよ!?」
「気になるな」
ゴルドも頷く。
「うんうん」
ミリスも頷く。
「気になる」
ケイトまで頷いた。
全員気になっていた。
◇
しかしドラムは首を振る。
「目的を忘れるな」
「銀鉱脈の確認だ」
「遺跡調査ではない」
確かにその通りだった。
今回はたまたま発見しただけ。
探索装備もない。
食料もない。
地図もない。
何がいるのかも分からない。
◇
「生命反応もある」
ドラムは続ける。
「しかも正体不明だ」
「それはそうですけど」
僕は少しだけ不満だった。
だがドラムの判断は正しいし、冒険者としては当然だろう。
◇
「ならせめて鉱石だけでも回収しよう」
ゴルドが言った。
「それなら問題ないだろ」
「うむ」
ガンズも頷く。
僕たちは地下空間の周辺を調査することになった。
まずは銀鉱石。
そして鉄鉱石。
銅鉱石。
魔光石。
次々と採取していく。
◇
「《鉱石解析》」
僕は回収した鉱石を調べる。
ーーーーーーーーーー
名称:銀鉱石
品質:高
ーーーーーーーーーー
「良質ですね」
「だろうな」
ゴルドが笑う。
次は鉄鉱石。
ーーーーーーーーーー
名称:鉄鉱石
品質:良
ーーーーーーーーーー
さらに銅鉱石。
ーーーーーーーーーー
名称:銅鉱石
品質:良
ーーーーーーーーーー
どれも質が良い。
「これはすごいぞ」
ゴルドが興奮していた。
「銀だけじゃない」
「鉱山として成立する」
「いや、それどころじゃない」
「下手するとグランベル級かもな」
ガンズも珍しく真面目な顔になる。
「銀が取れる」
「鉄も取れる」
「銅も取れる」
「建築資材もある」
「……街の発展速度が変わるな」
僕も同意した。
これは単なる鉱脈ではない。
ニューセリアの未来そのものだった。
だが。
僕の視線は何度も中央の建物へ向いてしまう。
(気になる。どうしても気になる……)
◇
「《生命反応感知》」
もう一度確認する。
反応は消えていない。
むしろーー
少し動いているようにも感じた。
ポツン。
ポツン。
ポツン。
「まだいますね」
僕が呟く。
「何体くらいだ?」
ドラムが尋ねた。
「分かりません。ただ複数です。人ではありません」
ゴルドが建物を見る。
「鉱山の番人か?」
「やめてください」
僕は苦笑した。
「それだと絶対強いじゃないですか」
「強そうだな」
「強そうですね」
ミリスも頷く。
◇
やがて撤収することになった。
帰り道、何度も振り返る。
青白い光。
巨大な建物。
静かな地下世界。
まるで誰かに見られているような気さえした。
◇
地上へ戻った時。
全員が少しだけ安心した顔になった。
太陽の光が眩しい。
地下に長くいたせいだろう。
「どうする?」
ガンズが尋ねる。
「探索隊を組む」
ドラムは即答した。
「正式な依頼として出す」
「俺たちだけで抱える規模じゃない」
ゴルドも頷く。
「銀鉱脈だけでも大発見だ」
「さらに遺跡まである」
「これはギルド案件だな」
◇
帰り道。
僕は回収した魔光石を眺めていた。
青白い光。
不思議な鉱石。
そして地下遺跡。
(誰が作ったんだろう)
考えれば考えるほど気になる。
◇
そして、アルセリアの冒険者ギルドへ到着する。
受付へ向かうドラムと後ろからついていく僕たち。
「地下遺跡?」
受付嬢が目を丸くする。
「そうだ」
ドラムが伝える。
「銀鉱脈も確認しました」
僕は付け足した。
受付嬢の顔色が変わった。
「少々お待ちください」
そう言うと奥へ消えていく。
しばらくして、一冊の古びた資料を抱えて戻ってきた。
受付嬢はページをめくっている。
そして。
ある場所で手を止めた。
「まさかですが……」
受付嬢の小さな声。
「何か知っているんですか?」
僕が尋ねると、受付嬢は資料から顔を上げた。
「その場所かは分かりません。ですが、数百年前の記録に似た記述があります」
全員が息を呑んだ。
「名称は――」
受付嬢が口を開いたその瞬間。
僕の心臓が大きく跳ねた。
地下遺跡。その正体に繋がる最初の手掛かりが、今まさに明かされようとしていた。
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