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64 風呂屋スキルと山神の湯

ピョン、ピョン、ピョン――。


クリアスライムのルルは、僕たちの少し前を楽しそうに跳ねながら進んでいた。

まるで「こっちだよ!」と言っているみたいだ。


一方で、ナギはというと――。


「ぷゅ〜……」


僕の頭の上で気持ち良さそうに昼寝をしている。


(ちょっと首が重い……)


そして三匹目のコロは、少し離れた後ろから様子をうかがうようについて来ていた。


「なんか、三者三様で面白いわね」


ケイトが笑う。


「うん、かわいい」


ミリスもすっかり気に入ったようだ。


ドルガ村への帰り道は驚くほど平和だった。

モンスターの反応もない。

鳥の声も少しずつ戻ってきている。


(これもプラムやクリアスライムたちのおかげなんだろうな)


そんなことを考えながら、僕たちは村へ戻った。



「おっ、お兄ちゃんたち!」


村へ入るなり、野菜を運んでいたおじさんが声をかけてきた。


「クリアスライム連れとるんか!?」


「あっ、はい」


「いやー、よかったよかった!」


おじさんは満面の笑みだ。


「しばらく姿を見んかったからなぁ」


「そんなに有名なんですか?」


「そりゃそうさ」


おじさんは当然という顔をした。


「クリアスライムがおらんと、この村は困るんや」


「困る?」


「温泉が休業しとるからな」


「えっ?」


僕たちは顔を見合わせた。


「温泉あるんですか?」


「もちろんさ!」


おじさんは笑う。


「ドルガ村は温泉でも有名なんやで」


「知らなかった……」


「村の一番下じゃ。川の近くにある」


そして少し真面目な顔になる。


「実はな、スライムたちがおらんようになってから池が濁り始めてな」


「池が?」


「温泉の排水を流す池や」


「魚も減ったし、水草も弱っとる」


僕は思わず頷いた。


(やっぱり浄化能力が関係している)


「ありがとう!行ってみます!」



「温泉?」


ケイトが首を傾げる。


「何それ?」


「普通のお風呂と違うの?」


ミリスも興味津々だった。


「温泉はね、地面の奥から湧いてくる特別なお湯なんだ」


「へぇ」


「身体に良い成分がたくさん溶けているんだよ」


「じゃあ行く!」


ミリスが即答した。


「私も」


ケイトも乗り気だ。


ルルたちも何故かぴょんぴょん跳ねている。



しばらく歩くと、それは現れた。


「わぁ……」


思わず声が漏れる。


大きな木造建築。

風格のある門。

川を見下ろす立地。


暖簾をくぐると庭園が広がっていた。


山野草。

小川。

石畳。

そして水車。


どこか神社にも似た神聖な空気が漂っている。


「なんか落ち着くね」


「うん」


僕たちは建物へ入った。


そして――。


「「わぁー!」」


ケイトとミリスが同時に声を上げる。


建物の中なのに、一面の渓流が見える。


大きな窓。

新緑。

川のせせらぎ。

山風。


まるで自然の中にいるようだった。



受付にいた女性へ声をかける。


「あの、入れますか?」


女性は申し訳なさそうに笑った。


「ごめんなさいねぇ。実は今お休み中なの」


「えっ?」


「浄化池のクリアスライムちゃんたちがいなくなっちゃって」


そしてーー

ルルたちを見る。


「……あれ?その子たち、クリアスライムじゃない?」


「あっ、はい」


「ルルとナギとコロです」


女性の表情が明るくなった。


「お願いがあるんだけど……」



温泉施設の仕組みは面白かった。


源泉。

人間用の湯船。

排水。

浄化池。

川。


という流れになっている。


「温泉のお湯をそのまま川へ流すとね」


女性が説明する。


「川の生き物や植物が少しずつ弱っていくの」


「でもスライムちゃんたちがいると違うのよ」


「池で遊んでるだけなのに、お湯が綺麗になってね……」


「なるほど……」


僕は感心した。


(この仕組み、そのままアルセリアで使えるじゃないか)



「プギューーー!!」


ルルが真っ先に温泉で満たされた池に飛び込んだ。


バシャバシャ暴れている。


「ぷゅ〜……」


ナギはすでに浮いて寝ていた。

流されている。


「……ぷゅ」


コロは静かに池へ入り、黙々と浄化している。


性格がよく出ていた。


「面白いなぁ」



僕も温泉へ浸かる。


「あぁぁ……」


思わず声が漏れた。


疲れが溶けていく。

気持ちいい。


その時。ふと気になった。


「臨床検査」


お湯の中に微細な魔力が見える。

それが皮膚から身体へ取り込まれていく。


(そういうことか)


温泉とは。

魔力を含んだ特殊な水なのだ。


その瞬間――。


(天の声)

《スキル《水質解析》を取得しました》

《スキル《温泉認定》を取得しました》

《スキル《温泉処方》を取得しました》


「えっ!?」


僕は思わず、温泉から飛び出た。



「スキルツリー!」


ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

ユニークスキルツリー

  原理理解ー✔︎原理の理解向上(生活)

  |   ー✔︎小規模感染症の極意

  |

  体質ー✔︎学び体質

  |

✔︎臨床検査ーStage1観測系ーーStage2介入系ーxxxーxxx

  |   ー✔︎弱点視認   ー✔︎循環遮断

  |   ー✔︎生命反応感知 ー✔︎循環遮断改

  |   ー✔︎寄生異物検査 ー✔︎ビジョン連携

  |   ー✔︎微生物検査

  |   ー✔︎エリア臨床検査

  |   ー✔︎水質解析(新)

  |

  植物検査ー✔︎薬草ポテンシャル検査ー✔︎薬草の極意1

  |

  生活検査ー✔︎料理の検査


連携スキル

✔︎寄生虫症治療の極意

✔︎槍弓の連環


職業スキル(1)

◆武闘家ーxxx

◆風呂屋ー✔︎灰汁石鹸づくり、✔︎温泉認定(新)、✔︎温泉処方(新)


ノーマルスキル(1)

✔︎虫取り名人

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー


今、取得した新しいスキルを確認する。


《水質解析》

水に含まれる成分と魔力を解析できる。


《温泉認定》

温泉を認定し、名称を与えられる。


《温泉処方》

対象者に最適な温泉を提案できる。

なお提案された者は、温泉を見たら入りたくて仕方なくなる。


「最後の一文だけ怖いな……」


思わず呟いた。



そして僕は試しに発動した。


「《温泉認定》」


(天の声)

「認定可能な温泉を確認しました」

「名称を設定してください」


「えっ、本当に?」


僕は少し考える。


目の前には山。川。

そして温泉。


(あっ、プラム……)


「じゃあ――」


『山神の湯』


(天の声)

「温泉《山神の湯》を認定しました」


その瞬間。温泉全体が淡く光った気がした。


「認定された……」


僕は思わず笑う。


(これは使える)


風呂屋計画。

温泉事業。

観光。


全部繋がる。



下の池を覗くと、ルルたちは相変わらずだった。


「プギュ!」


「ぷゅ〜」


「……ぷゅ」


《臨床検査》を発動する。


すると、お湯の中にあった魔力が少しずつ減っているのがわかった。


そして。

その魔力はクリアスライムたちの身体へ取り込まれていた。


(やっぱり……)


(浄化とは魔力を吸収して整える技なんだ)


プラムがラグナを浄化した時と同じ現象だった。

僕は静かに頷いた。


(この旅で、また一つ世界の仕組みが分かった気がする)



僕は庭で涼んでいると、しばらくして。


「お待たせー」


ケイトとミリスがやって来た。

二人ともすっきりした顔をしている。


「気持ちよかったー!」


「うん」


僕は笑った。


「じゃあ宿へ戻ろうか」


夕暮れの風が心地良い。


クリアスライムたちも後ろをついてくる。


今日も色々あった。


でも。


アルセリアへ戻ったら、もっと忙しくなりそうだ。


そんな予感がしていた。


挿絵(By みてみん)


読んでいただきありがとうございます!

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次回もよろしくお願いします。

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