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61 竜と剣士とクリアスライム

「ラグナ。あなた、療養に来ていたんじゃなかったの? なんでボスみたいな顔して戦ってるのよ!」


リュシアが額を押さえる。


「いや……これは、その……」


ラグナが目を逸らした。


「ノリで」


「ノリで!?」


リュシアの声が滝に響く。


「ノリで森が燃えたり、街が消し飛んだらどうするのよ!」


「いや、そこまではやらんぞ」


「やるかやらないかじゃないの!」


「すっ、すまん……」


(謝った……)


僕は思わず目を見開いた。


あの圧倒的な赤竜が。


さっきまで僕たちを追い詰めていた存在が。


まるで怒られた子どものように縮こまっている。


「ごめんな、君たち」


リュシアがこちらを向いた。


「うちのラグナが迷惑をかけた」


「うちの……?」


「ラグナって飼われてるの?」


ミリスがぽつりと呟く。


「誰が飼われている!」


ラグナが反応した。


「相棒だ!」


「そこは否定するのね」


ケイトが呆れたように言う。



改めて自己紹介が始まった。


「私はリュシア・アークライト」


胸に手を当てる。


「ドラクス出身だ。昔は竜騎士をやっていた」


「竜騎士……」


聞いたことがある。

竜と共に戦う特別な騎士。

伝説や物語の中の存在だ。


「今は引退して、ラグナと一緒に旅をしている」


「旅?」


「そう。気ままな放浪だ」


ラグナが鼻を鳴らす。


「我はラグナ」


翼を少し広げた。


「見ての通り紅翼竜だ」


「いや、見ての通りではあるけど……」


「年齢は五百歳くらいだった気がする」


「気がする?」


「細かいことは忘れた」


「忘れるんだ……」


僕たちは完全に呆気に取られていた。



その後も二人の会話は続いた。


「で、ラグナ」


「うむ」


「終わったの?」


「いや、途中だ」


「戦闘じゃなくて療養の方!」


「そっちか」


「そっちよ!」


「我はてっきり、戦いの続きかと」


「だから戦うなって言ってるの!」


ラグナは少ししょんぼりした。

だがよく見ると、全然反省していない顔だった。


(この竜、絶対またやるな)


僕は確信した。



その時だった。


ピョコン。


透明な何かが滝壺から飛び出した。


ピョコン。


ピョコン。


ピョコン。


次々と現れる。


透明で。


丸くて。


少しだけ光っている。


「クリアスライム!」


僕は思わず叫んだ。


「うわぁ……」


ミリスが目を輝かせる。


「こんな数初めて見た」


ケイトも驚いている。


気付けば数10匹。

いや、100匹近くいる。

滝壺全体がクリアスライムで埋まり始めていた。


「ほら」


リュシアがラグナを睨む。


「出てきちゃったじゃない」


「ほんとだな」


「ほんとだな、じゃないわよ」



その時だった。


ザバァァァァン!!


滝壺が大きく揺れた。


空気が変わる。


クリアスライムたちが一斉に道を開く。


そして現れた巨大なクリアスライム。


ラグナと同じくらい大きい。

けれど恐ろしさはない。

むしろ神聖だった。


柔らかな光をまと、静かに水面へ浮かんでいる。


「プラムまで出てきちゃったわよ……」


リュシアが苦笑する。


「プラム?」


僕が聞き返す。


「ああ」


リュシアが頷いた。


「クリアスライムの長だ」


「この源流の主でもある」


巨大なスライムは静かにこちらを見つめていた。


その瞳は不思議と温かく、まるで全てを見透かしているようだった。


そしてーー


「ようやく静かになったのぉ」


「「「えっ、喋るの!?」」」

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