05 転生
第1章 転生と幼少期
「おぎゃああああああ……!!」
(はっ……? えっ、泣き声?)
そこで、理解した。
――やはり、転生したのだと。
「おめでとうございます、奥様。元気な男の子です」
「……ええ……」
重く響く足音が、廊下の奥から近づいてくる。そして、勢いよく扉が開いた。
「エリシア! 男か!」
「は、はい、アルヴェルト様。男の子です」
「では――『ノア』だな」
「はい、ノアです」
「よくやった!」
その瞬間、辺境グレイヴェルを治める領主アルヴェルトと、その妻エリシアの四男――ノアが誕生した。
そして。
令和の時代を生きた田中悠真、40歳。彼の新たな人生が、ここから始まる。
◇
(……なんか、とんでもない世界に来たな)
僕――いや、ノアは、前世の記憶を持ったまま、母エリシアに抱かれていた。
部屋の雰囲気は、中世ヨーロッパを思わせる。石造りの壁、重厚な家具、そして整った衣装の人々。
すぐ近くで僕を見下ろしている、厳格そうな男。おそらく、あれが父だろう。
周囲には侍女と思しき女性たちが数人控えている。
(……これは、かなりの金持ちの家だな)
令和の感覚でも、それはすぐに理解できた。
「あう……」
当然だが、言葉は出ない。身体も思うように動かない。
どうやら、スペックは完全に0歳児らしい。
ただし――
(頭の中だけは、別だな)
日本という豊かな国で、昭和・平成・令和と40年生きてきた記憶と知識。それを丸ごと持っている。
(……これ、チートってやつじゃないか?)
そんなことを、ぼんやりと考える。
――とはいえ。
生まれたばかりの無力な身体で、大勢の大人に囲まれている状況は、少しばかり気恥ずかしい。
(……なんか、めちゃくちゃ見られてるんだけど)
そんなことを思った矢先。
急激な眠気が襲ってきた。
(あ、これ……抗えないやつだ……)
意識が、ゆっくりと沈んでいく。
◇
「これで、フィルド家もますます安泰ですね」
「ああ。息子たちそれぞれに、役割を持たせねばな」
和やかな空気が、部屋を満たしていた。
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