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04 発症と死

「身体が重い……」


いつも通り、スマホのアラームで目を覚まして、起きようとするが、身体の異変に気づく。


「これはやってしまったかもしれない・・・」


感染症外来で働いていたのだから、当然ながら自身も感染したのではと頭をよぎった。

すぐに体温計を探し測る。


ーー38.5度。


「まだ思ったほど高くないが、これから上がりそうだ…」


スマホを手に取り、職場の先輩へLINEを送る。

朝七時。当直の技師が一人いる時間帯だ。


こういうときは、まず同僚へ連絡するのが暗黙のルールとなっている。


「おはようございます、先輩、LINEですみません」


「おっ、おはよう」


「どうやら、やっちゃったようです……(汗)」


「ん!?まさか陽性?」


「いや、検査キットでは判定してませんが、発熱中です」


「高い?」


「まだ38度台ですが、上がりそうな感じです」


「そうだろうな。今日は自宅療養でいいと思う。技師長に伝えておくよ」


「ありがとうございます。すみません」


「で、1人で大丈夫かい?」


「たぶん……大丈夫です。これでもまだ若いですし」


「じゃあ、もし何かあれば、連絡してね」


「ラジャーです。」


ーーひとまず、これでOK。


国内では、高齢者の重症化は報告されているものの、若年層の重症例はまだない。


(大丈夫だろう)


そう判断した。


医療者の端くれとして、栄養補助食品くらいは常備してある。

それで乗り切れるはずだった。



一眠りして、全身の倦怠感と息切れで目が覚める。


「どうやら寝ていたようだ・・・」


早速、体温計を測ると39.5度。


「いよいよ、やばいなぁ。こんなに高いのいつぶりだろう…」


と思考してみるも、集中できない。


「そういえば……昔、喘息が……」


その瞬間、視界が揺れて、輪郭がぼやける。


意識が、沈んでいく。


「これはまずいかもしれない・・・」



――次に気づいたとき。


そこは、真っ白で何もない空間だった。


白い。ただひたすらに白い。


いや、正確には――そう“感じている”だけなのかもしれない。


時間の流れがない。重力も、感覚も、曖昧だ。


立っているのか、横になっているのかすら分からない。


「……これが、死ぬっていうことなんだろうか」


不思議と、苦しさはない。


むしろ、どこか穏やかで、静かだった。


――それでも。


思考だけは、止まらない。


「どうして、救えなかった?」


「違和感に、気づいていたのに」


「もっと早く伝えていたら……」


後悔だけが、はっきりと残っている。


「……こんなことで、終わるのか」


「私は……何もできなかったのか」


……


……


……


そのとき。


どこからか、声がした。


年配の男の声。


遠くから、呼びかけるような。



次の瞬間。


身体が、引き寄せられるような感覚。


まぶしい光が、全身を包み込む。


抗うことはできない。


ただ、流されていく。


――そして。


……


……


再び、目を開けた。


そこは、見知らぬ世界だった。


どこかで見たことのある光景。いや、知っている。


何度も、画面越しに見てきた。


「……これ、異世界転生ってやつか」


恐怖は、不思議と少なかった。


それよりも。


ほんの少しだけ。


――高揚している自分がいた。


挿絵(By みてみん)

読んでいただきありがとうございます!

面白かったらブックマーク・評価いただけると嬉しいです。

次回もよろしくお願いします。


いよいよ異世界となります。

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