表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

34/35

33 始まりの街アルセリア

「えっ、並んでる?」


予想を反して、アルセリアは石材で造られた、そこそこの高さの塀に囲まれていた。


門は開閉式でしっかりしており、そこには門兵らしき人たちが立っている。

さらに、街へ入るために並ぶ人々の列まであった。


近づいてみると、列に並んでいるのは、近隣の村や街から来た商人や物売りたちのようだった。

大きな荷車と馬が、そこかしこに停められている。


「すみません。これって、みんな並ぶんですか?」


念のため、一番後ろにいた人に聞いてみた。


「あっ、これかい。いやいや、旅人や住民、冒険者なんかは並ぶ必要ないよ」


「あっ、良かった。そうなんですね!

で、この列って、ちなみに何ですか?」


「これはね、売り物みたいな大きな荷物を持って入る場合の確認作業なんだよ。

荷車や馬の置き場も確保しないといけないからね。

こうやって街に入る前に、商人協会の人が確認してるんだ」


(なるほど。そういえば、レムナ村の武器屋の主人が商人協会のこと言ってたっけ……)


「ありがとうございます。助かりました」


「いえいえー」


僕はお礼を言って、列を横目にそのまま門へ向かうことにした。


並ばずに入れることに、少しだけ優越感のようなものを覚える。

それはさておき、列の先頭で確認作業をする商人協会の人を見るとーー


(けっこう良さそうな身なりしてるんだなぁ)


商人が裕福だということは、それだけ商いが盛んということだ。

つまり、この街に住む人たちにも活気があるだろう。


ここでも、今までにできなかった経験ができるかもしれない。

期待が更に膨らんだ。



頑丈な塀、衛兵の前を横切り、門をくぐって街へ入る。


「安いよー安いよー」


「そこお兄さん、見てってよ!」


「300ゼニーになります」


「わぁーい!!」




ワイワイ、ガヤガヤ…

ワイワイ、ガヤガヤ…


中央広場へまっすぐ続く道には、たくさんの店が並んでいた。


看板には、フォークとスプーン、樽、パン、豚、盾など、さまざまなマークが描かれている。

店先にはテーブルやイスが置かれ、街の住民と思われる人たちが食事を楽しんでいた。


(これが街というものか…)


僕は、はじめて見る本格的な街に軽く感動していた。


ここまでたくさんの人を一度に見たことはない。

いい意味で騒がしく、活気がある。

そして、西洋風の街並みが、いっそう異世界感を強めていた。


(どの店もゆっくり見て回りたいなぁ)


そんなことを思いつつも、まずは今日の宿探しだ。


僕はメインストリートをまっすぐ進み、広場へ出ることにした。



「おおー!」


大きな広場には、たくさんの屋台が並び、市場のようになっていた。


野菜や果物、パンや肉。

土産物、骨董品、さらには武器や防具まである。


中でも、ひときわいい匂いを漂わせている屋台があった。

何かの肉を焼いているようだ。


香ばしく、少し甘辛いような匂いがあたりを包んでいる。


「これは買わねば!」


つい口に出してしまうほどだった。


匂いの源へたどり着くと、そこに並んでいたのは、小さな肉をいくつも串に刺して焼いた食べ物だった。


(これは、もしかして…)


「おじさん、これ一本ほしいんだけど、このお肉って……」


「まいどあり。これはヒナドリさ。こうやって炭で焼く、というか炙ると、とても美味いんだ」


「分かります。これはヤバいやつですね」


心の奥から頷いている自分がいた。


「1本100ゼニーだよ」


お金を渡して、1本購入する。

そして、待ってましたとばかりに頬張った。


パクッ。


「うっ、うまい!」


正直、この世界に来て、焼き鳥を食べる機会があるとは思っていなかった。

だからこそ、余計に美味しさが込み上げてくる。


味は、素朴な塩味。

だが、素材の新鮮さと火加減の具合だろうか。

柔らかさは絶妙だった。


「僕はタレより、塩派なんですよねー」


「ん?何か言ったか?」


「あっ、なんでもありません……」


つい、独り言を口に出してしまった。


この世界には醤油はないし、焼き鳥のタレもない。

多分。

少なくとも、実家にはなかった。


以前暮らしていた日本という国の食事が、どれだけ恵まれていたのか。

この世界に来てから、つくづくと思う。


そんなわけで、料理図鑑に「ヒナドリの串焼き」が加わるのであった。



広場は、円形状になっていて、その周りをぐるりと建物が囲んでいる。


宿屋や食堂に加え、見たことないマークのお店もちらほらある。

そして、最も目を引くのは教会だった。


何かしらの神を信仰するための建物なのだろう。

大きく、そして美しい。


(それにしても、教会って立てるのにお金かかりそうだよなぁ)


教会だとすぐに分かるのは、正面の大きな扉と、その上に彫られた数々の石像。

さらにその上には、ステンドグラスと思われる丸い大きな窓がある。


左右には一本ずつ高い塔が立ち、三角屋根が特徴的だ。

僕から見れば、ヨーロッパの有名な教会をそのまま再現したような建物に見えた。


(対照的に、隣の古い建物も気になるな……)


教会の右側、道を挟んだ隣には、少し歴史を感じる建物があった。


その建物には看板はない。

ただ、扉の上に旗が掲げられており、そこには特徴的なマークが描かれていた。


「あのマークなんだろう……」


少し近づいてみる。


「あっ、剣か。いや、何かに刺さってるな……」


(あれは板か何かかな。いや剣なら盾なのか?)


不思議なマークだった。


地面に置かれた板のようなものの真ん中に、上から剣が突き刺さっている。

伝説の勇者の剣が岩に刺さっているような構図だが、岩ではなく平たい板のように見える。


(不思議だなぁ。どういう意味なんだろう)


結局、マークを見ただけでは何の建物なのか分からなかった。



広場をぐるりと回ったあと、僕はひとまず宿屋で部屋をとることにした。


荷物を置いてから、改めて街を散策する。

それが今日の流れだ。


宿屋は外見からして5階建てほどあり、煉瓦造りのかなり立派な建物だった。

看板には「INN」の文字と、酒樽のマークが見える。


その宿の名前はーー


「トーヨコ亭」


(何かデジャブ感…)


とりあえず、僕は店のドアを開けた。

読んでいただきありがとうございます!

面白かったらブックマーク・評価いただけると嬉しいです。

次回もよろしくお願いします。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ