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29 感染症

あれから5日が経ち、僕は買い出しのため、村へ向かう準備をしていた。


一方、その頃のレムナ村では――

モンスターの襲来後、静かに異変が起きていた。



「ちょっと熱っぽくてね……」


村の男が、そう言って額に手を当てる。

顔色は悪くない。歩けるし、話もできる。


誰もが、

――疲れだろう、と思っていた。


だが、その翌日。


「……咳が、止まらないんだ」


と、症状が増えた。


そして、もう一人。


「身体がだるくて……力が入らねぇ」


同じような訴えがあった。


それは、その後も三人、四人、五人と数が増えていった。



三日目。


「これ……見てくれ」


トマスは、体調のすぐれない村人に呼ばれて向かうと、その村人の腕には異変があった。


赤い発疹。

その小さな斑点は、点々と広がっている。


「かゆくはない。ただ……変なんだ」


触れると、わずかに熱を持っているのがわかった。



四日目。


症状は、さらに進んだ。

赤かった発疹が、黄色く変色し始める。


「気持ち悪い色だ……」


誰かが呟く。



五日目。


「黒く……なってきた?」


皮膚の一部が黒ずみ始めていた。

黄色く濁った肌の上に、壊死にも似た色が広がる。


そして、村の空気が変わっていく。


「これは呪いだ……」


「モンスターにやられた傷が悪化したんだ」


「いや、あのときの血が――」


原因は正直分からない。

だからこそ、恐怖だけが広がっていくのだった。



そんな村での状況はつゆ知らず、僕はモンスター襲来からちょうど五日後に村へ到着した。


「……なんだろう」


入口に立った瞬間、違和感が走る。


人が少ない。

声が聞こえない。

空気が、重い。


(……何かおかしいぞ)


村の中心部へ足を進めていく。


途中、すれ違う村人の顔色は悪い。

歩き方もどこか鈍い。

声をかけてみると。


「……大丈夫ですか?」


「ああ……ちょっと熱っぽくてな……」


力なく笑っていた。

その後も数人とすれ違ったが、一人じゃなかった。


二人。

三人。

四人。


同じような様子の村人が、あちこちにいることが分かった。



僕は、道具屋へ到着する。


「いらっしゃ……あ、ノア」


ミーナが顔を出した。

だが、その表情にも余裕がない。


「どうしたの? 村、何か変じゃない?」


「やっぱり分かる……?」


小さく頷く。


「ここ数日で、一気に体調を崩す人が増えてて……」


「で、トマスさんは大丈夫?」


「いるけど……ちょっと休んでる」


奥を見る。


トマスは椅子に座り、腕に布を巻いたまま、目を閉じていた。


怪我だけではない。


(……何か弱ってるな)


明らかに、本調子ではない雰囲気を感じた。


「ちょっと、見てもいいかな?」


「うん……お願い」


僕はトマスに左手をかざす。


「臨床検査!」


青白い流れが視界に浮かぶ。


(ん、弱いな……)


全身の流れが細くなっている。


そして――流れの中に、微かな歪みが見えた。


念の為、別のスキルも試す。


「寄生異物検査」


――反応なし。


(違うのか……)


ただ、何かがおかしいと感じる。

僕は、別の村人も調べるため、歩いて回ることにした。



「臨床検査!」


一人。


(同じ……)


二人。


(ここの人も……)


三人。


(この人もか……同じ症状?)


流れの歪みが、共通していた。

本来、魔力の流れは個体ごとに違うはずだが、それが通用しない。


それなのに、調べた村人は皆――

「流れが揃ってる……?」


続いて、襲撃で怪我をした者をみる。


(ん、なんだこれ、歪みが濃い?)


明らかに進行していた。


そして、その家族もみる。


(軽い……だが、同じ歪みがある)


何かが、広がっているという予想が、確信に変わった。


接触。


血。


距離。


体液。


前世の知識と思考が繋がっていった。


(天の声)

《独自クエスト『目に見えない村での脅威』が設定されました》



道具屋に戻り、まだ行っていなかったもう1つのスキルを、改めてトマスに使う。


「微生物検査!」


このスキルによって、体内の微細な動きも観察する。


そうすると、流れの奥に無数の細かな反応があった。

点にも満たない、小さな存在。


(……これはやはりいるな)


そして――

他の村人にもスキルを試すと、全員が同じ反応だった。


「……やはり感染症か」


思わず、呟いた。


ミーナが不安そうにこちらを見る。


「なに、それ……?」


「……いや」


これはまだまだ増えるのではないかと感じた。


転生前の最後の記憶。

パンデミックによって患者で溢れかえる病院のイメージが頭に浮かんだ。


そして、異常な検査値と感染患者の増加。

どちらも現実のものとしてリンクしていた。


村では、人と人の距離は、普段通りに接している。


(このままだと良くない……)


僕は、はっきりと告げることに決めた。

「感染している」こと、そして「隔離しなければ」ならないことを。


そう決断した直後。


バンッ!


勢いよく扉が開く。


「大変だ!」


息を切らした村人が飛び込んできた。

一瞬、空気が止まる。


「最初に熱を出してたやつが……血を……吐いて倒れた!」


この時がやってきた。



読んでいただきありがとうございます!

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次回もよろしくお願いします。

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