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27 戦場を読む者

ズズズズズ……


崖を滑り降りる。


足場は最悪だ。

だが、そんなことを気にしている余裕はなかった。


視線の先――

道具屋の前。


一体のゴリラ型モンスターが、扉に張り付くようにしていた。


「ゴォッ……!」


分厚い腕が振り上がる。


(まずい……!)


着地と同時に、走る。


「ミーナー!!」


叫んだ瞬間――


モンスターが、こちらを振り向いた。


赤黒く濁った目。


「弱点視認!」


視界が切り替わる。


青白い流れ。

その中に浮かぶ、“黒い歪み”。


――胸部。

心臓の、わずかに右。


(そこか……!)


距離は近い。

迷う時間はない。


短剣を握り直し、一気に踏み込む。


「はぁっ!」


モンスターの腕が振り下ろされる。


重い。


だが――


(見えてる!)


半歩ずらす。

風圧が頬をかすめた。


そのまま、懐へ。


「そこだっ!」


狙いは一点。歪みの中心。


ざしっ――


手応えは、異様に軽かった。

まるでそこだけ、世界から切り離されているみたいに。


「ゴ……ッ?」


動きが止まる。


次の瞬間――


流れが崩れた。


青白い線が乱れ、黒い歪みが弾ける。


ドサッ――


巨体が、その場に崩れ落ちた。


「……倒せた」


荒い息を吐く。


「ミーナ!」


扉へ駆け寄る。


「……ノア?」


中から、震えた声。


「無事か!?」


「う、うん……怖くて……」


「もう大丈夫だ。絶対に外に出るな」


「うん……!」


安堵する暇もない。


――ドンッ!


遠くで衝撃音。



「ぐあっ!」


ザックの声だ。

振り向いた。


住宅街の少し先の畑の辺り。

まだ戦いは続いていた。


――いや。

あれは戦いというか、すでに押されている。


完全に。


ケイトの矢が弾かれる。

ミリスの魔法が当たっても倒れない個体。


なのに――

同じ攻撃で、あっさり倒れる個体もいる。


(効き方が……違う?)


左手をかざす。


「弱点視認!」


視界が開き、無数の青白い流れが確認できた。


その中に混じる、黒い歪み。

――そして。


(全部、違う……!)


同じモンスターなのに。

歪みの位置が、個体ごとに違うことがわかる。


(だから当たる場所と、当たらない場所がある……)


その瞬間、全てが繋がった。


「……行くか」


一歩、踏み出す。

これは、戦うためじゃない。


――導くためだ。



「そこじゃない!」


思わず声が出た。


ザックの剣が振り下ろされる。


「は?」


一瞬、動きが止まる。


「右だ! 胸の下!」


「チッ!」


ザックが無理やり軌道を変える。


ざんっ――


「ゴッ……!」


流れが断ち切れる。


ドサッ。


「……なんだ今のは」


「偶然じゃないわ!」


ケイトが叫んだ。


「見えてるの!?」


「……たぶん!」


僕は短く答えた。


次の個体。


(来る――)


「左来る! 跳ぶ!」


「来た!」


空中へ。


ケイトの矢が、僕の指示で歪みを射抜く。


撃破した。


「……読んでる」


ミリスが呟く。


ザックが振り向いた。


「そういうことか……!」


ニヤッと笑う。


「じゃあ、次はどこだ!」


(来た……)


息を整える。

そして、戦場が、変わる。

バラバラだった動きが、繋がっていく。


「正面二体! 右が速い!」


「ザック右! ケイト左!」


「ミリス、詠唱ずらして!」


「了解!」


三人が動く。


――噛み合う。


次々とモンスターが倒れていく。


「いける……!」


戦線が、持ち直しているのがわかった。

崩れていた流れが、再構築されていく。


(見えているなら――負けない)


そのとき。


ゾワッ――


背筋に、強烈な違和感。


(……なんだ?)


森の奥。遠く。ひときわ濃い“何か”。


だが――


スッ……


それは、一瞬で消えた。


「……消えた?」


考える間もない。


「ノア! 次は!」


ザックの声だった。


「……ああ!」


視線を戻した。


(今は、こっちだ)


違和感は残る。

だが優先すべきは――目の前。


「次、三体! 中央無視、左右先!」


「了解だ!」


戦いは続く。


だが――

もう、崩れない。


戦場は、観測され。


そして――

制御され始めていた。

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