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25 寄生虫と微生物

図鑑に記された――魔族。

その一文を見た瞬間から、森の静けさがどこか別のものに感じられていた。


見えていないのに、確実に“いる”。

それだけで、人は本能的な恐怖を覚える。


魔族とは何なのか。本当に人にとって脅威なのか。そして――なぜ、僕は“遭遇している”のか。


(気づいていないだけで、すでに近くにいる……?)


姿を変えているのか。擬態しているのか。それとも、そもそも見分けがつかない存在なのか。


考えれば考えるほど、答えの出ない問いばかりが浮かぶ。


「……やめよう」


小さく息を吐く。

今考えても仕方がない。


僕は思考を切り替え、いつもの生活へと戻ることにした。



「ふぅー……」


森で狩りをし、食事をし、眠る。

朝になれば、川の音と鳥の声で目を覚ます。


時には大雨に打たれ、テントを移し、拠点を作り直す。


そんな日々を繰り返し――

気づけば、半年が経っていた。


サバイバル生活にもすっかり慣れ、週に数回は村へ行き、素材を売り、必要なものを補充する。


無理もなく、困窮もない。


ただ淡々と、スキルを磨き続ける日々だった。


「スキルツリー」


目の前にウィンドウが展開される。


ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

ユニークスキルツリー(10)

  原理理解ー✔︎原理の理解向上(生活)

  |

  体質ー✔︎学び体質

  |

✔︎臨床検査ーStage1観測系ーxxxーxxxーxxx

  |   ー✔︎弱点視認

  |   ー✔︎生命反応感知

  |   ー✔︎寄生異物検査(新)

  |   ー✔︎微生物検査(新)

   |

  植物検査ー✔︎薬草ポテンシャル検査ー✔︎薬草の極意1

  |

  生活検査ー✔︎料理の検査


ノーマルスキル(1)

✔︎虫取り名人


ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー


「……増えてきたな」


観測系。


そう書かれた枝が、少しずつ広がっている。

そして、この半年で新たに覚えたスキルは2つ。

1つは、《寄生異物検査》だ。


森の奥で見つけた、一匹の鹿。


ぱっと見たところ、外傷はない。

だか、明らかに弱っていた。


「……おかしい」


《臨床検査》を発動する。


青白い流れ。


その中に――


「……何だこれ」


明らかに「別の動き」が混じっていた。


本来の流れとは違う、異質なうねり。

細く、長く、体内を這うように動いている。


(流れの一部じゃない……「別物」だ)


その異物は、臓器の一部に絡みつくように存在していた。


「……寄生、か?」


思わず呟く。


転生前の知識が結びつく。

外から侵入し、内部で生きる存在。

そして――宿主の流れを歪めるもの。


原因が理解された、その瞬間。


(天の声)

《スキル《寄生異物検査》を獲得しました》


「異常」ではなく、「異物」。


流れそのものの乱れではなく、

流れに「混ざる別の存在」を検知する力。


「これは……使い道が多そうだ……」



そしてもう1つが《微生物検査》。


ある日の深夜。


月が明るく、妙に目が冴えていた。

何かに導かれるように、森へと足を踏み入れる。


そして、森の中で、奇妙な光を見つけた。


「……光ってる?」


一本の木の幹が、淡く青白く発光していた。


近づく。


「臨床検査」


すると――


「……細かすぎる」


木ではない、その表面に、無数の微小な反応があった。


点にも満たない粒子。

だが、確かに存在している。


(これ……何かが付着してるのか?)


さらに観察する。


それは木の表面に広がり、一部が発光していた。


「……もしかして、カビか?」


だが、それは目に見えるカビではない。


もっと小さい。無数に存在する何か。


(見えてないだけで、ずっとそこにある)


転生前の知識が繋がる。


水の中。

空気の中。

体の中。


どこにでも存在するもの。


「……微生物」


その概念を理解した瞬間――


(天の声)《スキル《微生物検査》を獲得しました》



「臨床検査、か……」


改めて考える。


このスキルは何なのか。


攻撃ではない。防御でもない。


「……観る力」


流れを観る。変化を捉える。違いを見抜く。


存在を「認識する」。


そして――


「選ぶ」


何をするか。何をしないか。


その判断を導く力。



森での生活は、気づけばかなり安定していた。


食料はある。

拠点もある。

スキルも育っている。


「……順調だな」


ふと、そんな言葉が漏れた。


そのときだった。


――違和感。


ゾワッ…


身体の奥を何かが這うような感覚。


ザワザワザワ……


森の木々が、何かを拒むように揺れている。


ただの大きな風かもしれない。

だがーー違う。


ユニークスキル《臨床検査》を持つ自分だからこそ感じる、「流れの歪み」。


だが次の瞬間、その何事もなかったように消えた。


静寂。


何もなかったかのような森。


このときの僕は、まだ知らない。


この森での一年が終わる頃、「それ」が、姿を現すことを。


読んでいただきありがとうございます!

面白かったらブックマーク・評価いただけると嬉しいです。

次回もよろしくお願いします。

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