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20 スライムと戦う

「いらっしゃい」


「おはようございます!」


「おっ、にいちゃん。今日は何を探しに来た?」


「調理用に使うナイフが欲しいと思いまして」


「料理するのか!じゃあ、このあたりだな」


店主は手際よく、いくつものナイフをカウンターの上に並べた。


細くて短い刃。

細くて長い刃。

分厚くて短い刃。

分厚くて長い刃。


そのほかにも、刃がギザギザになったものまである。

予想以上に種類が多い。


「野営するときに使う調理ナイフで、持ち歩くならこのあたりですかね?」


「そうだな。その細くて短いナイフなら手軽に使える。野菜とか果物にはちょうどいいぞ」


「魚や動物を捌くのにも使えますか?」


「魚や動物も捌くのか!だったら、もう少し刃の長い方がいいな。あれ、にいちゃん、ナイフ持ってるって言ってなかったか?」


「あるにはあるんですが、調理用とは分けたいので」


「そういうことか。じゃあ、このナイフなんてどうだ?」


二十センチほどの刃は、綺麗に磨かれている。

持ち手は木製だが、腐食防止なのか、何かが塗られているのが分かった。


「良さそうですね!これください」


「まいどあり」


代金を払い、調理用ナイフが持ち物に加わった。


ーーーーーーーーーーーーーーーー

持ち物(11/15)

・フィルド家の短剣

・調理用ナイフ ◀︎新規

・賢者の書(写)

・病の手引き(原)

・ランチボックス

・薬草×5

・毒消し×3

・テント

・火打石

・まな板

・水筒

ーーーーーーーーーーーーーーーー

お金

・81,500ゼニー(セレノア通貨)

ーーーーーーーーーーーーーーーー


「ほかに何かいるか?」


「買い物はこのくらいなんですが、ちょっとモンスターについて教えてほしくて」


「おう、いいぞ。なんでも聞いてくれ。この村の周辺のモンスターなら知ってるからな」


(地域のモンスター情報は、武器屋で聞けるのか。ふむふむ)


「実は昨日、森を歩いていたら、丸くてぷるぷるした透明なモンスターに会ったんですが、あれは何ですか?」


「おー、森の中でか? 通常は川の近くに出るモンスターだな。おそらくそれは『ウォータースライム』だと思うぞ」


「スライム!? おおー」


ちょっと感動した。

僕の中では、モンスターといえばスライムである。


「ちなみに、僕でも対処できます?」


「対処? ……倒すってことでいいんだよな? だとすれば、全く問題ない。道具屋のお嬢ちゃんでも倒せるレベルだぜ」


「なんと!?」


「ちなみにウォータースライムは、倒すと素材として『スライムの皮』が手に入るから、買い取りもできるぞ。素材回収は忘れないようにな」


「素材って売れるんですね!」


「もちろんだ。動物もそうだし、モンスターは基本、全部素材になる。だから素材採取は忘れるな。あと、モンスターからは魔石が取れることもある。これはこの村じゃ買い取れないが、街に行けば冒険者協会が買い取ってくれるはずだ」


「冒険者協会!?」


「あれ、にいちゃん知らなかったか。冒険者って職業があるのは知ってると思うが、そいつらが集まるのが冒険者協会だ。協会では、冒険者向けクエストの管理や素材買取、冒険者ランクの認定なんかをやってるはずだ。詳しくは実際に街の支部へ行ってみるといい。もちろん、冒険者になりたいならなおさらな」


(なるほど。協会がいろんなことを管理しているのか)


「ちなみに、これも街に行けば分かるが、冒険者協会だけじゃない。武器商人協会や鍛冶師連盟、パン職人協会みたいな、いわゆるギルドと呼ばれる職能団体がいくつもある。そういうのが、それぞれの仕事全体を管理してるんだ。俺は武器商人協会と鍛治師連盟の一員ってわけだな。何か興味を持ったら、聞いてみるといい」


(この人、実はすごい人なんでは?)


「ありがとうございます!勉強になります」


そんなわけで、武器屋を後にし、宿屋でランチボックスを受け取り森へ向かった。



「プキュー」


昨日、スライムに遭遇した場所へ行くと、そこにはまだスライムがいた。


「よしっ、やるぞ!」


気合いは十分だ。


バッグからフィルド家の紋章入りの短剣を取り出し、右手に握る。

スライムの動きをよく観察する。


「プキュゥー」


何かを喋っているようにも見えるが、もちろん意味は分からない。


スライムは特に攻撃してくる素振りを見せない。

だから、こちらから仕掛けることにした。


「おりゃっ!」


短剣はスライムの透明な体に突き刺さった。


「プキュー」


短剣は刺さったまま、そこから水が吹き出していた。


見た目が水の塊のようなモンスターなので、グロさはない。

だが、もしこれが赤かったら、なかなかにキツかったと思う。


「プキュウ!」


スライムは突然こちらを認識したのか、勢いよく突撃してきた。

そのスピードは想像以上に速い。


「ポヨン!」


突っ込んできたと思った次の瞬間、スライムは僕の目の前で跳ねた。


「ジャリン!」


その拍子に、刺さっていた短剣は外れ、地面に落ちる。

そしてスライム本体は、僕の腹部に綺麗に命中した。


「イタッ! ……くはないか」


想像以上に軽い一撃だった。


「なるほど。確かにスライムなら僕でも倒せそうだ」


地面に落ちた短剣を拾い、すかさずスライムへ追撃を加える。

ほんの一瞬だけ、スライムの中心部に“流れの乱れ”のようなものが見えた。無意識にその辺りに剣筋が入る。


「えいっ!」


一撃は見事に命中し、スライムは真っ二つに裂けた。


偶然かもしれない。だが、スライムの中心にある何か――核のようなものに当たった瞬間、短剣が急に軽くなった気がした。まるで、そこだけ抵抗がなかったみたいに。


ゲームでいうなら、あれはたぶん――


「クリティカルヒット、ってやつか……?」


初めてのモンスターとの戦いは、想像以上にあっけなかったが、まだドキドキしている。

倒すことができたという安心感と無我夢中に行ったという高揚感。


実家のフィルド家にいるときは、剣術の練習も強制的にさせられていた。

体の動きとしては感覚的に動いたのだと思う。

ただ、実際にモンスター相手に剣を振るうとなると、僕には気持ちの問題で、どうしても一定の抵抗感を感じていた。


モンスターと言っても生物だしな。僕たちにとって本当に外敵なのか。


ある意味、転生者である僕は、平和な世界からきた人間。

身近に命の危険がある感覚を忘れていたのだと痛感した。


(やはり、この世界は以前の世界とは違んだな)


「おっ、そうだった…」


スライムの皮を回収し、そのモンスターの身体の中には小さな紫色をした魔石も見つけることができた。忘れいないように、魔石も回収する。


それにしても不思議なのは、このスライムというモンスターは全身が水のように透明なため、生きているうちから身体の中のどこに魔石があるかが見えそうなものだが、見えない。

倒された後にしか、魔石が確認できないのは、何かカラクリがあるように感じた。

この魔石の存在も、モンスターを構成する何か重要な要素になっているのだと思った。



モンスターを倒すことができることがわかった僕は、森の中でテントの柱になりそうな適当な木を見つけた。


「これでテントは立てられる」



昨日、目を付けていた開けた空き地に陣を取り、テントを設営した。

とてもシンプルな三角柱を横にした形で、2人ぐらいが横になるのが限界の大きさだ。

ただ、今はこれで十分そうに思った。


テントに入り、水筒のお茶を飲む。


「そういえば、さっきのスライムとの戦いでの最後の一振り、一瞬何かが見えたような気がしたんだよな…」


あれはなんだったのだろうか。

スライムだからか分からないが、スライムの体の中の揺らぎというか、流れの淀みというか、感覚的に感じるものがあった。


ただ、この感覚は、今に始まったものではなく昔からあり、少し不思議に思っていた。


「臨床検査…」


自身のユニークスキルのことを思い出し、改めてスキルツリーで確認をする。


>>>臨床検査:

対象の“状態変化(=流れ)”を観測・解析し、最適な介入へ導くユニークスキル。発動条件がある。段階的進化の可能性を持つが、現時点では詳細は不明。


「あっ、そっか!」


答えはここにあった。

ここに書かれている「流れの観測」というのがすごく近い感じがした。


「んっ、発動条件…?」


ただ、このスキルが正確に発動するためには、何かしらの発動条件がある。

確かに、これまでの違和感については、なんとなく感覚的にそう感じるというもので、はっきりとしたものではなかった。

発動条件を満たすことで、明確になるのだろうと直感的に理解できた。


そんなことで、僕は、発動条件を検証したい衝動に耐えられず、木々が生い茂る森の中へ再度入ることにした。


(臨床検査って…)

読んでいただきありがとうございます!

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次回もよろしくお願いします。

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