18 スキルツリー
「おかえりー」
僕とトマスは、無事に村の道具屋へ戻ってきた。
本日のレムナ草の採取は、いつも以上の収穫になった。
――その理由は、たぶん僕だ。
「それにしても、ノア君の活躍ぶりはすごかったな」
「ははは……つい調子に乗っちゃいました。すみません」
「いやいや、村としてはむしろ助かったんだ。レムナ草は薬草のもとになる植物だからな。薬草は国中どこでも需要がある。いくらあっても困らんよ」
「そうなんですね。なら、ひと安心です」
「おじいちゃん、ノアってそんなにすごかったの?」
ミーナが不思議そうに尋ねる。
「おそらく、今日の収穫の三分の一はノア君じゃないかな」
「えっ!? そんなに!? ノアって変な才能あったのね」
(変な、って……)
「とりあえず、今日採取したレムナ草は明日、薬草にするための加工をする。明日また来るといい。加工も見たいんだろ?」
「はい、ぜひ見たいです!」
「了解だ。じゃあ、また明日な」
「ありがとうございます! 今日は本当にありがとうございました。ミーナも、おやすみ」
「はーい、おやすみー」
「気をつけてお帰りなさい」
僕は宿屋へ戻ることにした。
◇
「ただいまー」
「おっ! 本日の功労者が来たぞ!」
宿屋の一階が夜は居酒屋になることを、すっかり忘れていた。
今日の採取隊に参加していた村人や冒険者たちが、さっそく打ち上げをしている。
「にいちゃん、どんな手を使ったらあんなに採れたんだ?」
声をかけてきたのは、冒険者の一人――大剣使いのザックだった。
同じテーブルに座る弓使いのケイトと、魔法使いのミリスも、興味ありげにこちらを見ている。
「ええっと……なんとなく、ですかね」
「なんとなく!? そんなわけないだろ。村の誰よりも採ってたじゃねえか」
どうやら納得がいっていないらしい。
「ザック、そんな問い詰めてどうするのよ」
「そうですよ、ザック」
ケイトとミリスが助け舟を出す。
「わりぃわりぃ。あんなの見たことなかったから、ついな。すまねぇ」
(あれ……案外いい人なのかも)
「ところで、あなた名前は?」
ケイトが尋ねた。
「ノアです」
「ノアっていうのね。私は弓使いのケイト。で、こっちがミリス。魔法使いよ。こいつはザック。見ての通り剣士」
「おいっ、こいつ呼ばわりかよ!」
「ザックが悪い」
「うん、ザックが悪い」
わはは。
ははは。
くくく。
なんだか、気持ちのいい冒険者たちだった。
「よかったら、ノアも一杯どうです?」
ミリスが小声で尋ねてくる。
「おい、ミリスが誘うなんて、どういう風の吹き回しだ?」
「たしかに。ミリス、もしかして……」
「違う違う。薬草採取の様子を見てて、あれってスキルじゃないかなって思っただけ」
(おお……ちょっと僕も勘違いしかけたぞ)
「そういうことね。確かに私も気になるわ。どういう仕掛けなのかって」
そこで僕は逆に尋ねてみた。
「そういえば……皆さんって、スキルは持ってるんですか?」
「もちろん! じゃないと冒険者としてモンスターと戦えないからね」
「俺は剣術スキル持ちだ。あと、その派生スキルもいくつかあるな」
「僕は、水魔法のスキルかな」
「私は、弓術系のスキルと、シーフ系のスキルをいくつか持ってるわ」
(って、ミリスは僕っ子だったのか)
「僕も一応、あるにはあるんです。ただ、ちょっと変わってて……。あの時使ってたのは『薬草ポテンシャル検査』っていうスキルです」
「えっ!?」
「えっ!?」
「えっ!?」
三人の声がきれいに重なった。
「そんなの聞いたことないわ。ミリス、知ってる?」
「本でも見たことないし、師匠にも聞いたことない」
「なんか、いかにも難しそうなスキルだな!」
「とにかく、普通じゃないスキルってことは分かるわね」
「そうなんですよね……。実は僕も、まだよく分かってないんです。だから、自分のスキルをもっと知るために、ちょうど旅に出たところで」
「おー! ノア、一人旅か!」
どんっ。
ザックが勢いよく僕の背中を叩いた。
力加減を知らないのか、普通に痛い。
「まあでも、今日は村の人たちも喜んでたし、よかったんじゃない?」
「うん、僕もそう思う」
「そうだな。いい仕事したと思うぞ、ノア」
「ありがとうございます。ところで3人に聞きたいんですけど、スキルってどうやって見るんですか?」
「えっ!?」
「えっ!?」
「えっ!?」
またしても三人の声がそろった。
「えっ?」
「ノア、それ知らないで使ってたの?」
「あっ、はい。なんとなく感覚で……」
「不思議」
「そうね。スキルも不思議だけど、ノア自身が不思議ね」
わはは。
ははは。
くくく。
(笑われたけど、悪い気はしない。心地いい人たちだ)
「あっ、ごめんごめん。で、スキルの見方だったわね。それは簡単よ。『スキルツリー』って唱えるの」
「ツリー???」
「そう。ツリー。スキルの一覧が木みたいに枝分かれして表示されるのよ。だから『スキルツリー』」
「なるほど! じゃあ、さっそく……」
僕は一度息を整え、唱える。
「スキルツリー!」
その瞬間、クエスト閲覧のときと同じように、目の前にウィンドウが表示された。
ただ、どうやら他の人には見えていないらしい。自分のウィンドウは自分だけに見えるようだ。
(とりあえず、細かいところは後で部屋で見よう)
「あっ、表示されました! ありがとうございます」
「よかったわね」
「うん、よかったよかった」
「うんうん」
すると、ケイトが少し真面目な顔で続けた。
「ノア。スキルっていうのは、自分の手の内なの。だから基本的には、あまり人に話さない方がいいわ」
「あっ、そうなんですね」
「そう。私たちみたいに、見た目で分かりやすい剣術とか弓とか魔法ならまだしも、そこから派生するスキルは隠しておいた方が有利なことも多いの。戦闘では特にね」
「なるほど……」
「もちろん、冒険者として誰かとパーティを組むなら話は別だけどね。仲間のスキルを知ってるからこそできる連携もあるし。ねっ、ザック」
「おう、その通りだ。俺たちは今回3人でパーティを組んでるが、スキルの情報も共有してる。そのおかげで連携技もできるんだ」
「おおー……なんかすごいですね」
「おっ、ノアも分かるか! 見込みあるなお前!」
「なに得意げになってるのよ、ザック」
「ほんとほんと」
わはは。
ははは。
くくく。
気づけば、眠気がじわじわと押し寄せてきていた。
今日は朝から初めてづくしで、体力も精神もかなり使ったらしい。
「ケイト、ザック、ミリス。僕、そろそろ部屋に戻ろうと思います。いろいろありがとうございました」
3人はまだまだ飲み続ける雰囲気だった。
僕は見た目も中身も、今はしっかり12歳だ。……厳密には、精神は違うが。
そんなわけで、階段を上がり、自分の部屋へ向かうことにした。
◇
「スキルツリー」
ベッドの上で、寝転びながらウィンドウを開いた。
「うぉっ!?」
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ユニークスキルツリー(4)
原理理解ー✔︎原理の理解向上(生活)
| xxx
|
体質ー✔︎学び体質
| xxx
|
✔︎臨床検査ーxxxーxxxーxxx
|
植物検査ー✔︎薬草ポテンシャル検査
| xxx
|
xxx
ノーマルスキル(1)
✔︎虫取り名人
※取得済みは「✔︎」で表示されます
※ツリーは関連スキルから発展します
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「あっ、虫取り名人!?」
……と、ネタのようなスキルはさておき。
「「臨床検査」から、どんどん派生していくわけか」
今日覚えたスキルも「臨床検査」というベースから来ているのが分かる。
それに、気づいていなかったがーー
「学び体質」というスキルも持っているらしい。
「これ……もしかして、スキル名にタッチすれば……」
ポチッ。
ピコン!
「やっぱりな……」
学び体質の説明が表示された。
>>>学び体質:100日連続して本を読むことで取得できる。経験や観察から「独自クエスト」を発生させる効果がある。クエスト達成で新たなスキルや特殊なアイテムを獲得でき、理解と成長が加速する。
「だから、いきなり『薬草採取(初級)』のクエストが出たのか」
腑に落ちた。
「で、肝心の『臨床検査』は……」
ポチッ。
ピコン!
>>>臨床検査:
対象の“状態変化(=流れ)”を観測・解析し、最適な介入へ導くユニークスキル。発動条件がある。段階的進化の可能性を持つが、現時点では詳細は不明。
「ん……これは、まだよくわからないな。ちゃんと検証しないと」
(とにかく、ただのスキルじゃない気はぷんぷんする)
かなりの可能性が見え始めた1日だった。
押し寄せてきた眠気に、意識が沈んでいく。
「おやすみなさい……」
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