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15 森の入口

「お兄ちゃん、おはよー」

「あっ、おはよう」


昨日の子どもたちは、朝から元気いっぱいだ。


自然に囲まれたレムナ村の朝は、少し肌寒さが残るが、とても気持ちがいい。


この村には、武器屋や道具屋、宿屋のほかにも、教会やパン屋が店を構えている。

広場では、小さいながらも毎朝市場が開かれ、野菜や果物、肉やソーセージ、チーズや牛乳、そして生活雑貨が並んでいる。


ときおり、街から来た行商人が、この村では手に入らない品を持ち込むこともある。


今日も広場は賑わっている。

いわゆる朝市というやつだ。


小さな村にしては、人の数が意外と多いように感じる。


「いい村だな」


僕は広場を横切り、小道へ入る。


住宅の脇を抜け、さらに北へ進むと、農作物の倉庫と畑が見えてくる。

そこを越えると材木所があり、やがて村の北側の出口へとたどり着いた。


レムナ村は安全な村とはいえ、北側の出口にはしっかりと扉があり、村全体も木製の塀で囲われている。


モンスター対策というよりは、保管している食料や畑を動物から守る意味合いが強いのだろう。


実際、その塀も大人であれば乗り越えられそうな高さだ。


「この先が、そのまま森に続いているわけか」


扉の先は、数メートル進むだけですぐに森になっていた。


その手前には看板が立っており、「モンスター注意!」と書かれている。


「よし、行くか」


一度、小さく息を吐く。


(……空気が、少し違うな)


わずかな緊張を感じながら、森へ足を踏み入れる。


もちろん、何かが襲ってきたらすぐに逃げるつもりだ。

今日はまず、森の雰囲気を確かめつつ、川の位置とテントが張れそうな場所の確認、あわよくば火打石も試してみたいと思う。

あと、薬草も試してみたい。



森の中を歩き始めて10分ほど経ったころ、分かれ道に差しかかった。


直進の道と、左へ折れる道。

そこには看板が立っている。


「なるほど、左に行くと川か」


直進方向には特に案内はないが、おそらくレムナ草の群生地は直進だろうと見当をつける。


「なら、今日は左へ行ってみよう」



しばらく進むと、本格的な山道となり、道幅は1メートルほどに狭まった。


(これは……少し危ないかもしれないな)


そんなとき、少し先の木の上に、小さなリスの姿が見えた。


とても可愛らしい。


「さすがにこれはモンスターじゃないよな……」


念のため、ナイフをいつでも使えるように鞄から取り出し、腰紐に差しておく。


そっと近づく。


「そーっと……」


「キュキュ」


リスは一瞬こちらに気づいたような動きを見せたが、気にする様子もなく、抱えていたどんぐりを口元に運び、かじり続けている。


「……やっぱり、ただの動物か」


どうやら問題はなさそうだ。


武器屋の主人もリスの話はしていなかったが、念のため注意するに越したことはない。


「それにしても、普通に可愛いな……」


この世界でリスを見るのも初めてだ。


実家では虫ばかり追いかけていたから、気づかなかっただけで、森には普通にいたのかもしれない。


僕はさらに道を進む。



しばらくして、少しひらけた空き地に出た。


特に何があるわけでもないが、周囲が見渡せる。


「ここなら、テントを張れるかな」


そう判断し、この場所を候補地の一つとして記憶した。


道はさらに続いている。先へ進む。


5分も歩かないうちに、ザーッという水音が聞こえてきた。


やがて視界が開け、川にたどり着く。


そこは、大きな岩が点在する渓流だった。


水は透き通っており、魚が泳いでいるのが見える。

心地よい風が吹き抜けていた。


「気持ちいいなー」


使用人が「良い村ですよ」と言っていたのを思い出していた。


さて、川については、水がそのまま飲めるかは分からないが、食材を洗ったり、水浴びや手洗いには使えそうだ。


何より、食料になり得る魚がいるのは大きい。


「枯れ木も探せばありそうだし……さっきの空き地で今日は色々試すか」


そう決め、少し川辺で休憩したあと、先ほどの空き地へ戻ることにした。



空き地へ戻り、座り心地の良さそうな切り株の上にリュックを置く。


日はまだ上りきっておらず、お昼ご飯には少し早い。


テントを試しに張ってみることにした。


「なるほど……テントといっても、柱になるものは入っていないのか。どうりで軽いわけだ」


柱の代わりは現地で木を調達し、組み立てるタイプらしい。


まずは森に入り、ちょうど良い長さと太さの木を探すことにした。


「じゃあ、とりあえずナイフだけ持っていこうかな。いざという時のためにね」


用心に越したことはない。決してびびっているわけではない。


「うーん……なかなか良さそうな木はないな。とりあえず薪用の枯れ木だけでも集めるか」


枯れ木はすぐに集まった。


今日は試しなので多くはいらないが、明日以降も使うかもしれない。日当たりの良い場所に干しておくことにした。


「もう少しだけ奥に行ってみるかな……どうするか」


若干の不安はあったが、テントの柱に使えそうな木を探して、少しだけ奥へ踏み入ることにした。


「あっ、あそこに良さそうなのがある」


少し離れた場所に、ちょうど良さそうな木が落ちているのが見えた。


そのまま近づく。


「ボキッ」


枯れ木を踏んだ音が、やけに大きく響いた。


その瞬間――


「プキュー」


「……っ!?」


聞き慣れない鳴き声が、すぐ近くから響いた。


「モ、モンスター……?」


視線の先。


そこには、ぷるぷると微かに震える、半透明の丸い物体がいた。


「こっ、これは……」

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