14 初クエスト薬草採取
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クエスト名:薬草採取(初級)
達成目標:レムナ村近隣の森に自生する「レムナ草」を3束採取し、薬草を作る
達成ボーナス:《薬草の極意》の取得
内容:レムナ草は、淡い緑の葉と青白い葉脈を持つ薬草で、レムナ村の名の由来でもある。乾燥させると穏やかな回復効果を発揮する。
似た雑草も多いため、状態を見極めて採取し、速やかに処理すること。
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「あっ、レムナ村の由来はレムナ草だったんだ」
思わぬ気づきを得るとともに、気になったのは達成ボーナスだった。
「クエストを達成するとボーナスがもらえて……ん? この《薬草の極意》って、なんだろう」
「極意」という言葉は、なんとも惹かれる響きだ。
これで改めて、レムナ草を採取する理由ができた。
◇
「行ってきまーす!」
天気の良い翌日の朝。
今日は森へ出かける予定だが、まずは武器屋へ寄ることにした。
「ぎい……」
扉を開けた瞬間、鉄と油の匂いが鼻を突いた。
店内は薄暗く、壁には剣や槍、斧が整然と並び、刃先がランプの光を受けて鈍く光っている。どの武器も使い込まれているのか、装飾よりも実用性を重視した無骨な造りだった。
奥から現れた店主は、煤にまみれた腕で鉄槌を肩に担いでいた。
「いらっしゃい!」
「おっ、にいちゃん、今日は何を探しに来た?」
「ええっと……」
少しドギマギしてしまう。
「こういう店は初めてかい。少し説明しようか」
「あっ、はい。お願いします」
「俺の店では、剣や短剣、槍や弓に加えて、盾や兜なんかの防具も扱ってる。
街の武器屋ほど種類は多くないが、一通りの物は揃えてるぜ」
説明は続く。
「この村の周辺じゃ、大したモンスターは出ないから、武器は必須じゃない。だが森に入ってモンスターや動物を狩るなら、武器は必要だな。とりあえず、お前さんなら短剣くらいは持っておくと安心だ」
(やっぱり短剣か。それなら持ってるけど……)
「この辺りって、あまりモンスターは出ないんですか?」
「そうだな。森に入らなければ、滅多に遭遇しない。だが薬草採取なんかで森に入るなら、たまに出くわすな」
「おー、興味あります。どんなモンスターが出るんですか?」
「そうだな、ウサギにイタチにタヌキあたりか」
「えっ!? ちょっと待ってください。それってモンスターなんですか?」
「おう。見た目はただの動物だし、普段は食材として狩るんだがな。
時折、気性が荒くて襲ってくるのがいるんだ。だから念のためモンスター扱いしてるんだ」
「なるほど……確かに時期によって凶暴な獣っていますしね」
妙に納得してしまった。
(転生前では“モンスターペイシェント”なんて言葉もあったけど……)
少し懐かしさが込み上げる。
というわけで、短剣はすでに持っている。何も買わずに店を出ようとした。
「おい、にいちゃん。何も買わなくていいのか?」
「実は短剣、持ってるんですよ」
「まあそうか。ひとりでこの村に来たくらいだしな」
(ん? ひとりで来たなんてまだ言ってなかったけど……)
武器屋を後にし、次は道具屋へ向かった。
◇
「こんにちは……」
「いらっしゃいませー」
幼い女の子の声が返ってきた。
道具屋の店内である。
扉を押し開けた瞬間、乾いた薬草の匂いと、わずかに甘い樹脂の香りが鼻をくすぐった。
店内は外から見たよりも広く、壁一面に木製の棚が並び、瓶詰めの薬草や粉末、見慣れない素材がぎっしりと並べられている。透明なガラス瓶の中には、淡く光る葉や色とりどりの液体が揺れており、それぞれに手書きの札がぶら下がっていた。
カウンターの向こうにいたのは、僕よりも背の低い女の子だった。
じっとこちらを見ている。
「あっ、あのー。薬草が欲しいんだけど……」
「お客さんだったのね。どこの子どもが冷やかしに来たのかと思ったわ」
(僕とあまり変わらない、というか僕より年下に見えるけど……)
「ははは。で、薬草ってある? あと、毒消しもほしいなぁと」
「もちろんあるわよ。道具屋だからね。薬草ね、ちょっと待って」
その小さな女の子は、見た目とは裏腹にテキパキと棚から薬草を取り出し、カウンターに並べた。
「どのくらい欲しい? 大抵の人は5つくらい買っていくけど」
「じゃあ、僕も5つもらうよ」
「毒消しは3つくらい?」
「あっ、そうだね。3つもらおうかな」
「準備するね」
これまた手際よく、毒消しを包んでいく。
「ちょっと聞きたいんだけど、薬草ってこの村の特産品なんだよね? レムナ草っていう」
「そうよ。この村の裏手の森の奥に群生地があって、そこで採れるの。ちょうどこの時期に生えるから、街から冒険者を呼んで一緒に採取するのよ」
「そっかー! 僕も興味あるんだけど、一緒に行ったらダメかなー?」
女の子が改めてじーっとこちらを見つめる。
「そうね。おじいちゃんに聞いておいてあげる。薬草の採取は、うちのおじいちゃんと村のおじさんたちで行ってるから」
「ありがと! 楽しみだよ」
「ふーん」
またじーっと見られる。まるで珍しいものを見るような視線だ。
「あっ、そうそう……」
「まだ何かあるの?」
「野宿するための道具とか置いてる?」
「えっ、あなた野宿するの?」
驚いた表情を見せた。
「あっ、うん。数日したら野宿しようかなって思ってて……」
(何かおかしなこと言ったかな?)
「まあいいわ。この辺りはモンスターも滅多に出ないし、森の奥まで行かなければ大丈夫だと思うわ」
(やっぱり、この村の周辺は比較的安全なんだな)
「野宿するなら、テントかハンモック、火打石、ナイフ、まな板は必需品ね。あとは水筒もいるわね」
「さすが、詳しいんだね!」
「当たり前よ。こう見えて道具屋の看板娘なんだから!」
(看板娘って自分で言うものなのか……)
「そうそう、釣り竿とかもあるかなー?」
「もちろんあるわよ。川で魚を釣れば、結構やっていけるかもね」
(ちゃんとサバイバルの本も読んでるし、大丈夫だろう)
「あっ、そうだ。マジックバックってある?」
「マジックバック!? そんな高級品、この村にはないわよ。大きな街に行かないと」
(まぁ、そうだよね……)
「じゃあ、とりあえず薬草と毒消しと、野宿グッズ一式。それと大きめのリュックをください」
「毎度あり!5,400ゼニーいただくわ」
欲しいものは一通り揃った。
「ところで、僕はノアって言うんだけど、君の名前は?」
「ミーナよ」
「ミーナか! 覚えた! また来るね!」
なぜか少しドキドキしている自分がいた。
(いよいよ僕もやばいな……気持ちも少年に戻っている)
店を出て、いっぱいになったリュックを背負う。
「おっと」
少しよろけたが、なんとか踏みとどまる。
12歳の体には、やや重すぎるようだ。
「念のため持ち物を確認しておこう」
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持ち物(10/15)
・フィルド家の短剣
・賢者の書(写)
・病の手引き(原)
・ランチボックス
・薬草×5
・毒消し×3
・テント
・火打石
・まな板
・水筒
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お金
・82,500ゼニー(セレノア通貨)
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これで準備万端。
とりあえず、村の北側。森の入口へ向かってみよう。
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