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13 冒険者の会話

「はーい、お待たせ!」


エールの大ジョッキが3つ、ちょうど目の前を運ばれて行くところだった。


いわゆるビールの一種だが、少しフルーティな味わいで、綺麗な飲み水が確保できない地域では、水の代わりとして飲まれるほど一般的な飲み物だ。


1階はすでに居酒屋のような賑わいで、村の男たちがあちこちで談笑している。

その中には、見るからに冒険者と思われる一団もあった。


僕は窓際の4人がけの丸テーブルに腰を下ろす。


しばらくして、店員の若い女性がメニューを持ってやってきた。


「いらっしゃいませ。お泊まりの方ですね。メニューです」


「ありがとうございます」


「上から3つは宿代に含まれているお料理です。お飲み物は別料金100ゼニーとなりますのでご注意ください。」


「はい、わかりました」


「ではご注文決まりましたら、お呼びください」


店内はかなり繁盛している。

この村でお酒を飲める場所は、ここくらいなのだろう。


(自宅でお酒が飲めるのは、貴族か裕福な商人くらいか……)


僕はメニューに目を通す。


「なるほど、メインを3つの中から1つ選んで、あとはスープとパンが付くのか」


店員を呼ぶ。


「すみません、注文お願いします」


「はい、ただいま」


店員がやってくる。


「どちらにされますか?」


「この一番上の『サルモンフィッシュの香草蒸し』で。あと、エールを1つお願いします」


「承知しました。少々お待ちください」


無事に注文できて安心した。


僕も最初はこの年齢でエールが飲めることに驚いたが、この世界では事情が少し違う。

一つは、お酒が水よりも衛生的で安全なこと、二つ目が、多くの水が硬水で飲用に適していないこと。

このため、飲酒に厳密な年齢制限は存在しない。


ちなみに僕は、前世では無類のビール好きだった。

そのせいで実家でもエールの許可をもらい、前世の勢いで飲んでーー見事に倒れたことがある。


アルコール耐性は引き継がれないらしい。

身体が年相応な以上、すぐに許容量を超えてしまうのだと、齢10歳にて悟った。



しばらくして、料理が運ばれてきた。


「お待たせしました。ごゆっくりどうぞ」


「ありがとうございます」


いつも「いただきます」と言いたくなる。それは前世からの習慣だからだ。


だが、僕が生まれ育ったフィルド家では、大地の神とご先祖様に感謝を捧げてから食事をとるのが慣わしだった。


ーーとはいえ。


これからは一人で生きていく身。


自分の感覚にも、正直でいたい。というわけで…


「いただきます!」


小さく手を合わせた。



サルモンフィッシュは、川魚だが比較的大きく、最大で80cmほどにもなるらしい。

焼いても蒸しても美味しい、ポピュラーな食用魚だ。


ただし生食は危険で、刺身には向かないと「セレノア魚図鑑」に書かれていた。


「香草蒸し……ムニエルに近い調理法かな」


白身魚と香草、そしてバターの組み合わせ。食べる前から、うまいと分かる料理だ。


一口食べて、確信に変わった。


「……やっぱり美味しい」


スープは、野菜と豆の入った透き通ったもの。優しい味付けで、体に染みる。


(この薄味がいいんだよな……)


毎日食べても飽きがこない。共通メニューとして出すには、理にかなっている。


パンはライ麦の黒パンだった。


この国の一般家庭では主流のパンで、少し硬く、酸味がある。だがスープと合わせると、ちょうどいい。


小麦の白パンは、貴族や裕福な家庭、あるいは大きな町でしか手に入らないらしい。


「ごちそうさまでした」


静かに手を合わせる。


食事は大事だ。だからこそ、丁寧に味わいたい。



「それにしても、今回の協会のクエスト、楽なのに報酬いいよな」


ふと、奥のテーブルから声が聞こえてきた。


「そうなのよね。薬草採取の見張りなんて、ほとんどモンスターも出ないし」


「雪解けで一斉に花が咲く時期限定だからじゃないかなー?」


「なるほどな!そうかもしれねぇ」


「あと一週間だし、しっかり稼ぎましょう」


「おう!」

「そうだね!」


直接話しかける勇気はない。

だから僕は、さりげなく聞き耳を立てていた。


(こんなに騒がしいのに、意外と聞こえるもんだな……)


「なるほど……だから冒険者が来てたのか」


この村の薬草は、やはり有名らしい。


三人組のパーティだった。

大剣を背負った体格のいい男。気配りができそうな弓使いの女性。そして、おっとりとした雰囲気の妹系魔法使い。


トップクラスではなさそうだが、新人でもない。


(ランクCくらい……かな)


思わず、オタク的な分析が働く。


(まあ、僕は現時点でランクFのポンコツだけど。というか冒険者ですらないが)


「それにしても、一度、薬草採取するところ見てみたいな」


そう思った瞬間、久々の天からの声が聞こえてきた。


(天の声)「独自クエスト『薬草採取』が設定されました」


「えっ、なにこれ!」


つい、声に出してしまった。

周りに変な目で見られていないかキョロキョロするが、大丈夫だったみたいだ。


(なるほど、家を出る時に天の声が告げていた「独自クエスト」というのだな)


クエストの中身が気になってしょうがない。

お腹も満たされたことだし、部屋へ戻ることにした。



「さて……独自クエストって言ってたけど、どうやって確認するんだろう」


これまでも、時折「天の声」が聞こえることはあった。だが、あくまで補足説明のようなものだと思っていた。


今回は「クエスト」と言っている以上、詳細があるはずだ。


「もしかして……ウィンドウが開いたりするのかな」


試しに口にしてみる。


「クエスト!」


――反応なし。


「クエスト表示!」


――やはり反応なし。


「……じゃあ、これか?」


「クエスト閲覧!」


「ピコン!」


ゲームのような電子音とともに、目の前にウィンドウが現れた。


まるでVRゴーグル越しの世界のように、視界に重なる形で表示されている。


「おおー!!」


感動はさておき、一度、状況を整理する。


どうやら、特定の行動やきっかけによって「独自クエスト」が自動的に生成されるらしい。そして「クエスト閲覧」と念じることで、その内容を確認できる仕組みのようだ。


おそらく「クエスト」という単語だけでは反応しないのは、日常会話でも使うためだろう。誤作動を防ぐために、「閲覧」という言葉がトリガーになっていると考えられる。


「で……『薬草採取』ってどんな内容なのか」


胸を高鳴らせながら、僕はウィンドウへと視線を向けた。


読んでいただきありがとうございます!

面白かったらブックマーク・評価いただけると嬉しいです。

次回もよろしくお願いします。

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