ご対面
しばらく森の中を進み続け、上空から流れ星が落ちたと思われる場所に辿り着く。木々がなぎ倒されており、星が落ちた衝撃で地面がえぐれてクレーターのようなものが出来上がっていた。
ぷぽーぴゅぽー!!
チビ影は本体が無事か確認するため、キョロキョロと周囲を見渡しながら自分自身が出せる最大音量で鳴く。クラウディアの周りをグルグルしながら鳴く。
「オバケさん……」
心配そうにチビ影をなだめるが、チビ影は鳴くことをやめない。するとどこからか何かを破壊するような大きな音が聞こえた。
「何かしら、あっちのほうから……?」
クラウディアは音がする方へ指を差すと、そこには小さな岩山があった。よく見ると大きな穴が開いていた。白杖代わりの傘の持ち手を握り締めたクラウディアが不安そうな表情を浮かべるのをチビ影が気づいた。
ぷー……。
チビ影の唸るような鳴き声にクラウディアはビクッと肩を揺らし、恐る恐るチビ影の方へ振り向く。
「……オバケさん?」
あそこから本体とは違う生体反応を感じる……。
そう感じながらチビ影はクラウディアを守るように前へ立ちながら影から手を出し優しくクラウディアの手を掴む。そしてゆっくり、ゆっくりと岩山に2人は近づいてく。
ぷぴょー……。
「オバケさん、大丈夫?」
恐怖を感じながらもクラウディアはチビ影の手を強く握り返す。岩山まで近づき、穴の中を確認しようとチビ影が体を伸ばしながら穴の中を覗き込む。森の薄暗さと相俟って暗かった。クラウディアと共にチビ影が穴に近づくと、何かが穴の中から勢いよく飛び出してきた。
「え、なにっ!?」
隣のクラウディアから驚きの声が聞こえた。すぐさまのクラウディアの方を見ると人間のような手が暗い穴から伸びておりクラウディアの左手首を掴んでいるのが見えた。
「や、やだッ!離して……!!」
必死に振り払おうとするが人間のような腕はビクともせず、そのまま穴の中へと引っ張られそうになる。チビ影は慌てて体の一部を伸ばすも届かない。するとクラウディアを引き寄せながら穴から何か出てきた。
「コイツ……ガキか?」
出てきたのは所々ボロボロになった服を纏った、赤髪の女性だった。クラウディアの腕を強く引きながら非対称の瞳で精一杯の威嚇でプープー鳴くチビ影を見る。
「チッ、うっせーな」
少しイラついたのか女性は空いている左手で空を切るように手を振ろうとしたが、その手がチビ影の顔面に当たる寸前で止まる。
「ッ……」
女性の顔が青ざめる。そしてチビ影から目を逸らし穴の中へとまた戻ろうとした矢先、盛大に前のめりに倒れた。そして、掴んでいたクラウディアを離す。
「きゃあ!?」
悲鳴を上げたクラウディアは腰から地面に衝突する寸前でチビ影に支えてもらったおかげで無傷で済んだ。
「……腹、減った」
地面に突っ伏した女性は力尽きた声で弱々しく呟く。その声にはどこか疲労が見えていた。そんな女性の背中をチビ影は心配そうにつつく。それが嫌で女性は起き上がるとチビ影を左手で叩く。
「触んなッ……よ!」
怒鳴るようにチビ影に言う女性に対し、クラウディアは恐る恐る声をかける。
「……あの、お腹空いてるんですか?」
「……だったらなんだよ」
あからさま不機嫌そうな表情に若干怯えながらもクラウディアは手にしていた傘を地面に置き、倒れる女性の近くに腰掛けようとするとクラウディアの頭上を何かが猛スピードで通過し女性の頬に命中した。
「……いってぇな!」
女性が声を上げ、頬に命中した何かが地面に落ちる。それは森で採れたと思われる赤い果実だった。コロコロと地面に転がる果実をチビ影がその様子を見てるとチビ影とクラウディアの背後から視線と共に聞こえる金属音……。
ぷぴょー!ぷぷぴょー!!
一回り高い鳴き声を上げるチビ影の目線の先には、大量の果実を抱えた傷だらけの本体の影。
"カチカチッ!"
ぷぽー!!
チビ影とクラウディアを見るなり果実を地面に落とし、手を伸ばし二人を抱き締める。
「オバケさん……!」
いきなり抱き締められクラウディアは照れてしまうがチビ影は気にせず本体の影に頬擦りする。すると本体の影はチビ影の頭を優しく撫でる。その様子を女性はどーでもいいと言った感じで見ていた。
「くだらねぇ友情ごっこ見せてんじゃねぇよ、あたしは腹が減ってんだ。さっさとその果実よこしやがべばっ!??」
起き上がろうとしていた女性の言葉を遮るように本体が投げた果実が顔面に命中する。
"ガヂィッ!!"
さっさと食えと言うように、一段高い金属音を発した本体の影に睨まれながら言われると顔を擦りながら女性は渋々と言った感じで果実を拾いかぶりつく。
「……あま」
口から垂れた果汁を腕で拭いながら食べる女性の様子をチビ影とクラウディア、その後ろの本体とで静かに見守っていた。




