行動開始
しばらくクラウディアに抱かれていると異変に気づいたクラウディアの家のメイド、執事達が鍵をかけたはずのクラウディアの部屋を強行突破を使って入ってき、チビ影からしたら眩しいほどの照明が点く。チビ影はベッドの下にすぐさま隠れ目を細めながら様子を見ていた。
"お嬢様、しばらくあの森には立ち寄ってはいけません。"
"怪我などしたら私共々奥様に叱られてしまいます。"
"ご理解ください。"
クラウディアを囲むようにメイド達が声をかけ、執事がクラウディアに毛布を羽織るように渡す。そんなメイド達と執事のことを察しながらクラウディアは静かに頷いた。
「……分かった」
チビ影が身を縮めるとスプリング音が鳴る。使用人たちの手を借りながらクラウディアをベッドに移動させたのだろう。遠くから"おやすみなさいませ、お嬢様"と挨拶を交わす声と共にドアが閉まる音がした。
ここまでが、流れ星が落ちた直後の話。
そして流れ星が森に落ちてから約1時間後。
チビ影が窓越しにまだ日が昇っていない薄暗い外を見つめる。あの時は本体の安否、森が焼けてないかの事で頭がいっぱいになって少々パニックになっていたがクラウディアがなだめてくれたおかげで冷静さを取り戻すことが出来た。
ぷ……。
チビ影が小さく鳴く。
「……オバケさん」
起きたのか、クラウディアはベッドから起き上がる。
「森が……心配なのね」
ぷー……、と鳴くチビ影は窓越しに森を見る。
「森に行くなら、私も一緒に行くわ」
えっ、とチビ影は目を見開いてクラウディアの方へ振り返る。するとクラウディアはチビ影を安心させようと優しく頭を撫でる。
「行ってもいいけどもしもオバケさんになにかあったら……私……」
"私、嫌だよ" 頭を撫でながらクラウディアは涙目でチビ影を見つめる。それを見たチビ影はぷぴょー……と鳴きながらしばらく考えた後、チビ影を撫でていたクラウディアの手を両手で力強く掴んだ。
「じゃあ決まりだね」
チビ影はクラウディアを毛布で包み込むとそのまま背負う。窓に行く前に念の為、クラウディアの傘を手に取りクラウディアに持たせる。そして窓に張り付き、クラウディアが落ちないよう窓をゆっくり開けてから飛び降りた。
「ひゃ……」
チビ影に背負われた状態で窓から飛び出したクラウディアは悲鳴を出すもすぐに両手で口を覆う。今だ夜更けで誰も起きていないのが幸いだった。
ぷぽぷぽー!!
「え、何、オバケさ……きゃっ!?」
急に声を上げたかと思えば猛スピードで森へ向かう。動きやすいように、クラウディアに負担がかからないように、平べったい影の姿から四足歩行の真っ黒い獣のような姿形に変形させながら森へ進む。時々、背中のクラウディアの様子をうかがいながら疾走してると森の入口に到達していた。
ぷぴょー……。
チビ影が鳴きながら周囲を確認する。幸い、ここまで流れ星の衝撃波の被害はないようでほっと一息を着くが1番の気がかりは本体の安否。チビ影はクラウディアを降ろした後、元の平べったい姿に戻る。
「オバケさん、大丈夫?」
心配そうに声をかけるクラウディアにぷぴょーと返事する。そして森の方へ進もうとした矢先、後ろから何か引っ張られたような気がして振り返る。するとそこにはクラウディアの手が掴んでいた。
「ねぇ、オバケさん……私の勘違いかもしれないんだけど、なんだかこの森から……怖い何かがいる気がするの」
ぷぴょ?
「気のせいかも……だけど……」
チビ影はクラウディアが掴んでいる手と反対の手を優しく包むように握る。その手の温もりに安心したのか、クラウディアは少し笑ったあと改めて森へと入った。




