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囚人ちゃんと盲目お嬢  作者: 睦月微糖
11/16

焦ってもいい事ない

しばらくして、月光に照らされた室内ですやすや眠るクラウディアの上にチビ影はいた。




安心した彼女は枕に抱きついて、猫のように丸くなって眠るクラウディアの頭をチビ影は軽く撫でるように触れる。すると、ゆっくり目を静かに開けたクラウディアが目を擦りながら起き上がる。




「……オバケさん、そこにいるの?」




眠気が残ったまま、ベッドに座るクラウディアは目の前にいるチビ影に優しく話しかけた。その問いかけにぷぴょー、と返事する。




「何だか目が覚めちゃって……」




恥ずかしそうに言う彼女を見て、チビ影は何か思いついたのかクラウディアに手を掴みグイグイと窓の方向へと引っ張る。




「どうしたのオバケさん……外見たいの?」




ぷぴょぷぴょ。




「分かった、ちょっとまってね」




クラウディアはベッドから降りるとチビ影に誘われるまま窓に近づいた。そして、ゆっくりと窓を開けると夜風と共に月光が静かに降り注ぐ。風が優しく彼女のクリーム色の髪をふわりと撫でるように流れる。




ぷぴょー……。




気持ちよさそうに鳴きながらチビ影は夜空に浮かぶ満月を見上げる。すると満月から大きな流れ星が夜空に向かって、ではなく地上に向かって落ちていくのが見えた。




ぴゅぽー……??




変な音を立てながらチビ影は首を傾げる。本来、流れ星は夜空を駆けるように地上へと落ちてくる。が、今見た流れ星は落下するというよりゆっくり下降するように空を下りていたのをその目で見たからだ。




「どうしたの?オバケさん」




チビ影の様子にクラウディアが気づいた瞬間、大きな音と共に地面が激しく揺れる。




「ッ!?」




突然強い揺れに耐え切れず、クラウディアは床へと尻もちをついてしまう。何が起きたのか確かめようと窓から顔を出して外を見ると、遠くの場所……チビ影の本体がいる森から煙が上がっていた。




「え、な、何があったの……!?」




不安そうにチビ影に話しかけると、チビ影はクラウディアの頬に触るように優しく触れるがその手は震えていた。




"あの流れ星が、もしも本体に当たってて……。"




良からぬ事がチビ影の脳裏に浮かぶ。




窓に手をかけ飛び降りようと考えていた矢先、クラウディアがチビ影の手を掴んだ。




「待ってオバケさん!今から行っても危ないよ!」




ぷ……ぴょ……。




心配そうに声をかけるクラウディアにチビ影はどこか寂しそうな顔をして小さく鳴いた。チビ影の気持ちを察した彼女は優しく、そして安心させるように抱きしめる。




「大丈夫、きっと大丈夫だから……」




根拠のない励まし、それでも今のチビ影にとっては安心する言葉なのか。クラウディアに寄りかかると本体と別れる際に本体から発された言葉を思い出す。




"今の私は森を守っていくことしか出来ない、だからあなたがクラウディアを守るの。大好きだったレインの娘なのだから……。"




人間に分からない影同士の言葉、その言葉を思い出しながらチビ影は静かに目を閉じた。




〜〜〜〜〜〜




その頃、森の方では大きなクレーターの中心にそれを作ったであろう人物が横腹を押さえながら横になっていた。




「はぁ……はぁ……」




痛みに堪えながら、その人物はゆっくりクレーターから這い出ると空に浮かぶ満月を見上げる。そして夜空に向かって、拳を握りしめて呟く。




「あんのぉクソ黒髪とクソクラゲェェ……あたしにケンカ売るとはいい度胸してんじゃねぇか……ッ!!」




そう、その人物は赤龍の囚人。不意をつかれた時に腹部を撃たれ落下して、地上へ落ちてしまったが人体実験で肉体強化していたおかげで命に別状はなくすこし衣服を汚してしまっただけですんだのだ。




「次は、ねぇからな……ッ!」




赤龍はそう吐き捨てると、ふらついた足取りで辺りを見渡す。




「ここ、どこだ」




右も左もわからない。ただ分かっているのは、自分は頭上で光を放つ満月……の近くに浮かんでる豆粒ぐらいのサイズの監獄から落ちてきた事だけ。




「龍に変化すればあそこまで戻れそうか?」




龍化するために全身の力を解放させようとした瞬間、横腹から大量の血が溢れ赤龍は地面に倒れる。




「チッ……あの野郎、とんでもないところに撃ちやがって……」




傷口を押さえ、赤龍は何とか立ち上がる。しかし出血量がかなり多いようで、目が霞み視界が朦朧していた。




「あぁ……くそ……」




赤龍は森の奥へ歩き始める。しかしいくら歩いても、一歩、また一歩と。まるで前に進まずその場で足踏みしてるみたいであった。




「ッ……」





とうとう力尽きたのか赤龍は膝をつき、その場に倒れるように横になる。意識が途切れそうになった時、彼女の目の前に無数の赤い目がこちらを睨むように見ていたが、視界がぼやけた赤龍にそれを知る由もなかった。

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