表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
98/130

“mal”!!


 ―――ミヤビが部室を後にした数秒後。

 

 ミヤビから受け取ったメガネを手に、ウィリー・ウィリアムは「ふむ…… 」と唸った。

 “メガネ”は既にこの世界でも流通しているため、特にこれといった価値も無い。転生者が掛けていたと言い張っても、証拠が無い。……となれば、展示する価値は無さそうだ。


 「おーい、ウィリー氏〜」


 そのタイミングで、ロザが長い髪を乱しながら現れる。


 「そろそろ、“mal Ver.2”をお披露目しようじゃないか。客も中々入ってきた」

 「おぉ! そうであるな。我々の成果を同士達に見せようではないか」


 ウィリーとロザは鼻歌を歌いながら、階段を登って行った。



―――――――――――――――――――――



 皮が剥がれ、赤くランスのように伸びた鋭利な腕と、ペンチのように凸凹とした顎を晒したディテール。

 腕を壁に固定されたメイザースは、必死に糸を破こうとする。が、腕と壁が一体化してしまったように、ビクともしなかった。


 「無駄ですよ。壁ごと壊さない限り動けません」


 少女のものとは思えない、低く濁った声を出し、ディテールはゆっくりと歩み寄って行く。


 『どう、どうするんですか?!』

 『黙りなさい。結局、私の“糸”の方が格上……』


 冷汗を垂らしながら、メイザースは6本の“糸”を出現させ、全てを別方向から複雑なタイミングで襲わせる。

 動けないならば、攻撃される前に“支配”してしまえばいい。先程は“皮”のせいで上手くいかなかったが、今回は“生身”を晒している。そこに一本でも刺せれば勝負は着くのだ。

 

 ―――が


 ディテールは蜘蛛の腕に“糸”を巻き付けると、襲いくる糸を迎え撃つようにその腕を縦横無尽に振る。

 全ての糸を振り切ると、ディテールの腕に、効力を失ったメイザースの“糸”が幾本も付着していた。しかし、“支配”されている様子は全く無い。


 「どうやら、私の“糸”の方が強力みたいですね」


 彼女は笑うように左右の顎を打ち合わせる。


 『ど、どうして効かないんですか?!』

 『“糸”が刺さる前に、粘着させたってわけ……』


 メイザース自身初めての経験に、筋肉を強ばらせる。

 ―――動けない以上、“糸”で狙うのにも限界が―――

 そう思考を巡らせてたその一瞬、目の前にまで迫ったディテールの鋭い腕。そして、激しい痛みが左腕に突き刺さる。


 「がああああっっ!!」


 叫んだのはメイザースか、それともアニー自身なのか。右腕は糸に、左腕は蜘蛛の腕によって、壁に固定される。


 「綺麗な“カタチ”をしてますから、痛くはしたくないのですが……」

 「あ……ぐ!! ア゛ア゛!?ア゛ア゛ア゛ア゛ア―――やかましいわよ!」


 痛みに悶絶していたはずのメイザースが、急に後頭部を壁に打ち付け、落ち着きを取り戻す。

 メイザースは息を切らしながら、挑発のようにうっすらと笑みを浮かべた。


 「御自分に対しての扱いが酷いようですね」

 「こうでもしないと、“彼女(アニー)”の人格がもたないのよ」

 「なるほど……やはり身体ではなく“貴方自身”を倒す必要がありそうですね」


 ディテールは、メイザースの足元に落ちている“魔導書”に目を向ける。


 「こちらが本体でしょうか……?」


 ディテールが蜘蛛の腕を引き抜こうとした時、メイザースの指それぞれから、一本の“糸”が伸びていることに気づいた。

 ―――まずい! とすぐさま身を引こうとしたが、“糸”が襲ってくる気配は無い。どうやら、ずっと遠い何処かへ伸びているようだ。


 「なんの“糸”です?」


 ディテールが問いかけるも、メイザースはただ笑っていた。


―――――――――――――――――――――


 ロザとウィリーが部室へ戻ると、彼らと同じような見た目の輩が席に着き、今か今かと“お披露目”を待っていた。

 ウィリーは、“mal Ver.2”が隠されているベールの前に立つと咳払いをし、格式ぶった演説を始める。


 「えー、皆様、本日は御足労頂き誠に感謝する―――」


―――――――――――――――――――――


 「なんの“糸”です!」


 ディテールが先ほどより強く問いかけると、メイザースは笑うのをやめ、ようやく話し始めた。


 「最初は、貴方も“人形”にしようかと思ってた。でも辞めたわ。“蜘蛛”なんて汚い下等生物に興味なんてないの」


 その発言は、ディテールの感情を逆撫でする。


 「出来ないの間違いでしょう!」


 メイザースの腕を抉り落とすかのように、ディテールはゆっくりと腕を回す。

 メイザースは痛みを噛み殺し、額に脂汗を浮かべながらも、再び笑みを浮かべた。


―――――――――――――――――――――


 「今回の“mal Ver.2”が完成したのも、我々の友人、ハヤト氏のお陰であります。―――ほれ、ハヤト氏、前に出てくるのだ」  


 嫌がるハヤトの手を無理やり引っぱって皆の前に立たせると、ウィリーはバシバシと彼の肩を叩く。

 あまりにも長い前置きにお客達もイライラしてきたのか、遂に「早くしろぉ!」 という野次が上がった。


―――――――――――――――――――――


 「速く答えないと欠陥品になりますよ……何をする気ですか!?」

 「今に分かるわ。私“達”一番のお気に入りの“人形”よ」


 しぶとくも苦笑いをメイザースは浮かべる。

 

―――――――――――――――――――――


 「では、ご覧頂こう。我々の自信作、“自律式ロボット mal Ver.2”だ!!」


 ウィリーの合図で、ローブは切って降ろされた。

 客達がおおっ! と声を上げる。

 

 ―――が、そこにあるはずの“mal Ver.2”は無く、壁に大きな穴と、一枚の置き手紙あった。


 『少し借りてくわね♡ メイザース』


―――――――――――――――――――――


 「“mal” !!」


 メイザースが叫んだ瞬間、壁がぶち破られ、ディテールの顔面を殴りつける巨大な鋼鉄の拳。

 外骨格をきしませるような衝撃が、体内にまで響き、ディテールは後方へ吹き飛んだ。


 「なんとか……間に合ったようね……」


 部室から拝借した鋼鉄の兵隊“mal”は、メイザースの“糸”に繋がれ、まるで生きた格闘家のように拳を構える。

 そう、メイザースは最初に腕を固定された時点で、学園へと“糸”を伸ばしていたのだ。ロザとウィリーは困るだろうが、自分達のロボットが動くのだ不満は無いはずである。……問題は彼らがそれを見れない事だが。


 「なっ―――」


 間髪入れず、“mal”はディテールへ追撃する。

 どれだけ硬い外骨格を持っていようと、錨のように大きな拳の前では無意味だ。

 すかさず防御体勢を取るディテールの腹部に、“mal”は懇親のストレートをめり込ませる。

 軋むような鈍い音を立て、壁にめり込むディテールの身体。衝突した壁から灰色の煙が沸き立った。

 ダメ押すように、“mal”は煙中へ突っ込む。が、ディテールの姿は何処にも無く、床に、紫色の液体でつくられた水溜まりと、赤く鋭い物体―――ディテールの腕が残されていた。


 「……逃げたようね」  

 『お、追わないんですか?』


 いつの間にか意識を取り戻したアニーが脳内で問いかける。

 メイザースは安心半分、呆れ半分でため息をついた。


 「貴方、腕がどうなってるか分かってないの?」

 「あっ……」


 アニーが思い出したように呟く。再び彼女が叫び始める前にメイザースが自身の頭部を小突いた。


 「大丈夫よ。“糸”で止血はしたし、私の魔力で傷も塞がるわ」


 そう言ってメイザースは穴の空いた腕に顕現させた“糸”を巻き付ける。


 「でも……、そろそろ活動限界ね。後はそっちに譲るわ」


 そう言い残すと、メイザースはゆっくりと目を閉じ眠りにつく。それと同時に、開かれていた魔導書も閉じられた。

 目を開けたアニーは、落ちていた魔導書を拾い上げ、落ち着くように息を吐く。

 そして、自分がSM嬢のような際どい格好なのに気づき一人顔を赤らめ、残された“mal”をどうしようかと、頭を悩ませ始めた。

というわけで、メイザースVSディテールでした。本当はミヤビ&アーサーの方まで行きたかったのですが、文字数的にここで切ることになりました。


では、次回は水曜日です

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ