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ようこそ―――


 “グアリー教団本部”へ帰還する馬車の中。

 セナトは腑に落ちない表情で、窓から外を眺めていた。


 「よかったんですかい?」


 向かいに座る女神へ、視線を向けずに尋ねる。


 「何のことかしら?」


 グアリーが目を閉じたまま答えた。

 とぼけているのか、本当に分かっていないのか……、どちらとも取れる反応である。


 「俺が戦った“転生者”の事です。“ああ言う対処”は“教会”に睨まれるんでは?」

 「ああ、あれのことですか」 


 女神は澄ました顔をして、目線を窓に向ける。


 「問題ありませんよ。“アチラからコチラ”へ呼んだのではなく、“コチラからアチラ”へ飛ばしたのです。“転生者”の数が減って寧ろ喜ばしいことでしょうよ」

 「そういう問題なんすかね? “教会”の連中が来るのを恐れてまた俺を幽閉、なんてのは嫌っすよ? 」


 セナトは黄金の拳を打ち合わせる。


 「せっかく与えられた力です。もっと使いたくてウズウズしてるんっすから」

 「焦らずとも機会は幾らでもあります。……そのうち“教会”とも手合わせすることでしょう」

 「と、言いますと……何かしでかすおつもりで?」


 グアリーは女神という名に相応しくない程口のはしをあげる。その表情は醜悪の権化だ。


 「―――“神殺し”ですよ。未だ頂点でふんぞり返っている絶対神オーゼに再び反逆の狼煙を上げるのです」

 「“神殺し”でっか……。そんな事が可能で?」


 “絶対神オーゼ”。この世界で最も偉い存在と言っても過言ではない。そんな奴を殺せるのか? それ以前に“神”なんてものを殺せるのか?

 想像もできないスケールに、セナトは思考するのをやめた。考えるより、“神”(当人)に聞くのが一番だと思ったのだ。


 「もちろん可能です。神は基本的に不死身ですが、方法は主に二つあります。一つは信者を全員殺す。オーゼは世界中に信者を持っていますから、これは非現実的です。もう一つは……、“神の力”によって殺す事です。つまり、神は神によって殺せるのですよ」

 「なるほど……。ではあの従者に、あのまま首を絞められてもグアリー様は死ななかったと?」

 「ええ……。苦しくとも死ぬことはありません」


 グアリーは自身の首を撫でる。

 そこにはシャルロットにつけられた、色濃く手の形をしたアザが残されていた。


 「そのためにも、ウルカ・グアリーの転生は必須です。彼女が集める信仰が、私の力になりますからね」

 「楽しみにしておきますよ……。俺の力を存分に使える相手―――教会と戦えるのを」


 馬車内で練られる謀略。

 自分が頂点に着くことを夢見た、女神の高笑いが響いた。

  


―――――――――――――――――――――



 夜も更け、皆が寝静まった頃―――。

 ヴァルーチェ魔術学園にはもちろん人っ子一人おらず、水を打ったように静かであった。

 …………旧校舎から聞こえるイビキを除いて。

 旧校舎の2階、新聞部でイビキの主であるイロツキ ミヤビは椅子に座って寝ていた。本当に乙女かと問いたくなるほど大きなイビキである。

 そんな騒音に負けないほどやかましい音が部室に近づいてきていた。


 「ミヤビさん!」


 勢いよく扉を開けたのは人型魔導書であるビオラだ。

 ミヤビは扉の風圧と呼び声で目を覚ました。


 「なんだよぉー。せっかく夢の中でアルパカを絶滅から救ってたのに! 夜這いするなら、昼間とか私が起きてる時間にしてよ! ―――て、あれ? ヨツバっちは一緒じゃないの?」


 文句を言いながらメガネをかけたミヤビは、訪れたのがビオラ“だけ”であることに気づいた。


 「マスターが消されてしまったのです!」

 「…………は?」


 唐突に叫んだビオラに、ミヤビも首を傾げる事しか出来なかった。




 「なるほどね……。何の比喩でもなく本当に“消されちゃった”わけか」


 ビオラから事情を聞いたミヤビは顎に手を当てて唸った。

 椅子に座ったビオラは落ち着く為に、出されたコーヒーをチビチビと啜っている。


 「でも、聞いた感じ殺されたって訳ではなさそうかな」

 「だと良いのですが……」


 不安で潰れそうなビオラの為にもヨツバを見つけなければならない。

 ミヤビはそう思いながら目を閉じ、ヨツバの意識を探し始めた。

 彼の“気配”さえ見つければ、そこまで瞬間移動することが出来る。

 しかし―――


 「あれ? いないな」


 世界の片隅にまで意識を巡らせてみたが、ヨツバらしき人物は見つからなかった。


 「これは本当に死んだかもなぁ……」


 軽い冗談で言ってみたが、今のビオラにはかなり響いたらしく、ポツポツと涙をこぼし始めた。


 「あぁ! ごめんごめん。もっとちゃんと探してみるからさ!」


 ミヤビは慌ててフォローしながら思う。

 ―――死んでないとしても、“この世界”にはいない。―――となれば……。



―――――――――――――――――――――



 目が覚めると、硬い地面の上に寝ていた。

 何故ここにいるのか……。確か、ウルカを救けるために……。

 その時、朧気な思考に電流が走ったように、起き上がった。


 「そうだウルカだ!」


 ウルカを止めようとしたら、女神グアリーが指を鳴らしたのだ。そして気づいたらここに……。

 ……で、ここはどこだ?

 朱色の地面に点々とある“溶岩”がグツグツと煮えたぎり、空は真っ黒な色紙を貼り付けたかのように暗かった。

 こんな場所に心当たりがあるとすれば一つ―――“地獄”だ。

 となれば、俺は死んだのか?

 しかし俺は間違いなく“天国”に行ける人間だ。一日一善を目標にしている好青年だから!

  行った善行が描写されていないだけで、誰も見ていないところでは人に尽くしている聖人なのだ。

 では何故俺がこんな所に?

 ウンウン唸りながら頭を回す。―――近いづいてくる気配に気づきもしないで……。


 「―――見てみるのじゃミノリ。誰か居ると思えば知った顔ではないか」

 「そ、そうですねプロメ様……」


 ―――訂正。ここは“地獄”だ。

 人生において1番会いたくないやつ二人が目の前に現れた。

 目の前に立つ少女は、皮肉にも笑みを作って言い放つ。


 「ようこそ、“魔界”へ」       

と言うわけで間話的なお話でした。

ヨツバくん魔界に飛ばされてたんですね。

ヨツバを何処に飛ばすかはとても悩みました。

案としては、元いた世界に戻るというのもあり、こっちの方が盛り上がりそうだなとは思ったんですけど、内容が思いつかなかったんですね。

と言うわけで“魔界”ですよ。そこで再開した宿敵。

次回から7章後半です


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