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ガァァァァァァ?!?!


 決闘の幕引きと共に、宴会もちらほら人数が減っていき、「朝まで飲むんだ!」と豪語していたご主人方も奥さんに引っ張られていった。

 雨雲の切れ間から、細い月の見える夜。

 俺とレイビアは、ルーゼで降り立った丘を登っていた。手には、余り物の料理が詰められたバスケットを持っている。

 

 「ごめんね、手伝ってもらって」

 「あのままじゃ気が狂いそうだったからな……」

 

 俺とビオラは、レイビア家に泊めてもらうことになったのだが……、レイビア御夫妻が自慢の“娘達”のアルバムや思い出の品を延々見せてくるのだ。

 どうにか逃れる手を探していたところ、ちょうどレイビアが、バスケット両手に出ていくのを目撃したため、同行することにしたのだ。(ちなみにビオラは、御夫妻に捕まったままである)


 「それで、この料理はどこに運んでいるんだ?」

 「頂上にある小屋だよ。ほら、見えてきた 」


 レイビアが指差した先に、小さな小屋が建っている。

 木製で、降り続ける雨のせいか所々腐っているようだ。近づくにつれ不気味さは増していき、村の子供から“幽霊小屋”として扱われてそうな見た目である。

  レイビアは小屋に近づくと、臆することなく扉をノックする。…………しかし返事はない。

 

 「留守か?」

 「いや、多分また“ゲーム”してると思う。―――アシレイ様ー。開けますよー」

 

 “アシレイ”? たしかそれって―――

 レイビアが扉を開ける。中は薄暗いが、部屋の奧に“四角形の光”があり、その前に誰かが座っているようだ。

 しばらくその光景に違和感は無かった。が、その奧で光る“四角形”が“テレビ”である事に驚いた。

 

 「ん〜? 誰ェ? ゲーム中に訪ねてくるとはいい度胸だな」

 

 テレビの前に座る影がこちらを向く。

 後ろでまとめた青い髪。薄暗くとも本能的に理解出来る、その美貌。まさしく女神と言える容姿だが、眠そうな半眼の下にできた大きなクマが、顔のバランスを大きく崩している。

 

 「僕ですよ、レイビアです。余り物ですが、ご飯を持ってきました」

  「おお! レイビア?! 帰ってくるとは聞いていたが、今日だったか」


 少女はドタドタと近づいてくると、レイビアに飛びついた。

 

 「久しいではないか、レイビア。私の一番のお気に入りめ〜。どうだ学園生活は……、それより“レイくん”は扱えるようになったか? うむむ……、聞きたいことが山ほどあるな」

 「やめてくださいよー。くすぐったいじゃないですか」

 

 少女二人の軽いイチャコラを目のあたりにし、“そっち”系に目覚めそうになっていると、レイビアが恥ずかしそうに俺へ目を向ける。

 

 「こちらが“アシレイ様”。前も話したけど、僕達の神様ね」

 

 なかなか衝撃的なことを簡単に言ってくれるものだ……。

 

 

 

 ネウト族の神様、アシレイの部屋は“驚き”しかなかった。

 テレビに、冷蔵庫、更にはエアコンまで……、外観からは予想もできない、“元の世界”のような内装なのだ。

 

 「それで、こちらがヨツバくん。僕の友達だよ」

 

 部屋のハイテクぶりに唖然としてる中、話の矛先が俺に向いたようで、俺は軽く会釈をする。

 アシレイはバスケットの料理をガツガツ食べながら、俺に視線を向ける。

 

 「見た感じ……“転生者”か。どうじゃよ、この部屋は。驚いた?」

 「そりゃあもちろん……。これはまるで―――」

 「“異世界”、みたいか?」

 

 アシレイは分かっていたかのように答えると、口の端を上げた。

 

 「そりゃそうよ。“異世界の部屋”を参考……、丸パクリしたからの。電子レンジもあるし、お湯の出るシャワーもある。使わんが洗濯機もあるぞ」

 

 丸パクリと簡単に言うが、そんな簡単にできることではないはずだ。ロザやウィリーも旧型のテレビを二、三個持っていたが、どれも使い物にならない“置物”だった。しかし、この部屋のものは薄型で、しかも稼働している。冷蔵庫に至ってはボーッと鳴き声をあげている。

 

  「でもどうなってるんだ? そもそも電気が通ってないだろ」

 「一応、私神様じゃからな。電気くらい異世界から取り寄せること位容易いもんよ」

 

 言われてみればそうだ……。副校長程度が俺を召喚できるのだから、本物の神様なら電気くらい造作もないことことに思える。

 

 「……ところでヨツバとやら、お前“コレ”の心得はあるか?」

 

 アシレイがリモコンで、テレビの電源をつける。激しい効果音と共に、ゲームのタイトル画面が表示された。“元の世界”で一昔前に流行った格闘ゲームである。

 

 「そうだな……。友達の家で多少なら……」

 

 とは言ったものの、実際にプレイしたことは無く、人がやっているのを羨望の眼差しで見ていただけだ。こうしていれば代わってもらえるかと思っていたが、そうなることは無かった……。

 アシレイは俺の返事を聞くと、嬉しそうにコントローラーを手渡してきた。

 

 「村の者にやらせてみたが、如何せん皆慣れないようでな、まともな相手がおらんのだ」

 

 久しぶりに触るゲーム機に、そんなつもりは無かったが心が踊った。やはり電子機器に囲まれていた育った現代っ子だ。

 

 「接待などはいらん。好きにかかってくるがよい」

 

 

 

 まさかこの世界でゲームをすることになるとは思いもしなかった。

 テレビの前に胡座をかく、俺と神様。

 アシレイの実力は思っていたより大したこと無く、俺と五分五分と言ったところだ。そのせいもあってか、互いに熱中してしまった。最初は興味津々に俺たちの対戦を眺めていたレイビアとも、いつしかウトウトし始め、今ではソファの上で猫のように眠っている。

 

 「どうじゃ、学園生活は楽しいか?」

 

 対戦中、アシレイが唐突に聞いてきた。

 

 「まあ、楽しいんじゃないか? 副校長に転生させられて、成り行きで入学したからな」

 

 俺はゲームに夢中で、適当に返事をする。


 「副校長? あぁ……、“人間”に転生させられたのか、どうりで誰の“加護”も受けてないわけじゃ」

 「なんだよ、人間“が”転生させるのはそんなに珍しいのか?」

 

 

 「珍しいというか……。人間の転生は、“教会”が禁じとるからな。神でさえ縛られとるのじゃ、それを人間がやったとなれば…………、タダじゃすまんだろうな」


 お、いい事を聞いた。今度これをネタに揺すってやろう。

 

 「まあ、その時はお前も同罪になるんだがな」

 「同罪って……。俺呼ばれただけだぜ?」

 「そんなもの、“教会(あちら)”からしたら些細な問題じゃよ。邪魔だから消す。それだけじゃな」

 

 脳裏で、ミノリとプロメが消された瞬間が蘇る。あの時の怒りがふつふつと再び沸いてきた。

 

 「なら禁じてるのに何故、神様達は人間を転生させるんだよ」

 

 コントローラーを握る手に力が入る。

 

 「神様ってのはな、“寂しがり屋”なんじゃよ。誰かに信仰されてないと、信じてくれる者がいないと消えてしまう儚い存在じゃ……。 “転生者”はそんな寂しい気持ちを紛らわし、存在を確立する柱みたいなもんじゃよ。少なくとも“転生者(そいつら)”は自分の存在を信じてくれる。そうすれば神である自分は生きていける……」

 

 アシレイはコマンドを入力しながら淡々と語る。

 

 「ま、私にはそんなもの必要ないがの……。この村の者にさえ信仰されてれば十分じゃよ」

 「じゃあなんで“教会”は禁じる? 転生させる目的がそれなら、禁じる必要なんてないだろ」

 

 俺は八つ当たりのように問を投げかける。

 

 「そんなもの単純じゃよ。オーゼが怖がっとるからじゃ」

 

 ―――オーゼ? たしか、“教会”の連中が信仰してる神様のことだったはずだ。

 

 「“こちらの世界と、異世界の境界線を守るため……”“こちらの世界で転生者がのさばるのを防ぐ……”。表向きにはそんな事を並べとるが、本来の目的はそうでない。―――さっき言い忘れたが、“転生者”への信仰は、その神に直結しとる。つまり、“転生者”が英雄にでもなり、人々から信仰される存在になれば、そいつを召喚した神自身も信仰されることになる。そして、神は信仰されるほど力を増していく」

 

 アシレイの語る言葉に力がこもり始めた。

 

 「現在、最も信仰され、圧倒的力を持つ神―――オーゼ。奴は自分の地位を守りたいんじゃよ。もし、信仰される“転生者”が増えてみろ、そいつの神が力をつけることになる。すると、その神が謀反を企ててもおかしくない。そうならぬよう、“教会”に“転生者”を見張らせておるのだ。目立った行動をしないようにな!」

 

 『 KO!!』

 

 アシレイが言い終わると同時、テレビからそんな音が響く。アシレイの話を聞くのに夢中になり、ゲームの操作をすっかり忘れていたようだ。

 息継ぎなしで話しきった為、アシレイは軽く深呼吸をして息を整える。

 

 「どうじゃ、聞きたいことはそれだけか? いい機会だし何でも答えたるぞ」

 

 アシレイはコントローラーを床に置き、腕を組んで俺を見る。

 

 「ほれ、聞きたいことくらいあるじゃろ。一応神様じゃからな。大抵の事は把握しとるわ」

 「そんな急に言われたって……。“転生者”については大抵分かったしな……」

 「別に何でもよいぞ。レイビアのスリーサイズ、将来の事、それか―――その背中の“蛇”の事とかの……」

 

 悪寒が背筋を走った。右腕と背中が呼応するように疼く。

 

 「分かるのか? この“蛇”について」

 

 ハロルド、それにウルカと言い、背中に刻まれた“蛇”に好印象を持たれていない。誰と契約した、どんな魔術なのかも把握出来ていないのだ。

 

 「ま、身体に良いものではない、これだけは言えるの」

 「そんな事は察しがついてるんだよ! 俺は誰と契約したんだよ。この魔術はどう使うべきなんだよ!」

 

 アシレイの肩に掴みかかる。華奢で柔らかい肌が手に触れる。

 興奮のせいか、声がいつもより高くなった。

 答えを得るため、真剣な眼差しでアシレイを見ているつもりでも、彼女はきょとんと顔で見つめ返している。

 そのうち、彼女の顔に焦りが見え始めた。

 

 「…………お前、“この部屋”に入って何時間になる?」

 「はぁ?」


 急に何だ。露骨に話を逸らしてくるではないか。

 

 「多分、3時間くらいじゃないか?」

 

 その瞬間、驚きのあまり辺りを確認してしまった。

 いきなり聞こえた少女の声。

 アシレイのものでも、レイビアのものでもない。

 しかも、俺の言おうとしたことを、俺と全く同じタイミングで言ったのだ……。

 

 「どうやら気づいたしまったか……?」

 

 アシレイから手を離し、自分の身体を見下ろす。

 掴んだら折れてしまいそうな、華奢な四肢。ゴツゴツとしていた手の平は柔らかく、指は細くて、肌は色白い。

 俺はすぐさま立ち上がり、洗面所へと駆けていく。

 

 「ガァァァァァァ?!?!」

 

 乙女の声で、獣のような叫び声を上げ、俺は絶句した。

 鏡の中にいたのは、可憐な少女。

 腰まである長い黒髪に、紅い瞳。肩幅は狭いが、ブカブカな男用の衣服を纏っているせいか、少しはみ出ている。

 少なくとも、俺なら一目で恋に落ちるような容姿。

 そしてその表情は、今の“俺”と全く同じで、驚愕に染まっていた。

 

 「長時間近くにいたのと、私に接触した影響じゃの……」

 

 背後に現れたアシレイが頬を掻きながら呟く。

 

 「おっ、おっ……」

 

 オットセイのモノマネではない。

 

 「女になっとるやんけぇぇぇぇ?!!」

 

 その叫びは悲しみ故にか、それとも歓喜のものか……。

というわけで、ヨツバは女の子です。これからは百合小説になるんでね、よろしくお願いしますね。そんなことしたら間違いなく2話くらいで私が飽きますね。


なんやかんや教会とか転生者の説明やらした話でしたが、ここからしばらくは乙女ヨツバの話です。これからどうならんでしょうね……。


次回は日曜、と言いたいんですが、今週は時間もとれそうにないので、来週の水曜にします。日曜日はお休みです。

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