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さあ、お前の神を云え


 「やった、やった……。ついに辿り着けた」

 

 数年間の漂流生活から帰還し、久しぶりに大地に触れるように学園の地面を撫で回す。

 

 「授業は全部終わってるけどな……」

 「お前の気力が消失してたせいで、こうなったんだろうが!」


 授業に出てないという絶望から完全に意気消沈したハヤトを担ぎ、ブリールと共に方向音痴二人で学園を目指していったわけだが、到着までに約一時間ほどかかってしまった。

 三人寄れば文殊の知恵というが、方向音痴が二人集まっても、さらに迷うだけである。

  

 「ありがとうございましたヨツバさん。私一人では辿り着けなかったかと思います」

 「こちらこそ、俺とビオラだけじゃ都市内で遭難するところだった」

 

 俺とブリールは握手をする。

 学園までの道のりで苦労を共にし、出会って一日も経っていないというのに、俺達の間には厚い友情が芽生えていたのだ。

 

 「では私、そろそろ行きます。ストレンジ副校長に用事があるのです」

 

 ストレンジ副校長? ああ、俺を転生させて学園の治安を守れだの無理難題をほざいた人ね。最近出番がないから消滅したものかと……。

 副校長室とは逆方向にブリールは進んでいるような気もするが……。まあ、流石に辿り着けるだろう。

 

 「ほら、行くぞハヤト。レイビアにノートでも見してもらえばいいだろ?」

 「そういう問題じゃないんだよ……。出席することに意義があるんだよ」

 

 文句を吐き続けるハヤトに苛立ちを感じながら無理やり引っ張って階段を登らせる。

 

 「ブリールさん、副校長先生に何の用事なのでしょう」

 

 俺の手助けの為に、ハヤトの足を担ぎながらビオラが担ぐ。

 

 「さぁ? ……でも職業聞いたら、『“教会”で“我々”の世界に貢献してる』とか言ってたし、布教活動とかじゃないのか?」

 

 

 ――――――――――――――――――

 

 

 「よう勝ったなミノリ。これでワシらの知名度も跳ね上がったぞ」

 「どど、どうも……、ありがとうございます……」

 「ハッハッハ、そう固くなるでない。これでワシらの知名度は上がるはずじゃ。信者の数が跳ね上がるじゃろうな」

 

 旧校舎、二階の一室。

 他の部屋同様ガラクタの散乱した部屋で、プロメは積み上げられた本の上に腰を下ろしていた。

 手には小さな手帳を持っており、鼻歌交じりに今後の予定を書き込んでいる。

 

 「ふむふむ、もうすぐ長期休みに入るの、信者を増やす絶好の機会じゃ。手始めに100人を目標にするかの」

 「そん、そんなにですか?!」

 

 木箱に座るミノリが驚愕の声を上げた。

 

 「そんなに難しい事ではない。ワシら“神様”は信仰が厚い程力が増す。つまりは信者が増えるほど出来ることも増えるし、人を集めるのも楽になっていくわけじゃ」

 「……そうですか」

 

 何か言いたげに俯くミノリ。

 それを見兼ねてか、プロメは腰を上げると、からかうようにミノリの膝にちょこんと座る。

 

 「安心せい。どれだけ信者が増えようと、一番はミノリじゃ。これだけは絶対に揺るがん」

 

 ミノリの頬に手を這わせ、プロメ艶かしい瞳で彼を見つめる。

 

 「……いえ、そそ、そういうことではない、いんです」

 「なんじゃお主、勘違いさせおって……」

 「……“愚弄者の侮慢”スレイブアドバンテージについてきき、聞きたいんです」

 

 そう言った瞬間、プロメの目が細くなった。

 

 「プロメ様のしん、信者は僕しかい、いません。“侮慢”(アレ)をどうやって手に入れたのですか? 」

 

 ミノリ自身、“愚弄者の侮慢”がどれ程強力なモノか理解していた。しかし、それ程のモノを信者が一人しかいない、ほぼ人間のプロメが所持していたことに疑問を持ったのだ。

 

 「ミノリ、その話は聞くなと言ったはず―――」

 

 「―――盗んだんだよ」

 

 廊下から放たれた声。

 プロメ即座にドアの方を見た。

 そこにいたのは、白いローブの女。

 フードから除く右目。そこに刻まれた、三日月の紋章を見た瞬間、プロメは彼女の正体を理解した。

 

 「元々、“愚弄者の侮慢”は最高神――オーゼの聖遺物だ。それをそのコソドロが宝物庫から盗んだんだよ」

 「―――“教会”か……」

 

 プロメは、三日月の刻まれた瞳を睨む。

 唯一、状況が掴めていないミノリは、女とプロメを交互に見回している。

 

 「―――“教会”、お主のような“転生者”を取り締まる機関のことじゃ……。最高神オーゼに仕えとる……」

 「ついでにテメェみたいなコソドロも管轄内だ。要件は分かってるだろ? お前が盗んだ“愚弄者の侮慢”を返してもらいに来たぜ」

 

 突如として豹変した場の空気を、ミノリはやっと理解し始めていた。女から発せられる肌で感じる程の威圧と殺意、ミノリは生まれて初めて、恐怖から発汗した。

 

 「……つまりは敵、ということですか?」

 「そういう事じゃな……。此奴に捕まったら……」

 「ど、どうなるんです?」

 「少なくとも今の様には過ごせんの……」

 

 プロメが言い終わるが速いか、ミノリは女に向け、“溶岩魔術”を放つ。

 完全に隙を着いた奇襲、ミノリはそう思った……。

 しかし―――

 

 「―――やっぱそう来なくっちゃ詰まんねえよな」

 

 ローブから覗く右腕で岩石を掴む女。

 フードの中で笑う、女の顔が覗き見える。

 受け止めた岩石を床に叩きつけ、女は右腕を水平に振った。

 振り抜いた女の右腕の先―――、いや、女の右腕そのものが一本の剣と化していたのだ。

 腕三分程から生えた刀身は白い輝きを空間に響かせ、彼女に一層の畏怖を与える。

 

 「…………気を張れミノリ。此奴、オオバより段違いに強いぞ……?」

 「承知していますよ……。でも、倒さないとダメなんですよね」

 

 ミノリが臨戦態勢を取る中、女は自身のローブを剥ぎ取った。

 顕になったのは、女性のものとは思えない、傷だらけの身体。

 女は高らかに言い放つ。

 

 「我が名は、熾従者セラフの一人イール。―――さあ、お前の神を云え」

 

 剣と化した右腕をイールが振った瞬間、旧校舎は揺れた。

 

はい、今回は短目です。書く時間が取れなかったので、最低限進めたいところで止めました。


今回は教会云々の設定が出てきて、ミノリとイールが戦闘を始めるところで終わりました。

ここからは、複数のキャラを使って物語を進めていく予定です。

次回は水曜ですね

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