秘密結社“暗色の技師団”なのだよ!
旧校舎の散らかった廊下を走り抜け、なんとか3階まで辿り着いた。
一室から煙が上がっている。その前にミヤビが立っていた。
「また、アイツらか?」
ハヤトがミヤビに聞く。
「みたいだね……。機体の接続でミスしたんでしょ」
「接続ってなんだよ……」
荒くなった息を整えていると、部屋から2つの人影が飛び出してきた。
「何をしているのだロザ氏! 腕パーツにあれだけの詠唱文が刻めるはずなかろう!」
「何を言うかウィリー氏! 元を辿ればお前が腕パーツの設計をミスしたのが問題だろ」
言い合いを始めた二人の男子生徒。
その片方は、ハヤトの同居人ロザである。
もう一人のウィリーと呼ばれる生徒は見たことがなかった。少々脂ギッシュである。
「ちょっとちょっと落ち着きなよ」
口論になった二人をミヤビが制する。
「“アニっち”はどうしたの? もしかしてまだ中にいるの? 煙あがってるけど……」
二人は顔を見合わせる。
一瞬後に叫び声をあげながら部屋へと突入する。
「あああああっ!! コレクションが燃えるぅぅ」
「馬鹿者! それより機体だ。闘技会は今週なのだぞ?! 速く外に避難させろ!」
「違う違う……。アニっちだって……」
男二人が慌てる中、ミヤビが“移動魔術”で一人の少女を抱えて出てきた。
前髪で表情が隠れている。
どうやら気絶しているようだ。
俺は二人が運び出したコレクションを手に取る。
驚くことに、俺が元いた世界で出版されている雑誌である。
「ミヤビ氏ー。手伝ってくれー! 機体がデカすぎて出せんのだー」
ウィリーとロザが“でっかい何か”を廊下に出そうとしている。
「しょうがないなぁ」
ミヤビは“でっかい何か”に触れると俺の真“上”に2人ごとテレポートさせた。
「なんで俺の―――」
言い終わる前に直撃する。
なぜ俺の上にテレポートさせるのだ……。
起き上がろうにも、ロザとウィリー、そして巨大な物体のせいで起き上がれない。
目を開けると、鋼色の巨大な顔があった。
「ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛?!!」
目の前に巨大な顔があったら誰だってパニクるだろう。
奇声をあげながら二人を蹴りあげ、なんとか脱出する。
「なっ、なっなんだこいつら?! 宇宙人か?!」
乙女のように怯える俺。
ウィリーとロザが這い上がってくる。
「宇宙人とは失礼だが、よくぞ聞いてくれた……」
「我々は秘密結社“暗色の技師団”だ……」
二人は立ち上がって埃を払った後、ウィリーが再度ポーズを決める。
片足をあげて腕を組んでいるが、捌いたばかりのお刺身並にプリプリしている。
「そして私が“暗色の技師団”隊長のウィリー ウェスコット。ハード担当の身長 170センチ 体重72キロだ」
見てるこっちが恥ずかしくなってくる自己紹介である。
アイドルの真似をした俺の自己紹介位痛い。
「ほら、ロザ氏もポーズをキメて自己紹介するのだ!」
「いや……、俺は昨日会ってるから……」
「ヌウゥっ! ロザ氏貴様裏切りおったな!」
二人の間にすら温度が出来てなすけど大丈夫ですかね。
「そして、そこで気絶してる乙女。彼女が“暗色の技師団”の紅一点、装飾、戦闘担当アニーホニース氏だ」
ウィリーは少女を指す。
未だ気を失っているようで返事はない。
「それよりウィリー氏。“mal”を起き上がらせよう。このままの体制は破損の原因になる」
「おお、そうであったそうであった。すまんな“mal”」
そう言って二人は、先ほど俺にのしかかった巨大物質を起き上がらせた。
鋼色の凶暴な顔。太ましい四肢に、丸い胴体。人間の形をしているが、全長2メートルはありそうだ。
「おい、ハヤト……。こいつら何もんなんだよ。本当に秘密結社なのか」
「そんな訳ないだろ……。こいつらは“異世界文化研究会”の連中だ」
「余計わかんねえよ!」
ウィリーが不気味に笑う。
「フフフッ……。異世界のモノを集め、研究する。それが“異世界文化研究会”。しかしそれは部室を借りる為の建前……。その正体は裏でロボットを作る秘密結社“暗色の技師団”なのだよ! そしてそのロボットがこの“mal”なのだ!」
ウィリーがロボットの胴体部分を叩く。
「そして今週末、隣町で行われる“次元フェス”での闘技会! そこで我々は、この“mal”を使って優勝しようと企んでおるのだ」
「……どうせ“魔女”に負けるよ」
ミヤビが鼻で笑う。
「ばっ、馬鹿者! ……ここでその名は禁句だぞ」
ロザとウィリーが慎重に見回した。まるで何かに怯えているようだ。
「“次元フェス”って?」
「別次元、まあ異世界だな。そこから来た物体だったり、生物を売り買いするお祭りだよ」
「最近、転生者が増えたせいで次元の境があやふやになってるらしくてさ、年々売られる物も増えてるらしいんだよ」
ハヤトの説明にミヤビが補足する。
どうりで元の世界の雑誌がある訳だ。
「本来ならば60メートル程の全長で全員が乗り込みたかったのだが……。これが今の限界なのだ」
「戦隊モノみたいにか?」
「その通りだ!流石転生者。分かっておるな。 俺が赤で、ロザ氏が青。今なら黄にしてやるぞ」
ウィリーに握手を求められ、流れで応じてしまう。
黄色か……。全身タイツを着るのは癪だが、悪くは無いかもしれない。カレー好きだし。
「でもこれ動くのか? ロボットってプログラムとか色々いるんじゃないか?」
詳しくはないがパソコン位は必要なイメージがある。
この世界も色々と発達しているが流石にパソコンはないだろう。
「たしかに“mal”は異世界のロボットに憧れて造った。しかし、設計図もないし、その“ぷろぐらむ”というのも分からん。だから“魔術”で動かすことにしたのだ」
魔術……?
髪の埃を払い終えたロザが口を開く。
「“バスティの操作魔術”というものがあってな。本来は他人の体を動かす魔術だが、それを“mal”に応用しているのだ」
「しかし、“バスティの操作魔術”は複雑な操作はできん。だから腕や足などの小範囲で行使しているのだが……、その過程でロザ氏がミスしたのだ」
「だ、か、ら根本的に腕の設計がおかしいと言ってるだろうが!」
「おかしくなどない! ロザ氏の詠唱文の施し方が悪いのだ」
二人はまた口論を始めてしまった。
しかし、“バスティの操作魔術”か……。なかなか面白い魔術もあるものだ。
「ビオラ、“バスティの操作魔術”は登録されてるのか?」
「検索します…………。該当する魔術は登録されていません。どうやら契約魔術のようです」
契約魔術か……。
「おや、ヨツバっち。そろそろ契約魔術が欲しくなってきた?」
ミヤビがいやらしく笑って、俺の肩に触れた。
「そりゃあ欲しくなるだろ。大体の奴はみんな持ってるんだろ? 転生者の俺が持ってないのはおかしくないか?」
「うーん、分かるよその気持ち。誰だって自分専用の魔術とかは欲しくなるもんだよ。憧れるもんだよ。ましてや、転生者なのに特別な能力がないのは虚しいよね〜。…………まあ、私は初期状態から持ってたんだけどさ」
励まされてるのか、自慢されてるのか。
どれもこれも元を辿れば副校長のせいである。アイツに召喚されたが為に、本来なら貰えるはずの“チート能力”が貰えなかったのだ。
「じゃあさ、今から契約しに行こうよ」
「は?」
次の瞬間、景色は一変した。
投稿ペースはまだ決めてません。
週に2回くらい何曜日かはまだ分かりませんね、そのうち自ずと決まってくると思います。




