22 カフェへ
王都で最近話題に上がっているカフェというだけあって、店内はかなりの人で賑わっていた。
年頃の若いカップル、リディアたちと同じ制服を着る学生、ご年配の夫婦まで。
店内に入ったリディアとエリオットたちを、若い女性店員が出迎えた。
「いらっしゃいませ、お席までご案内致します」
「ありがとうございます」
リディアたち一行は店員のあとをついて、一番奥にある大きなテーブルの席に通された。
ソファ側の席にはエミリーとエリオットを中心にマイラとアデルが二人を囲むようにして座った。
そして向かい側には、ヘンリーを間に挟んでリディアとヴァイオレットが座る。
「……何故俺が真ん中なんだ」
「何か真ん中は気が引けちゃうのよね」
「そうそう、この中で一番真ん中に相応しいのは紛れもなくアンタよ」
ヘンリーは気が乗らないようだったが、彼が真ん中を受け入れてくれたおかげでエリオットとエミリーの正面になるのを避けることができた。
エミリーがテーブルの端に置かれていたメニュー表を手に取りながら、口を開いた。
「よかったですね、席が空いていて」
「ええ、おかげですぐに入れました」
とはいっても、観劇まではまだ一時間はある。時間には十分な余裕があった。
エミリーはメニュー表を開き、エリオットたちと共に眺めた。正面に座る四人、やたらと距離が近いような気がするが気のせいだろうか。
リディアたちももう一つあったメニュー表を取り、三人でページを開いた。
その中でもリディアとヴァイオレットが目を引かれたのは、一番人気商品であるイチゴのパフェだった。
デザートのページを丸々一ページ使っており、底に入っているものなどの詳細が記載されている。
「わぁ、このパフェなんてとっても美味しそう……!」
「本当ね、人気メニューみたいだし……食べてみる?」
ヴァイオレットが声を上げ、リディアもそれに同意した。
しかし、マイラとアデルはそんな二人の様子を見て小馬鹿にしたような笑みを浮かべた。
「やだ、こんなの食べたら太っちゃうわ」
「そうね、デブにだけはなりたくないもの」
”デブ”というその一言に、ヴァイオレットがピクッと眉を動かした。エミリーに限らず、彼女たちはどれだけヴァイオレットを馬鹿にすれば気が済むのだろうか。
リディアとヴァイオレットを嘲笑うように、マイラとアデルは言葉を続けた。
「夕食前にこんなものを食べようとするだなんて……意識が低すぎますわ」
「ヴァイオレット様もリディア様も、貴族令嬢としての自覚が足りないのではなくて?」
「……」
貴族令嬢としての自覚が足りないのはリディアたちではなく、そちらの方だ。いつも人目も憚らずにリディアの婚約者であるエリオットと堂々とイチャついているくせに。
と言いたくなったものの、エリオット本人がここにいる今は我慢だ。
マイラはすぐ隣にいたエリオットの腕に手を触れ、同意を求めた。
「ねぇ、エリオット様もそう思いますよね?醜く太っている婚約者なんて嫌ですよね?」
「……」
突然話を振られたエリオットは、じっとマイラを見つめた。
どうせ同調して私たちを馬鹿にするんだろうなと思っていたのも束の間、彼は信じられないことを口にした。
「――別に、食べたいものを食べればいいだろう。俺たちがいちいち口を出すようなことじゃない」
「…………………え?」
そのようなことを言われるとは思わなかったのか、マイラは目を見開いて固まった。
彼のその発言には、リディアも驚いた。
(てっきりエリオットなら同意するかと思ったのに……)
いつものように情けないと言われるのも覚悟していたリディアは、呆気に取られた。
二人に否定的なことを言ったのは、エリオットだけではなかった。
「……そうよ、マイラ、アデル。リディア様やヴァイオレット様が太ろうが私たちには関係ないじゃない。それなのにどうしてそんなことを言うの?」
「エ、エミリー……!アンタ……!」
いつものエミリーからは想像もつかないほどの、まともな発言だった。
マイラとアデルは悔しそうに唇を噛んだ。
「……パフェ、頼みましょうか。ヴァイオレット」
「そうね、リディア」
リディアとヴァイオレットは二人で一つ、パフェを頼んだ。
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