6章【月光の舞姫と揺り籠の歌姫 ~動き出す運命~】
ディアは無意識に首元の魔石を指先でなぞる。
指先に触れたそれは、石とは思えないほどに――熱を持っていた。
「……ヴァル」
向かいで、興味なさそうに外を眺めていたヴァルが、視線だけをこちらに向けた。
「なんだ」
「……これ、ヴァルが獲ってきてくれたんだよね?
私が、ここで死なないようにするために」
ディアは自身の魔石に手を当てて、ヴァルを真っ直ぐに見る。
「私がここに居られるようにするために、魔獣を殺したの?」
何故、自分はただの人間なのに、これほど深い瘴気に耐えられるのか。
気にならなかった訳ではない。
森のものを食べ、森の水を飲み、ここで暮らすうちに身体が適応したのだと……そう思い込もうとしていただけだった。
「魔獣と話せるのも……これがあるから?
この子が、言葉を教えてくれてるの?」
その問いに、ヴァルは答えなかった。
ただ、燃えるような赤い瞳を細め、ディアの指先の下に隠れた“魔石”を静かに見つめる。
「……死んだ奴の力をどう使おうと、生きてるお前の勝手だ」
ヴァルは吐き捨てると、椅子を引いて立ち上がった。
「そんなに気になるなら外して捨てろ
……三秒も持たずに、お前の身体は内側から腐り落ちるがな」
残酷な言葉。
けれど、その声はどこか、ディアにその石を「離させたくない」と願っているようにも聞こえた。
「捨てないよ……
……捨てられるわけ、ないじゃない」
ディアは、首元の石を包み込むように強く握りしめた。
私と、ヴァルと、同じ瞳の色の魔石。
捨てられるはずない。
それに、これはヴァルが初めてくれたものだから。
「……ディア」
名前を呼ばれ顔をあげると、視界がふわりと反転した。
「わっ……」
大きな、熱い腕がディアの細い肩を引き寄せ、力強く抱きしめる。
ヴァルの胸に顔が埋まり、どどこか懐かしい香りが鼻をくすぐった。
「ヴァル……?」
「余計なことを考えるな」
低く押し殺した声は、どこか焦りを含んでいた。
抱きしめる腕の力は、ディアが壊れてしまうのを恐れるように優しかった。
「お前は、ただそこで笑っていろ
……死に損ないの石だろうが、化け物の心臓だろうが、お前を生かしているのは俺だ」
ヴァルの大きな手が、ディアの後頭部を優しく、乱暴に撫でる。
その手は、嘘みたいに優しかった。
「……うん」
ディアはヴァルの胸に顔を預け、そっと目を閉じた。
ヴァルの腕の中は、安心する。
たとえ、この石の正体が何であったとしても。
ヴァルと一緒にいられるなら、それでいい。
……そう、願った直後だった。
パキパキ、と。
窓の外で、草木が悲鳴を上げるような、硬い音が響いた。
「……ッ」
ヴァルの腕に、一瞬で力がこもる。
ディアを背後に隠すようにして、ヴァルはゆっくりと身体を離した。
その瞳は、すでに扉の向こう――森の入り口から溢れ出してきた、異常なほど冷たい霧を射抜いている。
「胸糞悪いな」
「ヴァル…… 誰か、来てるの?」
ディアが不安げにヴァルの服の裾を掴む。
扉の隙間から、白く、殺意を孕んだ霧が這うように入り込んでくる。その霧に触れた床が、悲鳴を上げるように白く凍りついた。
「ディア、家の中にいろ」
ヴァルがディアの手を静かに、けれど拒絶を許さない力で振り払う。
「ッ嫌!!」
ディアの叫びと同時に、――バリィィィン!!
轟音とともに扉が内側へ向かって爆発した。
砕け散った木片が、氷の礫となって部屋中に降り注ぐ。
渦巻く白霧の向こうから、一人の影が、ゆっくりと姿を現した。
ボロボロの外套を纏い、指先からは制御を失った氷の魔力が、鮮血とともに滴り落ちている。
風に煽られ、外套が揺れる。
その奥で、視線だけが真っ直ぐに前を射抜いていた。
その瞳――片側だけが鮮やかな蒼を宿したその少女は、霧の晴れ間に立つディアの白い髪と、赤い瞳を捉えた瞬間。
その口元が、歪に、歓喜に震えた。
「…………見つけた」
ひび割れたような声が、部屋の温度を一気に数度下げた。
「終焉の白……ッ!! お前がッ!!」
裂けるような叫び。
次の瞬間、シーナの背後に展開された無数の氷の矢が、ディアをめがけて一斉に放たれた。
それは「攻撃」ではない。彼女のすべてを賭した、純粋な「殺意」の塊だった。
――だが。
その殺意が、ディアに届くことはない。
ヴァルがディアの前に一歩踏み出し、その手を無造作に振り下ろした。
それだけで、大気を切り裂いて迫った氷の矢は弾かれ、粉々に砕け散って霧散した。
「……消えろ、小娘」
ヴァルの低い、地響きのような声。
空気がねじれるほどの圧倒的な威圧感が部屋を満たす。
「寝ぼけているなら、その薄汚いツラごと永遠に眠らせてやる」
燃えるような赤い瞳が、目の前の少女を“獲物”として冷徹に捕える。
だが、少女は怯むどころか、さらに自らの命を削るように、指先に青白い魔力を集め始めた。
「うるさい……! フィオナを返して……! あの子は、私が守るんだ……っ」
肩を上下させ、荒い呼吸を繰り返す。
その姿は、あまりにもボロボロだった。
服は裂け、露出した肌には魔獣との戦いでついた傷がいくつも刻まれている。
「……フィオナ?
蒼い瞳の、あの女の子のこと……?」
ディアがヴァルの背中越しに問いかける。
その名を聞いた瞬間、少女の瞳に絶望と怒りが混ざり合った。
「やっぱり……あんたたちが、連れ去ったのね……!」
「違っ」
「黙って!!」
少女の叫びが、ディアの言葉を遮る。
「あの子を返せ……! フィオナは、お前らの道具になんてさせない!!!」
さらに魔力を練り上げようと、震える指先をディアへと向けた。
だが、その指先から放たれるはずの光は、ふっと糸が切れたように霧散した。
「……ぁ、……っ」
瞳の焦点が、急速に失われていく。
極限まで魔力を酷使し、魔の森の瘴気にさらされ続けた肉体は、限界を越えていたのだ。
膝から崩れ落ち、小さな体が、氷の礫が散らばる床へと力なく倒れ伏した。
「壊れたな」
ヴァルが冷たく吐き捨て、倒れた少女を始末しようと一歩踏み出した、その時。
「――そこまでにしておいていただけますか?
彼女は、これでも我が国の貴重な“材料”ですので」
静かな、けれど通る声。
壊れた扉の向こう、白霧の深淵から、ゆっくりともう一人の男が姿を現した。
ボロボロの外套を纏いながらも、その佇まいはどこか超然としている。
男は、眼鏡の奥の鋭い視線を真っ直ぐにディアへと向けた。
そして、初対面の相手に対する完璧な角度で、深く、優雅に頭を下げてみせる。
――その所作だけが、この場にあまりにも似つかわしくなかった。
「うちの姫が、多大なるご迷惑をおかけして申し訳ありません」
「……だれ?」
ディアがヴァルの背中から問いかける。
男はゆっくりと顔を上げ、それでも微笑みを崩さなかった。
「初めまして、“終焉の白”様
私はテオ・アルケミストと申します」
その名が口にされた瞬間、部屋の空気が、先ほどの氷の矢とは別の意味で凍りついた。
テオの視線はディアの白い髪をなぞり、赤い瞳をじっと見つめている。
「帝国が何を考えているかなんて、私にはどうでもいいことです
彼らが欲しがっているのは、ただの便利な“兵器”ですから」
テオは淡々と告げ、眼鏡を指先で押し上げる。
ヴァルの殺気すら受け流すようにディアへと歩み寄る。
「フィオナがここで殺されたと偽り、シーナの憎悪を煽り――貴女を排除させる
……実につまらない、反吐が出るような低俗な計略だ」
テオの言葉に、ディアは息を呑んだ。
「……待って、フィオナなら、もう帝国に戻っているはず……だから、ここには――」
必死に訴えようとするディアの言葉を、テオは穏やかな微笑みで遮った。
「知ってますよ?」
その声音は、まるで“見ていた”かのようだった。
自分の知らないところで、あの蒼い瞳の姉妹が、自分を殺すための駒として弄ばれていた。
その事実が、遅れて胸の奥に沈んでいく。
「……ッ、なんで」
「低脳な連中の考えは、理解に苦しみますね」
テオの瞳の奥に、暗い、けれど純粋な光が灯る。
「赤い瞳の魔女なんて、世界のどの禁書にも、古びた伝承にすら載っていない
……そんな唯一無二の観測対象を、殺そうとするなんて、許せるはずがないでしょう?」
それは、帝国への忠誠心など微塵も感じられない、探究者ゆえの傲慢で切実な怒りだった。
「お前は何をしに来た」
ヴァルが低く問いかける。
いつでも喉笛を掻き切れる間合いで、ヴァルの赤い瞳がテオを射抜いている。
「私はただ、私の“蒐集品”たちを、これ以上汚されたくないだけですよ」
テオは床に倒れたシーナを、壊れ物を扱うような手つきで抱きかかえた。
その瞬間だけ、冷徹な仮面の下から年相応の少年のような、苦い表情が覗く。
「レオンがフィオナを連れ帰ったのなら――今は、安心していいでしょう」
「――随分と、信頼してるんだな?」
ヴァルの低い声に、テオは薄く笑った。
「信頼? いえ、彼も私の研究対象の1人ですから、それなりに調べているだけです
表向きは優しくて誠実な騎士だと評判ですよ
……それに」
テオは眼鏡の奥の目を細め、まるで極上の秘密を打ち明けるように声を落とした。
「“魔女から生まれた人間”は、私の知る中で彼しかいません
信頼と言うより……興味、ですね」
ディアの心臓が、ドクンと大きく跳ねた。
「……魔女の、子供……?」
「おや、聞いていませんでしたか?
……ふふ、やはり彼は“隠し事”が得意ではない」
テオの笑みは、どこまでも残酷で、どこまでも楽しげだった。
■□■□
「……おかしい」
レオンは独り言のように呟いた。
寝台の上で、フィオナは上体を起こし、力なく壁にもたれかかっている。
その胸元で、黒く濁りきった魔石が不気味な光を放ち、彼女の体力をじわじわと削り続けていた。
「……レオン、様……?」
「……フィオナ様、お加減はいかがですか」
「……だい、じょうぶ……です……」
「無理はなさらず、お休みになってください」
レオンは咄嗟に「騎士の顔」を作り、優しく話しかける。
だが、彼の脳内では冷徹な計算が止まらない。
【魔の森にのみ自生する、稀少な薬草の採取】
どう考えても、実質的な死刑宣告。
本来なら、森の主であるディアに依頼すべき案件だ。
なぜ、わざわざ“1人で”行かせたのか
帝国には、もっと使い勝手のいい兵士も居たはずだ。
それなのに、あえてフィオナを選び、護衛も付けずに魔の森に放り込んだ。
まるで、誰かに見つけられるのを待っていたかのような
もし、ディアが彼女を見つけなければ
もし、その場にレオン自身が居合わせなかったら?
そこまで考え、レオンの背筋に冷たいものが走った。
「……最初から、狙いは『彼女』ではなかったのか」
フィオナという駒を使い、ディアという「未知の魔女(赤い瞳)」を誘き出す。あるいは、その逆か。
「レオ、入るぜ」
ノックもなしに扉が開く。
セオドールが、いつになく険しい表情で部屋に踏み込んできた。
ベッドの上のフィオナを見て一瞬ためらったが、事態は一刻を争う。
「外が騒がしい……“魔女”が、森に入ったぞ」
「魔女……まさか、シーナ様ですか?」
シーナ・グラシエ。フィオナ・グラシエ。
双子の姉妹である彼女たちの瞳は、半分ずつ分け合ったかのように蒼を宿している。
「ああ、上層部が吹き込んだらしいぜ
『白魔女が、お前の妹を攫って食い殺そうとしている』ってな」
「――っ! 姉様が……!?」
フィオナが震える声で叫び、布団を握りしめる。
レオンの拳が、みしりと音を立てて握りしめられた。
あまりに短絡的で、あまりに確実な殺意の連鎖。
「……あいつら、どこまで」
「おい、レオ……そんな顔じゃ、嬢ちゃん泣かせるぜ?」
セオドールの言葉に、レオンは一瞬だけ息を止めた。
貼り付けた微笑みが剥がれ落ち、その瞳に宿ったのは、帝国への激しい嫌悪と、遠い森に遺してきた大切な人への、切実なまでの焦燥だった。
■□■□
テオは手際よくシーナをベッドに横たえると、自らの外套の裏地から、鈍い光を放つ人工的な魔石を取り出した。手慣れた手つきで、シーナの胸元にあった黒ずんだ石を外し、新しいものへと入れ替えていく。
「それ……」
ディアが思わず声を漏らすと、テオは作業を止めずに口角を上げた。
「私のお手製です
魔獣から確実に適合する石を採取できる保証はありませんからね……
不確定要素を待つより、作る方が効率がいい――そうは思いませんか?」
処置を終えたテオは、空いている椅子に深く腰掛けた。そして、観察対象をじっくりと眺めるような目で、ディアを真っ直ぐに見つめる。
「さて、時間もありませんし
単刀直入に伺いましょう――“終焉の白”様」
テオの瞳の奥で、知的な光が冷たく揺れる。
「貴女は、レオニス・ルクシアと手を組んで、一体何を企んでいるのですか?」
「レ……? ……誰、それ……聞いたことない」
ディアは困惑し、首を傾げた。
聞き覚えのない、けれどどこか高貴な響きを持つその名に、胸の奥がざわつく。
テオは意外そうに眉を上げ、それから合点がいったように小さく吹き出した。
「おや、……ふふ、なるほど
彼は自分の素性を、何一つ明かしていなかったわけだ」
テオは眼鏡を指先で押し上げ、残酷なほど穏やかに告げる。
「レオニス・ルクシア、貴女の騎士……レオンの本名ですよ
帝国の第三皇子ですね」
「…………ッ、帝国の、皇子、」
「ええ、第一皇子閣下から
貴女を排除し、彼との接触を断てとの命を受けてここに来ましたが……」
テオは窓の外、帝国がある方向を眺め、鼻で笑った。
「ただでさえ危険人物と見なされ、監視されている彼が、閣下の目を盗んでまで貴女に接触した
……それも、この『魔の森』の深部で
そこまでして、彼は貴女に何を求めたのですか?」
ディアは言葉を失った。
あの時、森で出会ったレオンの、少し寂しげで優しい微笑みが脳裏をよぎる。
彼はただの騎士ではなく、国を背負う皇子。
「……私は、何も知らない」
全部、嘘だった?
傍に居たいと願ったのは、私が珍しい“魔女”だから?
利用価値があるから?
「 “終焉の白”様、帝国の論理はそう甘くはない」
テオが立ち上がり、ディアに一歩詰め寄る。
その影が、ディアの視界を覆った。
「彼は貴女を守るため、これからも嘘を重ね、国を、家族を……誰かを裏切り続けるでしょう
貴女がそこに存在し続けるだけで
彼は永遠に『嘘つきの皇子』であり続ける」
テオが眼鏡の奥で、三日月のように目を細める。その微笑みは、地獄への道案内のように慈悲深く、そして残酷だった。
「彼を解放してあげてください
――貴女がここから消えれば、それで終わる話です
そうすれば……少なくとも、貴女に危害は加えないと約束しましょう」
脳裏に浮かぶのは、楽しい記憶。
あの穏やかな時間は、レオンが何かを裏切り、何かを捨てて、必死に作り上げていたモノだった。
優しさに甘えていた
その甘えの代償を払わされているのは――自分ではない。
私の存在がいけないの?
私がいると、嘘つきになる?
私がいなければ――
全部、元に戻るの?
絶望がディアの瞳を覆おうとした、その瞬間。
――パキパキ、と。
家鳴りのような音が、部屋の空気を震わせた。
その背後で、ずっと黙って聞いていたヴァルが声を上げる。
「……おい、誰の許可を得て、その汚い口を動かしている」
低く、地響きのような声。
ヴァルが一歩踏み出すたびに、床が、壁が、テオの存在を拒絶するように軋む。
「言葉だけでこれほど空気の密度を変えるとは
やはり、貴方はただの精霊ではないようですね」
「……次、その減らず口を叩いてみろ
呼吸する間もなく、その首――消し飛ばしてやる」
ヴァルの燃えるような赤い瞳が、テオを射抜く。
ディアを傷つけられたことへの静かな怒りが、身体中を支配していた。
(――ディア)
ふいに、場違いなほど穏やかな声が響いた。
(悲しいの?)
空気が、わずかに揺らぐ。
(他の奴の言うことなんて、聞かなくていいよ)
その声は責めるでもなく、怒るでもなく――ただ、静かだった。
(ディアはどうしたいの?)
顔を上げれば、レオンの姿が目の前にあった。
全部聞いていたのか、痛みを堪えるような表情でディアを見ていた。
レオンの足元が歪み、影の中からクロがゆっくり姿を現す。
そしてもう一度、ディアに問いかける。
(どうしたい?)
ディアは震える声で、はっきりと答えた。
「私はッ、一緒にいたい」
あまりにも単純で、あまりにも無責任な、子供のような願い。
けれど――それこそが、何者にも汚されていないディアの本音だった。
(……うん、ボクも、ディアと一緒がいい)
クロがディアの胸元へと飛び込んできた。
「……ふふ」
静まり返った部屋に、乾いた、けれどどこか愉悦に満ちた音が響いた。
パチ、パチ、パチ――。
テオが、ゆっくりと、賞賛を送るように拍手をしている。
眼鏡の奥の瞳は、絶望を脱ぎ捨てたディアを、磨き上げられた宝石でも見るかのように熱烈に射抜いていた。
「よく言えましたね、“終焉の白”様
……意思のない“人形”では、退屈ですから」
テオは椅子から立ち上がり、ディアの傍らへと歩み寄る。
そしてレオンへと視線を移した。
その口元には、不遜で、けれど共犯者を誘うような歪な笑みが浮かぶ。
「……それで?
いつまで“傍観者”でいるつもりですか、レオニス殿下」
「…………」
レオンが、静かにテオを見つめ返す。
「私は、貴方に賭けているんです
この腐りきった盤上をひっくり返してくれる瞬間にね」
テオは外套を翻し、窓の外――遠く、白く煙る帝国の王城を見据えた。
「魔女の価値を理解できない無能な奴らは……
まとめて歴史のゴミ捨て場に送ってしまいましょう」
テオが指先でチェスの駒を弾くような仕草を見せ、ディアとヴァル、そしてオンを交互に見つめる。
「さて――『革命』を起こしましょうか?
最も美しく“輝く”ための舞台を――用意して差し上げます」
その宣言は――帝国の知性を司る男が、自らの国に牙を剥いた瞬間だった。
読んでくださり、ありがとうございます。
それぞれが抱えているものが、少しずつ表に出てきました。
守りたいものも、壊したいものも、全部が同時に動き始めています。
誰が正しくて、誰が間違っているのか。
その答えは、まだ誰にも分かりません。




