14章【救済を謳う魔女と終焉の白~救済の果て~】
自分は、どんなに汚れても構わない。
ただ、あの白い髪の少女が、笑っていられる場所――それだけは失わせたくない。
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「私はこれでも、最大限の『慈悲』を持って話をしています
貴女が、これ以上その手を汚さないで済むように」
レオニスはゆっくりと背もたれに体を預けた。
「魔女が死ぬ、……それは帝国にとっても、協会にとっても、甚大な損失のはずだ
もし、その原因が貴女であると公になれば、その首さえ危うい――違いますか?」
「…………」
エミリアは目を細めた。
レオニスが吐いた「意識不明」という言葉の真偽を測るように、その視線がレオンの表情をなぞる。
「……私の持ち物を調べ、足取りを追う
それが貴方の望みですか? 皇子様」
「いいえ――貴女をここで吊るし上げることが私の目的ではない」
レオニスは冷たく言い切った。
「私が欲しいのは、安全だ
今後、ディア様に一切の手出しをさせないという確約……そして、貴女が持っているはずの、その毒の『解毒剤』を今すぐ渡してもらう」
エミリアは、ふっと微かに、本当に微かに肩を揺らした。
「解毒剤……?
あの子を助けたいというお気持ちは、よく分かりました
けれど、私が持っているのは救済であって、解毒剤ではありません」
「言葉遊びはいい……今、この場で出せ」
レオニスがわずかに声を低めた。
その瞬間、応接室の温度がさらに数度下がったかのような錯覚に陥る。
エミリアはしばらくレオニスの瞳を凝視していたが、やがて諦めたように、自身の袖口から小さな、透き通った青い瓶を取り出した。
「大抵の毒ならば……この薬で抑えられますよ」
エミリアは青い瓶をテーブルの上で滑らせた。
レオニスはそれを左手で掴み、一瞬だけ光に透かして見ると、迷わず懐へと収めた。
「交渉成立ですね」
レオニスは席を立ち、一歩も振り返ることなく扉へと向かった。
扉のノブに手をかけたところで、背後からエミリアの、氷のように澄んだ声が届く。
「レオニス様……嘘で塗り固めた平和は、いつか必ず、ご自身の首を絞めることになりますよ」
レオンはその問いには答えず、ただ力強く扉を開け放った。
背後で扉が閉まる重厚な音を合図に、一度だけ深く息を吐き出した。
手のひらには、先ほど掴み取った青い瓶の冷たさが残っている。
エミリアの言葉は呪いのように耳の奥にこびりついて離れないが、今は立ち止まっている暇はない。
■□■□
「遅かったな」
腕を組んで待ち構えていたヴァルが、戻ってきたレオンの顔を見るなり、赤い瞳を鋭く細めた。
レオンは乱れた呼吸を整えながら、懐から例の青い瓶を取り出し、テオに渡した。
「“解毒薬”として受け取ってきた、調べられるか?」
テオは、まるで宝物でも見つけた子供のような手つきで瓶を受け取った。
眼鏡の奥で、その瞳がギラリと光る。
「これはまた、美しい青ですね」
テオは瓶を光に透かし、確かめるようにゆっくりと揺らした。
これほど純度の高い薬は珍しい。
「それで――エミリア様はどうでしたか?」
この中に不純物が混じっていなかったとしても、ディアに使う気は一切ないとテオは知っていた。
「強い意志を持ってる人でした」
「……“毒”が混ざっている、そう報告すればエミリア様を処刑台に登らせることは簡単にできますけど」
「帝国の上流貴族しか手に入れることのない“解毒薬”を持っていたのにか?」
「ならば……エミリア様と仲良くしている“共犯者”を見つけるのが先ですね」
壁に背を預けていたヴァルは、不機嫌そうにテオが掲げた青い瓶を、射抜くような赤い瞳で見つめた。
「――レオン……?」
不意に、奥から微かな、けれど確かな声が響いた。
全員の視線が、一斉にベッドへと向く。
そこには、毛布を握りしめ、不安げにこちらを見つめるディアの姿があった。
「……ディア様」
レオンは反射的に駆け寄り、彼女の傍らに膝をついた。
ディアが目の前に居る。
その事実に、胸の奥が張り裂けそうなほどの安堵で満たされる。
「ディア様、体調はどうですか?」
「大丈夫だよ?
……それより、なんだか、すごく……怖い顔してる」
ディアが、おずおずとレオンの頬に手を伸ばす。
その指先の温もりに、レオンは息を呑んだ。
「そんなことないです」
レオンは精一杯の嘘を、微笑みの中に隠す。
けれど、その頬に触れるディアの小さな掌は、レオンの微かな震えを正確に捉えていた。
「レオンの嘘つき」
ディアは拗ねたように唇を尖らせたが、すぐにその手を力なく下ろした。
目覚めたばかりの彼女の瞳には、まだ深い疲労の色が混じっている。
「……甘いもの、食べたの……怒ってるの?」
ディアの言葉が静かに響いた。
レオンはディアを見つめたまま、しばらく動くことができなかった。
「甘い、もの?」
ディアはそっと袋を取り出すと、残っていた焼き菓子をレオンに渡した。
その焼き菓子を見た瞬間、レオンの思考が白く凍りついた。
手に渡されたのは、サクサクとした生地に砂糖をまぶした、ありふれた焼き菓子。
だからこそ、余計に背筋が冷えた。
「これ、は……」
「……シーナちゃんがくれたの」
ディアはレオンの反応を「勝手にお菓子を食べたことへの怒り」だと勘違いしたのか、申し訳なさそうに眉を下げた。
「……すごく、甘かった」
差し出された菓子の欠片。
レオンはそれを震える指先で受け取り、激しい動悸を押し殺した。
エミリアの淹れた茶の香りが蘇る。
もし、この菓子にも毒が仕込まれていたのだとしたら。
そして、ディアがそれを「美味しい」と笑って食べていたのだとしたら。
「……っ」
レオンは喉の奥から込み上げる考えを堪え、渡された菓子を握りしめた。
そんなレオンの様子を、ディアは不安げに見つめている。
「……やっぱり、怒ってる……?」
「…………いいえ」
レオンは、ひび割れそうな声を絞り出した。
怒っているのではない。
あまりの恐怖に、心臓が止まりそうなだけだ。
「怒ってなんて、いません……ただ、少し驚いただけです」
レオンは無理やり口角を上げ、ディアの頭を優しく撫でる。
その手は、先ほどよりも酷く震えていた。
背後で、そのやり取りを静かに見ていたテオが、穏やかに口を開く。
「安心してください、“毒”は無いです」
「……そう、ですか」
「そんなに気を張っていたら、真っ先に貴方が潰れますよ」
(ディアに触るな!!)
ディアの頭に触れていたレオンの手に、クロが噛み付いた。
「クロ!仲良くする約束でしょ?」
(ディアのお願いでも!!コイツはダメなの!!)
「ディア――帰るか?」
「ヴァルディス様、しばらくは此処に滞在して下さい
……クロもいい加減に離せ」
(うるさい!!お前は嫌いだ!!)
「下僕の分際で指図するな」
賑やかな部屋の中でテオは、手の中の青い瓶を見つめたまま、静かに笑った。
――なるほど
“救済”ですか
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暗闇に紛れ、気配を殺す。
知人から譲り受けた香のおかげで、見張りをしていたレオンとセオドールは、深く眠りに落ちていた。
静まり返った室内。
エミリアは、ゆっくりとベッドの傍らへ歩み寄る。
毛布の上に広がる白い髪。 無防備な寝顔。
あまりにも、無垢だった。
――ごめんなさい、ディア。
胸の奥が、僅かに軋む。
けれど、躊躇はない。
これで、この子は“魔女”として消費されずに済む。 苦しみ続けなくて済む。
「……これで、終わるの」
エミリアは袖口から、細身のナイフを取り出した。
鈍く光る刃。
それを静かに振り上げる。
狙うのは、心臓。
その瞬間だった。
――ぱちり。
ディアの瞳が、ゆっくりと開かれる。
「……っ」
エミリアの呼吸が止まった。
そこにあったのは、“赤”。
深く、昏く、飲み込まれそうなほど禍々しい赤。
燃え盛る炎にも似て、 底の見えない深淵にも似た色。
これは、魔女の瞳ではない。
ナイフを握る手が、震える。
恐怖ではない。
もっと本能に近い感覚。
圧倒的な存在を前にした時、生き物が無意識に膝を折りたくなるような――そんな感覚だった。
ディアは何も言わない。
ただ静かに、エミリアを見つめている。
怒りも、憎しみもない。
ただ、全てを見透かすような静寂だけがあった。
――次の瞬間。
空気が、裂けた。
轟音。
窓の外で、暴風が荒れ狂う。
木々が軋み、 空気そのものが悲鳴を上げていた。
「……ヴァル」
それだけで分かった。
ディアへ向けられた殺意。
それを感じ取った瞬間、 ヴァルの中で抑え込まれていた“何か”が、完全に溢れ出していた。
赤い瞳が、闇の向こうで獣のように光る。
――殺す。
その感情だけが、世界を埋め尽くしていく。
エミリアは理解した。
もし今、この殺意が解き放たれれば、 自分だけでは済まない。
この場所ごと、消える。
「――ダメだよ」
静かな声だった。
けれど、その一言だけで。
荒れ狂っていた殺意が、ぴたりと止まった。
怖くないわけじゃない。
けれど、エミリアの瞳の奥にある悲しみから目を逸らせなかった。
エミリアが振り上げたナイフの切っ先が、自分の胸元を指しているというのに、ディアはただ、迷いなくエミリアの瞳を見つめ続けていた。
「私、エミリアとお話しがしたいの」
ディアは、静かに微笑むと優しく話しかける。
その微笑みは、昨夜の茶会でエミリアが見せた偽りの微笑みよりも、ずっと深く、温かかった。
「……お話し? 貴女、自分が今、どんな状況か分かって言っているの?」
エミリアの声が微かに震え、ナイフを握る指先が乱れた。
殺そうとした。
毒も盛った。
今も刃を向けている。
それなのに、目の前の少女は「話をしたい」と、あどけない子供のように言っている。
「エミリアは、救いたいんだよね」
ディアの言葉に、エミリアの眉が跳ね上がった。
「そうです
魔女なんていう忌まわしい運命から――貴女を解放してあげることが」
「……違うよ」
ディアは静かに首を振った。
「エミリアの瞳の中には、誰かが見えてるの?」
「ッ、……なにを」
「救いたいと言いながら、エミリアがずっと見ているのは……私じゃなくて、もっと別の、とても大切な誰か
……そうでしょ?」
エミリアの息が、不自然に止まった。
脳裏に浮かぶのは、翠の瞳で笑う少女の姿。
手を汚し、嘘を重ね、ここまで這い上がってきた本当の理由。
心の奥底に閉じ込めていたはずの、たった一人の存在。
「エミリア、貴女が本当に救いたかったのは――誰なの?」
ディアの声が、慈雨のようにエミリアの心を濡らしていく。
ナイフを持つエミリアの手から、力が抜けた。
カラン、と乾いた音を立てて刃が床に落ちる。
「……何を知ったようなことを……っ」
エミリアは崩れ落ちるように膝をついた。
瞳から、これまで保ってきた光が剥がれ落ちていくのを感じる。
ディアは、エミリアの奥底に沈んだ“悲しみ”へ、真っ直ぐ手を伸ばしていた。
「教えて、エミリア
……貴女の瞳の中に居る、その人のこと」
朝の光が、隙間から二人の少女を等しく照らし出す。
殺そうとした者と、殺されかけた者。
「ッ、貴女に話すことなんて……なにもないわ」
エミリアの頬に1粒の涙が溢れ落ちた。
その涙が、誰のためのものなのか――エミリア自身にも、もう分からなかった。
「おい、女……救いだの何だのと、自分の弱さを綺麗な言葉で飾るな」
「ヴァル……」
「救済だと?」
ヴァルは鼻で嗤った。
「お前が救いたいのは――過去の自分だ」
ヴァルはディアの腕を掴み、強引に引き寄せた。
けれど、その手は驚くほど優しく、彼女を壊さないように配慮されている。
エミリアは、床に落ちたナイフをただ虚ろに見つめていた。
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帝国魔女育成施設
そこでは、少女たちは人間ではなく、戦場に並べる「兵器」として育てられていた。
「……また、これだけ?」
教官の冷たい声が響く。
エミリアが必死に魔法を込めた指先からは、小さなかすり傷を塞ぐ程度の淡い光しか出ない。
周囲の少女たちが爆破や大規模な治癒を見せる中、エミリアはいつも“役立たずの落ちこぼれ”として泥を舐めていた。
「大丈夫だよ、エミリア」
そんな彼女に、いつも翠の瞳を細めて笑いかけてくれたのが、リリエだった。
リリエは植物を操る才能に長け、誰にでも優しく、地獄のようなこの場所で唯一“明日”を語る女の子だった。
「私たちが大人になったら、誰も傷つかない花園を作ろうね」
その約束だけが、エミリアの支えだった。
■□■□
あの日。
数人の少女たちが連れて行かれたのは、逃げ場のない円形の闘技場だった。
中央に無造作に置かれた、一本の銀色のナイフ。
「これから、君たちには殺し合いをしてもらいます」
天上から降る無機質な声。
理解が追いつくより早く、リリエがエミリアの手を強く掴んだ。
「――逃げるよ、エミリア!」
リリエはナイフから一番遠い壁際まで走り、植物の蔦を編み上げて分厚い壁を作った。
外からは、パニックに陥った少女たちの悲鳴と、肉が裂ける生々しい音が響いてくる。
「大丈夫、ここにいれば、きっと終わるから……」
震える声でリリエが囁く。
けれど、悲鳴が止み、静寂が訪れたその瞬間だった。
外の様子を伺おうと、リリエが植物の壁にわずかな隙間を作る。
――シュッ
「……ぁっ!!」
リリエが短い悲鳴を上げ、両目で顔を覆った。
指の隙間から、鮮血が溢れ出す。
隙間を狙い澄ましていた刃が、彼女の翠の瞳を貫いたのだ。
崩落する植物の壁。
なだれ込んできた生き残りの少女が、リリエの胸元に深々とナイフを突き立てた。
「あ……あ……っ」
エミリアは、ただ見ていた。動けなかった。
リリエは激痛に悶えながらも、残された力を振り絞って蔦を操り、襲い来る者たちを地面に叩き伏せた。
立っているのは、エミリアだけ。
そして地面には、事切れた少女たちと、浅い呼吸を繰り返すリリエが倒れていた。
「リリエ! 待って、今、治すから……!」
エミリアは泣きながら、リリエの胸の傷に手を当てた。
けれど、溢れ出す光はあまりにも弱く、致命的な傷を前にしては、砂漠に水を撒くような無力さだった。
「……エ、ミリア……おね、がい……」
血を吐きながら、リリエが震える手でナイフをエミリアに差し出す。
「……らくに、し、て……?」
翠の光を失った瞳。
激痛に歪む顔。
リリエは、もう――助からない。
このままでは、ただ苦しみの中で肉体が朽ちていくのを待つだけだ。
「そんなの、できない……嫌だよ、リリエ!」
エミリアは首を振る。
けれど、リリエの喉からはヒューヒューと虚しい呼吸音が漏れ、その体は絶え間ない激痛に震えていた。
救わなければ
でも、私にはリリエを癒す力なんてない
その時
エミリアの瞳に、逆光を浴びたナイフの刃が白く光った。
「あ、はは……っ」
乾いた笑いが漏れた。
自分でも何がおかしいのか分からない。
ただ、脳のどこかが音を立てて壊れたような気がした。
治せないなら
この苦しみを取り除く方法は、たった一つしかない。
「……分かったよ、リリエ――救ってあげる」
エミリアは慈しむような手つきで、リリエの胸元にナイフを向けた。
「……ありが、と、う」
リリエの小さな囁き。
その言葉で。 エミリアの中から、“殺してはいけない”という最後の理性が消えた。
エミリアは、一点の迷いもなく――勢いよくナイフを振り下ろした。
ドクン、と。手に伝わった温かい感触と共に、リリエの体から力が抜ける。
苦痛に歪んでいた顔が、嘘のように穏やかな“安らぎ”に変わった。
「――ああ、そうか」
エミリアは、血に濡れた自分の手を見つめて確信した。
これが、私に与えられた唯一の治癒。
これこそが、魔女という呪われた運命からの、真の救済。
リリエの最期の微笑みだけが、エミリアの心に「聖痕」として刻まれた。
■□■□
「殺さないのね」
エミリアは床に伏したまま、自嘲気味に呟く。
「貴様に殺す価値があると?」
ヴァルが冷たく吐き捨てる。
その赤い瞳には、もはや敵意すら残っていない。
エミリアは静かに微笑むと、震える手で懐に忍ばせていたもう一つの瓶を取り出した。
それは、万が一の時のために用意していた、終わるための劇薬。
「……私にも“救済”が訪れましたね」
エミリアは迷いなく、その中身を飲み干した。
「エミリア……っ!」
ディアの声が響く。
劇薬が喉を灼き、内臓を侵食していく感覚。
エミリアはゆっくりと瞼を閉じた。
これでいい
守れなかったあの子の元へ、ようやく行ける
■□■□
……だが。
数拍経っても、死の抱擁(静寂)は訪れなかった。
代わりに全身を駆け巡ったのは、焼け付くような熱と、無理やり心臓を叩き起こされるような強烈な痛み。
「……あ、が……っ、は……!?」
エミリアは喉を掻きむしり、激しく咳き込んだ。
「命拾いしましたね、エミリア様」
いつの間にか目の前に立っていたテオが、手の中で空になった「青い瓶」を転がしながら、愉快そうに目を細めていた。
「……ッ……なにを、」
「先ほどレオン様が貴女から受け取った、『解毒薬』ですよ?」
エミリアは目を見開いた。
テオの隣には、複雑な表情を浮かべたレオンが立っていた。
「ご自身で『大抵の毒なら抑えられる』と言っていましたが、忘れてしまいましたか?」
レオンの声は、どこまでも静かだった。
「…………っ、あ」
エミリアは、溢れ出す涙を止めることができなかった。
死ぬことすら、許されない。
自分で用意した“救済”という名の偽りに、自分自身が救われてしまうという、これ以上ない屈辱と慈悲。
「……ひどいですね……どこまで、私を惨めにするのですか……」
エミリアは顔を覆い、子供のように泣き崩れた。
ディアはそんな彼女の背中に、そっと手を添える。
その手は、あまりにも温かかった。
――優しかった。
だからこそ、ひどく苦しかった。




