飯沢班の実力
宿屋で一晩明かし、朝早くに飯沢班と合流する。
「早起きだな、イルミーナさん。やっぱり歳をとると朝が早いのか?」
「こらっ!!失礼でしょ!?」
「いいじゃねえか。クラスメイトなんだから」
「そういう問題じゃないでしょ!ごめんなさいイルミーナさん」
「私は構わないわ。ヒロト君の言う通り、私は年寄りだから心が広いから」
会って早々、朝一番にとんでもないことを言われたが、私は別に何ともない。
この歳になると、大抵のことは許容できるからね。
――失礼すぎて草
――滅茶苦茶キレてるじゃん。殺される前に謝った方がいいんじゃね?
――明らか格上なのにノンデリ発言かます度胸よ。真似したくはないが、尊敬するぜ
――実際イルミーナさんがキレたらどうなるの?
――↑多分全員ワンパンで死ぬ
コメントもなかなか盛り上がっている。
私の発言がまるで怒っているみたいだったのか、私が怒ってるみたいな言い方をされてるけど、本当に怒ってない。
別にこの程度では何とも、なんだけどなぁ…
まあいい。
それより、話を先に進めたい。
「そんな話はいいとして、朝食は済んだのか?」
「いえ、まだです。もしかして、何かいい店を知ってるとか…」
「いや、別にこの辺には詳しくないから大したことは言えない。前にこの辺りに来たときには、こんな町なかったはず…」
「それいつの話なんですか…」
いつ、ね……140年くらい前か?もしくは160年くらい?
自分の年齢は覚えていても、いつどこに居たかなんて正確には覚えてない。
意味のない事だから。
「覚えてないな。ずっと昔の話だ」
「すごい…めっちゃエルフっぽい」
「いいなぁ…俺もそんな事言えるようになりたいぜ」
ちょっと当たり前のことを言っただけで目を輝かせる一同。
そんなに面白い話でもないんだけど…やはりこの国だと長命種と出会わないのだろうか?
「この辺りには、たしか長命種が住んでいる地域はなかったな?」
「そうですね。我が国周辺は基本的に人間しか住んでいませんから」
スレイに話を振ってみると、やっぱりこの周辺には長命種が居ないらしい。
その影響もあって、私の話はさぞ新鮮だろう。
シニャも見たところ100年も生きていない若いハーフエルフ。
語ることもあまりないと見るべきか…
……いや、そういう話がしたいわけじゃないんだ。
「あー、話が逸れたな。改めて朝食はどうする?」
「宿屋ではそういうサービスがないみたいで……近くのパン屋で朝焼けたばかりのパンを買おうと思っています」
「なるほど。なら、私もそこでいただこう」
飯沢さんの話では、近場のパン屋で焼き立てのパンを買う予定らしい。
私も別に当てがあるわけではないから、同じところで食べようか。
目的地も決まったので、話しながらパン屋へ向かう。
「こっちに来て半年、住み心地はどうだ?」
「正直に言っていいなら、滅茶苦茶悪いな。日本が恵まれた国だってことをわからされたよ」
「来て1ヶ月くらいはまともに寝られませんでした。今はかなり慣れましたが…いつも日本に帰りたいと願ってますよ」
みんなにこっちでの住み心地を訊いてみると、やはり評価は悪かった。
慣れはしたものの、それはそうと早く日本に帰りたい。
口をそろえてそう言うのだ。
これは、基本的にどの転移者、転生者に言えること。
誰しもこの文明レベルの低い世界で生きていくのはキツイと感じている。
「俺の『配信』に日本から物を取り寄せる機能があればよかったんだがなぁ」
「異世界から物を持ってくる力か…そういう力を与えられた転移者・転生者は見たことがないな」
「マジかぁ…」
「だが、『創造』系の力を持ってるやつは元の世界の道具を作って持っていたりする。今の時代にその力を持っている奴が居ないか探してみたらどうだ?それか、クラスメイトにそういうヤツはいないのか?」
「あー……居たっけな?そんなやつ」
昔から『創造』系の力を与えられた異世界人はこの世界にとって厄介者だった。
あの手の力は何となくそれがどういうものかを理解していれば、細かい仕組みが分からずとも機械を作り出すことができる。
それが例えば洗濯機とかガスコンロとかならよかったが、銃器となると話が変わってくる。
異世界の技術で作られた高度な銃は、雑兵程度の連中なら軽く薙ぎ払える。
戦争が起こった時、それが使われるのは良くないと判断している。
「まあ、居たとしてもあまり多用はするべきではないな。目を付けられる」
「誰に?」
「とても怖い奴らだよ。そいつらは異世界人の事を好ましく思っていない。派手なことはするな」
「へぇ~?チートスキルで最強無双!!みたいなことはしない方がいいってことなのか?」
「そうだな。やめておくべきだ」
確かに異世界人に与えられた力は強力だ。
だが、それがあるからと言ってこの世界の頂点に立てるわけではない。
必ず出る杭は打たれる。
どこかで善くない未来が待っているのは間違いないだろう。
「何と言うか…夢がないよなぁ~、この世界」
「現実だから当然だな」
「いや、そうだけどよ…せっかく異世界に来たんだぜ?もっとこう、パーっと――なんだ?」
ヒロト君が異世界ドリームについて語っていたその時だった。
スレイが足を止め、それに合わせて騎士たちが周囲を警戒し始めたのだ。
「…敵ですか?」
「ああ。君たちは人気者だ」
「嫌な話ですけどね…」
異世界人を狙う敵の影。
それを察知して警戒している様子。
…にしても、どういうつもりなんだ?こんな朝早くから人を襲うようなお尋ね者は。
「今回は誰だろうな?前は金目当ての盗賊だったけど」
「前にも何度かあったのか?」
「ああ。何度も襲われてる。でも、その度にスレイさんたちが追い払ってくれるんだぜ?なんってたって、スレイさんは副騎士団長で、シニャさんは宮廷魔法使いだからな!」
「確かに、有象無象ならそれで捌けるな。今まで安全だっただろう」
「…なんだそりゃ?今回は違うってのか?」
首をかしげるヒロト君。
ここまで話して気がつかないのは、半年この世界に居た割には危機感が足りていない。
良くない兆候だな…
――今回の敵ってもしかしてヤバイ?
――イルミーナさんがそう言ってるんだ。あのスレイさんたちでも勝てない相手が敵って想像したくねえぞ
――てかそんな奴いるのかよ?
――居るだろ。実際会ってるし
――そういえば居たな。イルミーナさんの方がインパクトがあって忘れてた
配信のコメント欄は勘づいているようだ。
今飯沢班を狙う敵の正体に。
そして、コメントを見たヒロト君たちも敵がだれか理解できたらしい。
すると、まるで示し合わせたかのように丁度よく裏路地から敵が現れた。
「よう。昨日ぶりだな、異世界人」
「お前は…!」
現れたのは、2メートル近い身長を持つ大男。
そして、見覚えのあるやつだ。
「泥酔してたミスリル級冒険者…!!」
そう、昨日泥酔して飯沢班に絡み、私に睨まれて怯えまくっていたミスリル級冒険者だ。
こんな言い方をするとまるで雑魚のようだが…これでもミスリル級。
スレイとシニャの2人掛かりでも厳しいものがあるだろう。
それに加え、手下もいる。
「おいお前ら。その騎士どもをぶっ潰しておけ。殺しても構わん。剝ぎ取った装備のカネは好きに使え」
「さすがハゴスさん!太っ腹~!」
「ハゴスさん最高!異世界人の女はどうしやすか?」
「異世界人共は丁重に扱え。大切な売りもんだからな」
手下どもはハッキリって有象無象だが……数が多い。
40人くらいはいるな。
護衛の騎士たちは決して弱くないが、強い者でギリギリ金級程度。
大して相手は最低でも銅級。銀級相当の実力を持つ者も居るなど、戦力として圧倒的に負けている。
「不味いな…この数は…」
「いざとなれば、私たちを置いて逃げよ。君たちの身の安全が最優先じゃ」
「んなっ!?スレイさんたちはどうするんだよ!?」
「こちらはこちらで何とかする。いつでも逃げられるようにしておくんだ」
形勢不利と判断したスレイとシニャは飯沢班を逃がす方針で動いている。
自分たちが殿となり、何としてでも飯沢班を守る。
いい判断ではあるが…保護者を失うのは大きいだろう。
…私が、ちゃんと彼らを守る保証もないというのに。
「へへっ!逃げられると思うか?」
「くっ…!私たちだって!!」
「それなりに戦えるんだぜ?舐めてもらっちゃ困るな!」
数で囲んでくる敵。
それに対し、飯沢さんは持っていた槍を構え、ヒロト君は剣を抜く。
真理ちゃんは魔法の杖を取り出し、賢也君は方手斧と盾、影が薄い大竹君はナイフか。
構えからして、それなりの訓練は積んでいるようだ。
異世界人はどういうわけか物覚えがよく、こういう戦闘の技術の習得が早い傾向にあり、経った半年でもある程度は戦える力を身に着けている。
そして、それぞれの与えられた『力』。
転移者の実力、見せてもらおうか?
私は気配を消してさりげなく集団から外れると、スッと飛び上がって空から戦況を俯瞰する。
ジリジリと包囲が完成しつつあり、このまま何もしなければ数で押し切られて終わりだろう。
さて、どう動く?
「散れ!『ショックウェーブ』!!」
緊張の糸が張り詰める中、最初に動いたのはシニャだった。
風の魔法で衝撃波を放ち、それを後方に撃つ。
いきなりの魔法に手下どもは反応できず、包囲に明確な穴ができた。
それを見た飯沢班が走り出し、戦闘が始まった。
「ドタマ勝ち割ってやるよ!騎士サマァ!!」
「ふぅっ!!」
ミスリル級冒険者ハゴスと副騎士団長スレイの激突。
パワーでは圧倒的にハゴスが勝るが、技量は見たところスレイに分がある。
振り下ろされた大剣を上手く受け流し、自分へのダメージを最小限に抑えた。
「『アクアショット』!!」
「ぶふっ!?」
初撃を受け流され、隙ができたハゴスの顔にシニャの水魔法がぶつかる。
水球を作り出し、高速でぶつける魔法だ。
速度と質量次第ではそれなりに怪我を負おうが、ハゴスには効かない。
むしろ効かないこと前提の使い方だ。
いきなり顔に水をぶっかけられれば、普通は怯む。
それを狙った魔法だ。
水をかけられてできた隙を突くように、スレイの剣が光を反射する。
…が、相手はミスリル級冒険者。
「ふぅんっ!!!」
「くっ!?」
即座に体当たりを選択し、スレイにぶつかって攻撃を阻止した。
その判断力と、確かな威力は流石のもの。
ミスリル級は伊達ではないらしい。
さて、少し場所を変えて飯沢班。
「はぁっ!!」
「ぐえっ!?」
「せいぁぁぁああああ!!!」
「うぎっ!?」
槍使いの飯沢さんは、とても半年前まで学生だったとは思えない槍捌きで敵を打倒している。
あの動きとパワー…恐らく転移してくる時に『槍の才』の力を与えられていると見た。
そして、その横で剣を振るうヒロト君。
彼の与えられた力は『配信』のはずだが、異世界人特有の成長性でカバーしていると見える。
あれだけやれるのなら将来有望だ。
「『フレイム』!!」
「あちちっ!?あっちあっち!!?」
「きええぇぇぇぇいい!!!」
「うおっ!?なんだコイツ硬てぇ!?」
「“影よ…敵を捕らえろ!”」
「な、なんだこりゃ!?影!?」
そして真理ちゃんは見ての通り魔法使いタイプ。
『魔法の才』系の何かしらの力を与えられた感じか…もし違うなら、たった半年であそこまで魔法が使えるほどの才能があることになる。
まあ、どちらであっても今後魔法使いとして成長するだろう。
次に賢也君だが…アレは『狂戦士の才』系の何かか?
メガネの奥の瞳は随分と好戦的な色をしていて、なおかつ身体能力と防御力が上昇している。
特徴は一致するが、そういう能力は割と種類が多いので後で聞いてみよう。
そして大竹君。
影が薄いと思っていたが…アレは『影支配』だな。
今はせいぜい敵を数秒拘束するのが関の山だが、利便性が高く将来に期待できるいい力。
あたりを引いたな。
「なかなかやるじゃないか…でも、足りないな」
みんなよくやっている。
でも、よくやっているだけだ。
決定打が欠けていて、耐えることしかできない。
「大人しくしやがれ!!」
「ぐはぁっ!?」
「普翔くん!?――うぎゃっ!?」
「へへっ、いい体してるな」
ヒロト君は背後から殴られて倒れ、それを見て一瞬動きが固まった飯沢さんは飛びつかれて組み敷かれてしまう。
「捕まえたぞ!」
「もう何もできねぇな?」
「うううう~~~!!!うおおおおおおお!!!!」
「暴れても無駄だぜっ!オラッ!!」
「くっ!?」
パワーが売りの賢也君も、複数人に組み付かれては動けない。
「ひっ!?こ、来ないで…!」
「へっへっへっ!大人しくするなら痛くはしねえよ」
真理ちゃんの魔法はまだまだ初心者のそれだ。
人を一瞬怯ませることができても、倒すには至らない。
「邪魔くせぇ!!」
「くそっ!」
同様に、せいぜい数秒足止めができるだけの大竹君の『影支配』も大したことはなく、簡単に突破されている。
――やべぇやべぇ!過去一ヤバいぞ!?
――誰か戦える奴はいないのかよ!?殺されちまうぞ!
――異世界は甘くないってことだな。今までが調子が良すぎたんだ
――『¥10000』これで何とかしてくれ神様!!こんなところで終わりなんて嫌だ!!
コメント欄も面白いことになっているな。
というか、スパチャとかあるんだ…お金はどこに行くんだ?
いろいろ気になるところだが…そろそろ潮時か。
スレイとシニャの方も不味そうだ。
「甘い!!」
「がはっ!?」
「副団長!?」
「どこ見てんだ!?ババア!」
「うがっ!?」
剣筋を読まれ、強烈な蹴りが鎧を大きく凹ませて鳩尾に突き刺さったスレイ。
余所見をして接近され、腹に岩のような鉄拳を食らったシニャ。
さらに言えば、他の護衛騎士も多対一の戦闘で苦しい状況にあり、打開は絶望的。
勝負は決したな。
私は空を飛んで俯瞰するのをやめて地に降り立つ。
そして、手を叩いて軽く魔力を放ち、全員の気を引いた。
「そこまで。全員止まれ」
私がそう口に出すと、一気に周囲の空気が張り詰める。
気配は消しているが、それはそうと私がただモノではないことは何となくわかるだろう。
全員が動きを止め、私に視線が集中する。
「ようやくお出ましか…自称お尋ね者さんよ」
そんな中で、唯一動けるのがハゴスだ。
まだ動けるがさっきのダメージが残っているスレイとシニャを無視し、私に向かってくる。
「一緒に居たと思ったが…どこに行ってやがった?」
「少し上に」
「はあ?」
どこに居たかと聞かれたら、それは『少し上』。
空中から戦況を俯瞰していたから、何も間違ってない。
――イルミーナさん!!!
――どこに行ってたんだこの人!?
――助かったのか?助かったって事でいいんだよな!?
――『¥2000』うおおおおおおおおおおおおお!!!
――『¥500』援軍きちゃぁぁぁぁぁあああああ!!!
――『¥1000』やっちゃってくださいイルミーナさん!あんたが頼りだ!!
チラッとコメントを見ると、私の登場にかなり沸き立っている。
スパチャも沢山来ていて……何と言うか、良いなコレ。
すごく気持ちいい。
「どこ見てんだ女ぁ!!」
「ふっ……」
承認欲求?か何かがものすごく満たされ、気分が良いところにハゴスが大剣を振り下ろす。
私はそれをひらりと躱し、ハゴスの側方に移動した。
そして、軽く脇腹を殴る。
「ふがあああっ!!?」
まるでノックでもしたかのような動きのパンチで、大げさなほど吹っ飛んでいくハゴス。
有象無象共は何が起こったのか全く理解できないだろう。
そして、この先理解する必要も時間も与えない。
「凍てつけ」
そう呟いた直後、全ての有象無象が氷の中に閉ざされる。
一瞬にして氷漬けにし、体温も一瞬で零度を下回った。
有無を言わせない即死の攻撃。
何をしたかと言えばノーモーションの氷魔法だ。
正確には、発動が早すぎてノーモーションにしか見えない氷魔法だが…
「……はっ?」
ヒロト君も何が起こったかわからず、頓狂な声を出して氷像となった有象無象を見つめている。
――????
――?????????????????
――え?
――なにこれ?
――何が起こってんのこれ?
――イルミーナさん今何かしたか?何にも見えなかったんだが…
――恐ろしく早い攻撃。誰も見えてないね…
コメントも大混乱。
もし私の動きが見えていても困るし、こっちの方がすごく気分がいい。
最高の気分で、起き上がって脇腹を抑えるハゴスの方へ歩く。
「くそっ!!なんなんだお前は!!?」
「昨晩言ったはずだけど?」
「んなこた知ってんだよ!!ああクソがっ!!俺様を舐めるんじゃねぇぇぇぇぇえええええ!!!」
雄たけびを上げ、飛び掛かってくるハゴス。
周囲から見れば、最高速度で走っている新幹線が突っ込んでくるような速度。
避けることすら困難な速さだが…私には静止画だ。
「遅い」
「ぐっはあああああああああ!!?」
一々付き合うのも面倒なので、私の方から距離を詰めて殴り飛ばす。
突っ込んでくる時の倍近い速度で吹っ飛んだハゴスは家屋の壁に激突し、その家屋を破壊して中へ消えて行った。
まあ、死なない程度に加減したから問題ないだろう。
パッと見では見えなくなったハゴスを放置し、私は飯沢班のところへ戻る。
そして、全員の怪我の状態を確認し一応治してあげることにした。
「これは…回復魔法!しかもこの精度は!?」
私が回復魔法を使ったことにかなり驚いているシニャ。
彼女らから見れば回復魔法は専門の人間が扱う技術。
他の魔法と並列で覚えるのは難易度が高く、攻撃魔法と回復魔法を実用的に使えるのはごく一部の人間のみ。
さぞかし驚いたことだろう。
まあ、そんなことはさておき…
「助けるのが遅くなって済まない。君たちの実力を知りたくて、少し見学させてもらった」
飯沢班の皆には頭を下げて謝っておく。
もう少し早く助けていれば、ケガをすることもなかっただろう。
けれど、それでは満足に観察できない。
だから、あえて見逃していた。
「君たちの実力と与えられた力はおおよそ把握できた。この先は私も色々と教えて――意外とタフだな?」
話の途中。
私は背後からの殺意に話を中断せざるを得なかった。
いくら手加減したとはいえ、まさかここまで動けるとは。
「今すぐ失せるなら見逃してやる。その気が無いのな―――」
振り返った私は言葉を失った。
こちらを睨むハゴスの手。
そこには……この世界にあるはずのないものが握られていたからだった。




