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【長編版】悪役令嬢は乙女ゲームの強制力から逃れたい  作者: 椰子ふみの
ヒロイン編

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従魔

「ブラン、聞いて! 私も浄化ができたの」


 ヴィオラは授業が終わると、真っ先にブランに報告した。


「おめでとう。ヴィオラなら絶対できると思ってた」


 ブランの言葉にヴィオラは頭をかいた。


「実はね。神聖力は結局、使えなかった。神聖力の一種かもしれないとミューラー先生は言うんだけど。それを言うなら腕力の一種」

「腕力?」

「力づくで呪われた物をつぶすと浄化されることがわかって。先生は新しい方法だと大喜びしてた」


 コレクション消失からも立ち直るほどの喜びだったかどうかは疑問だが。


「ヴィオラらしい」

「力づくってところがでしょ。でも、いいの。やっと、浄化ができたんだから、ちょっと問題のあるやり方でもいいことにする」

「問題って、何が問題なの?」

「うん、基本的に潰したり、壊したりするわけだから、生き物には使えない」


 すぐに気づいたことだった。呪われた人がいても、ヴィオラのやり方は使えない。

 潰してから、すぐに治癒魔法をかければ何とかなるだろうか。普段から、すぐに治癒魔法をかける癖があるし。

 ただ、人を潰せるかというと、そこまで、ひどいことをできる気がしない。

 ヴィオラは呪われた物や場所限定でがんばろうと心に決めた。


「それでも、いいなあ。俺はうまく行かなくて」

「あ、何か行き詰まってるんだよね。私が手伝えることある?」


 ブランが悩んでいることは人の姿を維持できないことだった。けれども、ヴィオラには成功してから報告したかった。


「いや、ドラゴンのことだから、人間には無理かな」

「そっか」


 ヴィオラの前でブランの元気がないのは珍しい。


「応援しているから。何か欲しいものがあったら言って。何か手伝いがいるなら、何でもするから」

「何でもする、なんて、気軽に言っては駄目ですよ。やろうと思えば、魔法で縛ることもできるんですからね」


 ブランは羽をパタパタ動かした。


「まあ、ヴィオラが学校の授業を受けている間も一緒にいたいかな。別に邪魔をするわけでもないのに、同席が禁止されているのは納得できなくて」

「そう、そうよね。魔王が復活するなら、戦力が強ければ強いほどいいはず。従魔も一緒に訓練したほうがいい。ミューラー先生、いや、ベネディクト先生に言ってみる」


 ヴィオラの予想通り、ベネディクトはすぐに要望を聞いてくれた。



「素晴らしい提案がありました。今日からは従魔も共に学び、聖獣への道を歩んでもらおうと思います」


 聖獣? 学んだからといって、聖獣になれるとはヴィオラには思えないけど、ベネディクトは本気らしい。


「みなさん、従魔を召喚してください。魔力消費が厳しくなったら、返していただいてけっこうです。複数の従魔と契約している方はどれか一頭でかまいません」


 初めての召喚は色々な手順が必要だが、絆が深くなると、従魔を呼ぶのは簡単だ。


 すぐに全員の従魔が現れた。

 アンの従魔は笛吹猫、ケイトの従魔は小夜啼鳥と音楽好きの二人らしい。

 トムの蛇は鱗が玉虫色に光っていて美しい。

 ライルが角兎という可愛らしい従魔なのは意外だ

 そして、ジョージの従魔は人の姿をしていた。少し痩せ気味の目つきの鋭い男性で茶色の髪と目をしている。


「バルトだ。グリフォンの人型に変身した者になる」


 ジョージの言葉にバルトは軽く頭を下げた。黙っていたが、ジョージの視線に気づくと、ボソリと「よろしく」とだけ言った。


「き、君、詳しく話を聞かせてくれるかね」


 ミューラー先生がまた、大興奮して、バルトに詰め寄った。


「グリフォンの姿にもすぐ戻ることができるんだよね。今、見せてくれないか」

「先生、教室では狭いので、グリフォンの姿を見せるのは別の機会にさせてください」


 ジョージが言うとミューラー先生は大きく息を吐いた。


「わかった。わかったよ」


 ミューラー先生が落ち着いたと思ったら、ブランがバルトに詰め寄っていた。


「あの、人型ってどうやって維持してるんですか?」


 ブランが顔周りを飛ぶので、バルトは鬱陶しそうだ。

 ヴィオラは自分が言い出した以上、従魔たちが授業のじゃまにならないように見張っておこうと思ったのに、まさか、ブランが一番問題児になるとは思わなかった。


「ブラン!」


 ヴィオラはむんずとブランを捕まえた。


「おとなしくしていなさい」


 普段なら、ヴィオラの言葉をすぐに聞くブランが暴れる。


「先生、みなさん、すみません」


 ヴィオラが謝ると、ジョージは優しく微笑んだ。


「バルトと話がしたいようなら、授業が終わった後、時間を作ろう。それでいいね」

「ありがとうございます」


 いつも、ジョージには嫌そうな態度を取るブランが珍しく丁寧に頭を下げた。それほど、グリフォンという存在が気になったのかとヴィオラは少しおかしかった。


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