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【長編版】悪役令嬢は乙女ゲームの強制力から逃れたい  作者: 椰子ふみの
ヒロイン編

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図書館

「お嬢様が図書館に行くなんて、天変地異の前触れかと思いましたよ」


 失礼なことを言うミヤをお供に今日はハーモニー学園の図書館に来ている。確かに自分から入ったことがない図書館に休みの日に来ることになるとは思わなかった。ただ、今のうちに魔王に対抗するためにできることが知りたい。


「知りたいことがたくさんあるから」

「誰か詳しい人に聞いた方が早くない? 俺たちドラゴンはみんなおばばに聞くんだ。何でも知っているから」


 ブランがパタパタとついてくる。


「うーん。何でも知っているって、そんな人はいないかな。賢者と呼ばれる人はいるけど、知識が魔法に偏っているイメージがある。歴史なら学園の先生とか、分野ごとに詳しい人はいるけど」

「不便だなあ」

「ブランもそのおばばさんに質問したことあるの?」

「あ、ああ。この間、ちょっとな」


 ブランの飛び方が乱れた。


「何、何を聞いたの? 動揺しちゃって。恥ずかしいこと?」


 追求するヴィオラにブランは聞こえないように小さく呟いた。


「お前のことなのに」


 図書館の受付にいたのはピーターだった。

「いらっしゃい」

「どうしたの?」

「休みの間中、寮にいるなら、休んでいる職員の分、働けってミューラー先生が」

「帰省しないんだ」

「トムに従うだけだから」

「大変ね。で、トムは?」

「中のどこかで寝てるんじゃないかな」

「見かけたら、ピーターを手伝うようにって言っておく」


 ピーターはあいまいな笑みを浮かべた。王子の従者というのは大変そうだ。

 ヴィオラは図書館の中に入ると、本の数に圧倒された。天井まである書棚が立ち並び、本がぎっしりと埋まっている。


「この中から探すのか」


 ヴィオラはため息をついた。


「内容を言っていただいたら、探してきますよ」

「俺も手伝う」

「じゃあ、ミヤは勇者の剣に関する本を探して。ブランは魔王に関する本をお願い」

「魔王? 何だ、それ?」


 ドラゴンの間では魔王という存在は知られていないのだろうか。


「そういうものが現れた伝説がないか探して」

「わかった」


 二人が探しに行くと、ヴィオラは神話の本を探し始めた。二人には話していない運命の女神について、情報が知りたい。

 パッと目につくのはカリーナ神の本ばかりだ。もっと、古い、忘れられたような神の本はどこにあるのだろう。

 あまり利用されていない奥の方だろうか。

 ウロウロしていると、部屋の隅に先が鉤のようになっている棒が立てかけられているのに気づいた。見上げると、天井に四角い区切りがあり、その区切りの真ん中に金属の輪がある。


「これ、もしかして」


 棒の先で金属の輪を引っ掛け、引っ張ると、四角い枠が開き、梯子が降りてきた。

 上に上がれるらしい。

 ヴィオラは梯子を登ってみた。登った先は少し天井が低いが下と同じように本棚が並んでいる。ただ、見るからに古く保存状態が悪そうだ。


「でも、誰か使っている感じ」


 埃はたまっていない。こまめに職員が掃除をしているのか、魔法で防護しているのか。


「そういう日常に使える魔法も覚えたいな」


 力押しばかりではダメだと騎士団長との手合わせで気づいたが、魔法もそうかもしれない。

 一冊の本を開けてみると、聞いたことのない神の話だった。生贄を捧げるとか書いてあるので、邪教だろう。

 生徒に見せたくない本をこの部屋に置いてあるのかもしれない。

 別の棚を見ると、もっと古い歴史書だった。本当かどうかわからない。カレイド王国が生まれる前の話。

 これなら、女神が出てくるかと思ったが、昔の国の争いしか出てこないようだ。

 奥へ奥へと進むとどんどん本が古くなるようだ。

 そして、一番奥まで来ると、ソファが置いてあり、そこに一人の少年が眠っていた。

 ヴィオラが近づいたことにも気づかず、ぐっすり眠っている少年は美しかった。美形のジョージ王太子よりもっと美しいかもしれない。

 あまりにも美しいので、人形かもしれないと思い、ヴィオラは手を伸ばして触ろうとした。

 その手首を掴まれたと思ったら、体が反転し、ソファに押し付けられていた。

 反撃しようとしてヴィオラは気づいた。自分を押し付けている少年の目の色は白。


「トム?」

「よくわかったね。いつもと違う顔なのに」

「だって、目の色が……」

「ああ、ここでは元の姿に戻っていたから」


 学園で普通の生徒として生活するには確かに偽装が必要だろう。元の顔が美しすぎる。

 なるほど、ここでトムがくつろぐ代償にピーターが図書館の受付をすることになったのか。


「休みなのに会えて嬉しいよ」


 顔が近い。


「あの、手首を離してもらえませんか」

「ああ、ごめん。不審者と思って、つい、捕まえてしまった」


 と言いながら、トムはヴィオラを押さえつけたままだ。


「あの、トム」

「ねえ、本当はこういう顔なんだけど、この顔どう思う」

「えっと、きれいだと思います」


 トムは笑うと、ヴィオラを放した。


「ヴィオラらしい」

「え?」

「この顔に惹かれて迫ってくる女がいくらでもいるんだ。小さい子から大人まで。ヴィオラは変わらないんだね」

「だって、もう友達だから」

「プロポーズした男にそんなことを言う?」


 トムが顔を押さえた。


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