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【長編版】悪役令嬢は乙女ゲームの強制力から逃れたい  作者: 椰子ふみの
ヒロイン編

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ノエル

「どうか、ノエルのパーティは私と一緒に過ごしてもらえませんか」


 ヴィオラの目の前に片膝をついて、手を差し出しているのは見たことがない人だった。生徒会の一員でもヴィオラはハーモニー学園の生徒全員を覚えているわけではない。アネモネ様は覚えているらしい。さすがだ。


「ごめんなさい」


 ヴィオラはとりあえず、断った。あっさりと諦めて帰る姿にミヤがぼそりと言う。


「十人目」

「ねえ、名前も知らない人とノエルの夜を過ごすわけないじゃない。なぜ、申し込んでくるのかなあ」


 ヴィオラが無理をやめ、マイペースで生活しているうちに年末になってしまった。

 年末といえば、ノエルの祭りだ。家族と一緒に過ごすのが普通だが、独身の男女にとっては、一週間続くノエルの最初の日の前の晩に一緒に過ごすとその相手と幸せな家庭を築くことができると言われている。

 年末年始の休みには自分の家に戻る生徒が多いので、ノエルの日から学園は休み。前の晩はダンスパーティが開かれるので、そのパーティに出る時のパートナー探しで生徒たちは大騒ぎだ。

 うーん。さすが、乙女ゲーム仕様だ。


「お嬢様、自分が有名人だという自覚を持ってください。婚約者がまだ、決まっていないこともみんな知っていますから」

「だからってねえ。婚約者が決まっていない、つまり、恋愛に興味がないとか、本人か家に問題があるとか思わないのかなあ」

「父親が一番いいところに嫁がせようと選り好みしているという噂もあります」

「ないない。父様は私が結婚しないって言ったら、大喜びでずっとそばにいたらいいって言うタイプだもの」

「でも、お嬢様はいつか、結婚する気はあるんですよね」

「うん。今は考えられないけど、いつかね」


 前世で結婚した記憶どころか、恋愛した記憶もないから、今世ではいちゃいちゃしてみたい。


「望めば、いつでも、可能ですのに」


 ミヤはわざとらしいため息をついた。


「どっちにしても、イベントがある時は生徒会の仕事があるからね」


 武闘会や音楽祭と違って、公式には来賓がいないので、気楽だ。ただ、音楽や食事の手配、ヴィオラが呪われてからは警備の手配もある。


「カレーラス楽士長が帰るまで、なかなか、生徒会には顔を出せなかったから、ノエルパーティは頑張るんだ」

「とりあえず、ドレスは用意しておきますね」

「えー、制服でいいと思うけど」

「用意しておきます」


 ミヤの圧力が強かったので、ヴィオラはただ、うなずいた。



 そして、ノエルの夜。

 新しい曲を要望されて、ヴィオラは「クリスマスソング」を教えたかったが、うまく伝えることができず、真っ赤なお鼻の曲を教えてしまった。そのせいで、定番のダンス曲の間に延々と流れている。


「まあ、楽しそうだからいいか」


 ヴィオラは鶏肉をつまんだ。前世の記憶のせいで何となく、鶏肉が食べたくなる。

 準備は大変だったが、当日は生徒会のメンバーもパーティを楽しめるようにと仕事はしなくてもいいようになっていた。


「それにしても、ミヤが準備してくれていて、よかった」


 自分のドレスを眺める。ふわふわとしたピンクのドレスは可愛らしすぎて、ちょっと恥ずかしいが、コルセットなしでも着れる上、食べ過ぎても、お腹が目立たないようになっている。


「おかげでややこしいところからのは断れたし」


 そう、お礼と言って、プレステル宰相や騎士団長からドレスを贈りたいという申し出があったのだが、もう、準備しているからと断ることができた。

 お礼であっても、受け取ったら、どんな噂を流されるかわかったものじゃない。


「飲み物はいかがですか?」


 せっせと食べていると、給仕が銀のトレーを差し出してきた。


「甘くないのはどれですか?」


 焼いた鶏肉にオレンジジュースは合わない気がする。


「こちらがさっぱりとしたお味になっております」


 透明の泡が浮かぶジュースを受け取った。一口飲むと、レモンっぽい味で確かにさっぱりする。


「ありがとう。美味しいわ」

「もう一杯、置いておきますね」


 給仕はテーブルにグラスを置くと去って行った。

 しばらくすると、美少年が声をかけてきた。少し年上のようだが、胸元を開けて、チャラついてみえる。


「美しい方、一曲、踊っていただけませんか」


 ヴィオラは吹き出しそうになった。笑いを我慢していると、相手はムッとした顔になった。


「ごめん。先に約束しているんだ」


 ジョージ王太子が現れると、相手は焦って、ペコペコしながら去って行った。


「踊る気がないのにそんな可愛い姿なんて反則だよ」

「え、踊りますよ。それより、これ、すごく美味しいんです。飲んでみてください」


 先ほどのグラスを差しだすと、ジョージは苦い顔になった。


「誰に勧められた? これはお酒だ」

「えー、給仕の人が。それより、踊りましょ」


 ジョージの手を引っ張ったところまでしか、ヴィオラの記憶にないが、後でアネモネ様に聞いたところによると、それから、全ての曲が終わるまで、パートナーを変えて、踊りまくったらしい。


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