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【長編版】悪役令嬢は乙女ゲームの強制力から逃れたい  作者: 椰子ふみの
ヒロイン編

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59/63

休み

「一人で世界を救えると思うなよ」


教室に行こうと寮を出たところで、いきなり、ブランにそんなことを言われ、ヴィオラはドキリとした。


「何、それ? 世界を救うって」


 ヒロインとして、世界を救うつもりでいるのがバレたのだろうか。


「深刻な顔して、やたら、みんなを鍛えたかと思ったら、今度は治癒魔法? 休みの日も出かけてばかりでのんびりする時なんて、ないじゃないか」


 ブランは従魔でもあるので、主人の体調に敏感なのかなとヴィオラは思った。


「おかしいよね。こんなつもりじゃなかったんだけど」


 もちろん、世界を救うつもりだが、ゆっくり進めるつもりだった。時間には余裕があると思ってたし、女神様は恋愛要素を入れる時間を用意していそうだし。

 それなのに、なぜか、休みがない。


「ねえ、今日、学校、サボらない?」


 ブランの言葉にヴィオラは慌てて、周りを見た。少なくとも、一番怖いミヤは近くにいない。


「そんな悪いこと、言っちゃダメ」

「でも、子供の頃、一緒に色々悪いことしたよね」


 山をちょっと、削ったりしちゃったけど、授業をサボる方が悪いことのような気がする。


「今から、どこか削ってこようかな」


 ブランも同じことを思い出しているらしい。


「もう、私の責任になるんだから、やめてよね」


 睨みつけると、ブランはヴィオラの手が届かない高さまで浮かび上がった。


「じゃあ、止めてみな」


 ブランが飛び出す。

 ヴィオラは慌てて捕まえようと飛び上がった。

 ブランは飛行速度を上げて、かわす。ヴィオラも速度を上げた。


「待ちなさい!」


 急な方向転換や速度変更でなかなか捕まえることができない。


「体、鈍ったんじゃない」


 ブランが煽ってくる。


「ほ、本気で行くから」


 ヴィオラは真剣に追いかけた。

 ブランに負けない速度を! 魔法をぶつけたら早いかもしれないけど、自分がそこらじゅうを削る犯人になってしまうから、速度特化にだけ使う。

 何度か、ブランの体に手が触れた。そして。


「捕まえた!」

「ああ、俺はヴィオラから逃げられないよ」


 捕まったのに何だか、ブランは嬉しそうだ。

 ヴィオラはあたりを見回して、自分が学園を飛び出して、裏山に来ていることに気づいた。以前、使っていた場所だ。燃やしたりしてしまった場所なのにいつの間にか、色々な花が咲き乱れる場所になっている。


「そうか、焼畑農業ってあるもんね」


 ヴィオラは納得した。


「きれいだろ」

「うん。もしかして、花を見せるためにわざとここで捕まったの?」

「い、いや、偶然だよ」

「素敵な偶然ね」


 ヴィオラはブランを抱き止めたまま、花畑に腰を下ろした。


「うん、ブランの言う通り、サボっちゃおう」

「そうそう」

「その代わり、ミヤにバレたら、一緒に怒られてね」

「もちろん」

「久しぶりに一緒に遊んだら、楽しかったー」

「俺も。グラント領ではよく追いかけっこしたな」

「うん」


 花畑のまわりの木は葉が赤く染まったものもある。


「もう、秋なんだね」


そう言うと、ヴィオラは伸びをした。


「何だか、眠くなってきた」

「寝たらいい。見張っておいてやるから」

「ありがとう」


しばらくすると、ヴィオラは寝息を立て始めた。

その顔をじっと眺めながら、ブランは集中した。前足のゴツゴツした爪が少しずつ、短く丸くなる。皮膚は滑らかに褐色の肌のようになっていく。その少し人に近づいた手でヴィオラを撫でようとして、ブランは手を止めた。


「まだだ。これじゃあ、まだ、駄目だ」


 人に変化し切れないブランは元の姿に戻ると、ただ、ヴィオラを見守り続けた。


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