表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
異世界転生して人外娘と恋がしたい!  作者: こま
第三章 囁く狼
92/300

鬼の飯

「まぁもうやめたいよね。こういう展開は」


仰向けに寝かされた状態でヒロは笑いながらセラに言うが、セラの顔は心配よりも怒りが強い。


狼によって操られていた者たちは正気を取り戻し、今はリロイとアストリッドがヒロの回復をしてくれている。


オーガ達は怪我人を屋敷の庭へと運んできていて、ヒロの怪我の回復が終わり次第他の者たちの回復をする予定だ。


ちなみに屋敷の火災はセラがホエールキャノンで建物ごと吹き飛ばした。


「はい、終わったよ」


「二人ともありがとう。じゃぁオーガ達の方頼んでいいかな」


「大丈夫。まかせて」


リロイが立ち上がるのを人のサイズに戻ったアストリッドが手伝ってあげる。


その後、二人は集められた怪我人の元へ歩いていった。


「で、どうするの?」


「なにが?」


「狼の事!」


回復を行っている途中に狼の話を仲間たちに話したが、解決策や対抗策はなにも考えていない。


ヒロはほぼ魔力が残っていないし、ケティも同様に切り札が残っていない。


とりあえずは一度しっかりと休んで状況の整理と体勢を整えたい。


狼のあの能力は今のところヒロしか防ぐ手がない。


セイレーンのレインが解除することが出来るようだが、まだレインの声は戻っていない。


仮に戻っていたとしても狼側にレインを無力化することが出来る限り対策にはならないだろう。


「とりあえずお腹空いてない?俺の荷物の中に食べるものが入ってるからとってきてよ」


「ううん、まだ大丈夫だよ。アストリッドだって食べてないし」


「いいから食べときな。あと、お風呂も用意してくれるっていうからあとで入ってきな」


セラの頭をなでてやるとほんのりべとべとする。


この世界の人は毎日風呂に入る習慣は無いが、ヒロとしては出来る限り毎日お風呂に入ってほしいし自分も入りたい。


だからこそ風呂付の家に住んでいるのだが、やはりこうやって家を離れるとそうはいかない。


「ほら、おめぇさん達飯持ってきたから食いな」


オーガ達の怪我の治癒が終わりセラが風呂から戻ってきたころ、赤鬼アンキと青鬼ウンキが大きなおひつと味噌汁やおかずの入った鍋を持ってやって来た。


辺りは暗くなったので、ヒロたちは残った屋敷の一室を借りている。


アンキがおひつの蓋を開けると真っ白な湯気と共にお米のいい香りが広がる。


それを茶碗に山盛りによそい一人ずつ手渡し、その横でウンキが味噌汁を配る。


おかずは漬物やおひたしで、肉は味噌汁に入っている小魚位だがやたらとごはんが進む。


米の品種は何だろうか。


粘り気があるわけではないが、やたらと甘い。


漬物のしょっぱさとあいまって無限に食べれそうな気になる。


ガツガツと口にかきこみ味噌汁で流し込む。


そして口の中がリセットされてまた漬物、米の順に食べる。


全員お腹が空いていたのか、仲間たちも同じようなペースで食事をしていた。


セラもかなりのペースで食べているが、マヨネーズとケチャップを大量にかけて何かおぞましいものになっている。


「そういえばヒロさん。なんで僕が戦う時はヒントばかりで直接的な指示をしてくれないの?」


リロイが箸を止めてヒロに疑問を投げかける。


「ヒントっていうか、リロイ以外も直接的な指示を出すことって殆どないよ」


「そうなの?でも、直接言ってくれた方が僕は戦いやすいんだけどな」


「それじゃだめなんだよ。自分で考えなきゃ」


「なんで?僕は指示があった方が分かりやすくていいと思うよ」


「じゃぁちょっと見てて、ケティ」


特にケティの方を見るわけでもなく声をかけるとケティは食べかけの漬物を一つ指ではじき、その漬物はリロイの口の中へ飛んでいった。


漬物はリロイの喉に直撃し「げほっげほっ」と苦しそうに咳をする。


それを見て人間サイズになったアストリッドがリロイの背中をさすって「はい」とお茶を手元に持って行ってやった。


「なにするんだよ」


「こういう事だよ」


急なことにリロイは戸惑って言うようだが、言いたいことが見事におこった。


だが、リロイはまだ理解していないようで「どういうことなの?」と首をかしげた。


「今、俺はケティの名前を呼んだだけだけどケティはちゃんと俺のしてほしい事はしてくれたよね」


「そうなの?適当にやっただけじゃ」


「なら、喉に詰まって苦しくなった時アストリッドは何をしてくれた?」


「僕の背中をさすってお茶をくれたよ」


「それは指示したの?」


「え、違うよ。アストリッドが僕の為にしてくれたんだ」


「つまりはこういう事よ」


実際に実演してみせたのだが、やはりリロイはまだピンと来ていないようだ。


「アストリッドやケティは仲間がしてほしい事を自分で考えて行動してくれた。これって戦いのときも必要なんじゃないかな?確かにうちは事前に戦い方を相談してある程度のコンビネーションは考えてあるけど、その全てが毎回の戦闘で使えるわけじゃないでしょ。オグは名前を呼んだだけで一番いいタゲ取りをしてくれるし、セラは状況に合わせて魔法を自分で選んでる。ケティは早さを生かして、ちぐはぐだったり行動の隙間をサポートしてくれる。これって俺が直接指示をすることもできるけど、自分で考えてくれてるからこそタイムラグが減ってるし、いざという時も頼りになるんだよ」


「なら僕はどうしたらいいの?」


「今日やってたことみたいにすればいいよ。オーガ達と綺麗に連携してたじゃない。あれはリロイがまとめたんだろ」


「そうだけどなんでわかったの?」


「それは今は秘密にしておこうかな」


「え~」


すこし意地悪過ぎたのかリロイは頭を抱えている。


まぁ仕方がない。


リロイは見た目はスキンヘッドのオッサンだが、仲間の中では一番若い。


ドワーフはある程度成長した姿で卵から生まれるので忘れがちだが、リロイはまだ7歳だ。


なのでまだ子供のような純粋な喋り方をする。


ちなみにセラには話していないが、お姉さんをしているアストリッドも9歳でセラより若かったりする。


ケティも50歳を超えていることを考えるとうちのパーティは見た目だと本当にわかりずらい。


「は~食べた~」


「お腹いっぱい」


「ニャー、ニャーはもう一杯食べるニャ」


「おめぇら見た目以上によく食べるなぁ」


食事が終わって座ったまま体を伸ばすと、ウンキがお茶を入れてくれる。


「そんでお前さんたちこれからどうするんだ?ウィズの救出は手伝ってくれるのか?」


「一応手伝うつもりです。件の狼の能力がきかないのは自分だけみたいだし、このままほっといたらオーガだけでなく鬼の皆さんの方も心配でしょう。こんな美味い米が食べられなくなるのは嫌だし」


「そりゃよかった」


「それで、狼はどうやって倒すの?」


「それはまだ考え中。とりあえず魔力回復が先かな」


「そっか。私も戦えるかな?」


「セラが敵側にまわったら上級魔法が危険すぎるから戦うとしても連れて行かないよ」


オーガの族長たちにウィズの件をどうするか訊きたいが、まだ忙しそうなのでこれも明日に回そう。


とにかく今はまず回復が先だ。


リロイとアストリッドもオーガ達の回復で魔力がすっからかんだろうし慌てたところで何も始まらない。


「そうだ。ケティそろそろ回収してきたテープレコーダーを確認しよう」


「ニャ、そうだったニャ。」


テープレコーダーを取り出して中のテープを取り出してみる。


テープは巻き戻されていて頭から再生されるようになっている。


やはり録音して再生ボタンを押したら録音した場所から再生されるようにしているようだ。


続いて電池カバーを外して中の電池を確認する。


単三電池が2本。


恐らくは電池が切れていると思うので、掌でコロコロとテープレコーダーに入れたまま転がす。


こうするとリモコンやなんかは一時的に動いたりする。


テープをセットして電池カバーを閉めて再生ボタンを押す。


テープレコーダーはジジっと音を一瞬だけだして動かなかった。


「ニャニャ、何も起きないのかニャ?」


「電池ってのが足りないんだよ」


「電池?」


「電気っていう魔力みたいなものを蓄えておく部分があるんだけど、その電気が無くなってるみたいだ」


「なら魔力の補充で動くんじゃないのかニャ?」


「電気を充電、つまりは補充する方法が分からないんだ。そうだ、アストリッドの音が出る仕組みってどういう風になっているんだ?」


「あれはリロイが私がもらった機械を再現しようとして作った物なの」


「機械って?」


「今は持ってきていないけど、白と銀色の機械っていうものよ。後ろに食べかけのリンゴの模様が書いてあるのよ」


「え?」


白と銀色の機械にリンゴのマーク・・・。


ヒロの頭にはあるものが浮かんだ。


元居た世界のデジタルオーディオプレーヤーだ。


でもなんでそんなものをアストリッドが持っているのだろう。


訊こうと思ったが、突如金を叩く音が聞こえてタイミングを失った。


「あの音は?」


「緊急時のものです。外で何か起きたようです」


「なら全員荷物まとめて。もし戦うことになったら逃げるから。あとレインこれ持ってて」


レインに荷袋を渡してヒロはカラスの後についていく。


仲間たちも荷物をまとめてその後に続いた。


外に出るとまた村の一部から炎が上がっている。


だが、よく見るとその炎は建物が燃えているわけではなくある生き物が纏っている炎だ。


赤く燃える炎を纏ったその生き物はまるで猫又の状態のケティに似ている。


二本の尻尾をもつネコ科動物。


だが、ケティと違って猫ではなく虎の姿をしている。


サイズもケティと同じ5メートルはある。


「ケティの親戚?」


「馬鹿言わないでほしいニャ」


オーガ達は虎の猫又と戦っているようだが、かなり劣勢のようだ。


ヒロたちも助けに入りたいが今は魔力がなく戦えるものも少ない。


魔力が残っていてまともに戦えるのはセラ、カラスぐらいしかいない。


「鬼の二人は戦えます?」


「戦いたいが武器が無くての。素手じゃ無理じゃ」


「ならどうしようか」


「ヒロ様、許可を頂ければ私が」


「一人じゃ無理でしょ」


「ですが、ヒロ様たちが逃げる時間は稼げます」


カラスは元々ウィズの直属の部下なのだが、ウィズがヒロの指示に従うように命令してからずっと仲間のように行動を共にしてくれている。


ヒロの頼みはとにかくセラを護ることなので、どうやら戦って勝つことは考えておらず逃がすつもりのようだ。


それはどういうことかというと、つまりは今のオーガの村にはあの虎の猫又を倒せるだけの戦力がないということになる。


目を凝らし虎の猫又と戦っているオーガ達をよく見ると、見知ったオーガ達だ。


特にわかりやすいのは一人だけずば抜けて身長が高く、金棒を振り回している女性のオーガ。


一日行動を共にしたミカゲに違いない。


助けないと。


「リロイ、アストリッドはここで待機。戦いが終わるまで魔力の温存を。セラは」


「大丈夫。わかってるから」


「カラスさんはセラの護衛を第一に隙が出来たら攻撃を」


「承知」


「最後に俺は・・・」


ヒロが左手の小盾を外してリロイの盾を借りる。


オグのと違ってリロイの盾は大きいがヒロでも持つことが出来る。


と言っても片手では無理なので両手でしっかりと持たなければいけないが。


「俺が盾をやる。魔力残ってないからみんなしっかりフォローしてくれよ」

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ