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異世界転生して人外娘と恋がしたい!  作者: こま
第三章 囁く狼
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鎧狸

「化け猫!」


気を失っていたオーガのタップルが目を覚ますと同時に刀を抜き、猫又の姿のケティへ威嚇した。


大猿は倒したがまだ小さいサルがいるかもしれない。


それにオーガ達の治癒が完全に済むまではケティとヒロで4人を護らなければいけないのでケティをもとの姿に戻す訳にもいかなかった。


「大丈夫だよタップル。ほら、いいこいいこ」


ウィズはもう慣れたようでケティの喉のあたりを撫でる。


ケティも満更じゃないようでゴロゴロと喉を鳴らし答えた。


「猫又と言えば水車村を滅ぼした張本人だろ!?それがなぜここにいる?」


「そうなのかケティ?」


ケティがブンブンと大きな顔を横に振る。


「違うらしいけど」


「しかし族長の話では猫又が水車村を滅ぼしたと」


タップルだけは動揺しているようだがケティがだんだんと元の姿に戻っていき、どこにしまっていたのか服と腕輪が出てきて「ニャーがやったわけじゃないニャ。ニャーもあの村に住んでいたんだニャ」と装備しながら伝えた。


そういえばケティが猫又になったのは30年も前になる。


タップル達は生まれていないので実際にその光景を見たわけではないのだろう。


そうなると話を聞けるとしたらタップル達の親かその親の世代になるのか。


とりあえずタップルの警戒が解けたらしく刀を収めたので次の事を考えなければならない。


辺りは暗くなり始めている。


このままセラ達を探して合流するのかいったん戻るのか決めなければならない。


「とりあえず全員の魔力残量を確認しよう。」そう言って能力石をタップルに向かって投げて渡す。


「俺の魔力はさっきの大猿に使ったので全部で後は今発動している跳躍強化の数回の跳躍を使ったらなくなる。ケティ、リロイは?」


「ニャーはまだまだ全然残っているニャ」


「僕は今の回復でほぼ使い切ったよ」


ヒロたちが答えている間にタップル達も能力石をまわして各々の魔力量を確認する。


「俺はもう魔力は残っていない。上位魔法の疾風怒濤は馬鹿みたいに魔力を喰うからな」


「私とペアーズはまだまだ大丈夫だよ!」とウィズはペア―ズの魔力量を覗き込んで二人分伝えると能力石を投げ返してきた。


とりあえず考えるふりをしてみるがケティは気付いているようで頷いて返してくれた。


「よし、じゃぁケティを残して俺たちはオーガの村へ向かおう」


「ちょ、ちょっと待ってヒロさん」


案の定リロイがヒロの提案に慌てて反応する。


「アストリッドを探しに行きたいんだよね」


「もちろんだよ。ヒロさんだってセラちゃんを探しに行きたいよね」


「魔力の無い俺たちが探しに行って無地でいられると思うか」


「それは……」そう言ってリロイが大槌グラントを握る。


確かにリロイは魔力を使わなくてもそこそこ戦えるが、あのサルたちに囲まれたら一人ではどうしようもないだろう。


仲間がいれば何とかなるかもしれないが回復の居ない状態で進むのはリロイとしても気が引けるはずだ。


魔力の残っているウィズとペアーズも残していきたいが、ケティは一人の方が隠密性は高いだろうしヒロたちがオーガの村に着くまでに戦闘になる可能性だってある。


それにケティが聞き取った川に落ちた誰かは何人かと言っていた。


つまりセラとカラス、あるいは人間サイズになったアストリッドが川に落ちたということだ。


川の下流に行けば一旦は水車村から離れることが出来る。


明日になって全員の魔力が回復してからまた船で川を下れば問題ないだろう。


アストリッドが無事なら空を飛んでオーガの村に助けを呼びに来るだろうし、来ないならセラと一緒の可能性が高いと伝えるとリロイも納得してくれて、ヒロたちはケティを残してオーガの村へ行くことになった。


日は完全に落ちて当たりは真っ暗だ。


今はウィズが召喚した炎の塊を明かりに進んでいる。


「見えた!あそこがオーガの村だよ」


ウィズが示した先にうっすらと明かりが見える。


あれからどのくらい歩いただろうか。


跳躍強化で跳んでしまえばすぐだっただろうが歩くとなるとかなりの時間が掛かる。


さらに今回は索敵スキルを持ったものがいないので余計に時間が掛かった。


ケティは今頃セラを見つけてくれているのだろうか。


同じように恋人であるアストリッドの事を考えていたのかリロイの足が止まる。


「リロイ、アストリッドの事は心配だけど今日はしっかり回復に専念して明日の朝迎えに行こう」


そう言ってリロイの肩をポンと叩いたがどうやら違うようだ。


「あの炎ってなんで青いのかな?」


そう言ってリロイが顎で先を示す。


そこを見ると確かに炎が浮いている。


ウィズが召喚した魔法の炎は通常の炎と同じ色だが、あそこに浮いている炎の色は青というより紫色だ。


「ウィズ」


タップルは気付いていたようで既に剣を抜いている。


その横でペアーズが鞘に納めた状態で刀を構え魔力で槍の形に変えている。


「あれは?」


「鎧狸だ」


「鎧狸?」


目を細めてよく見ると炎の横に確かに何かがいる気がする。


だが、姿を確認するよりも先にポンッ、ポンッと小鼓を叩くような音が聞こえる。


その音に合わせてポンッ、ポンッといろんな方向からさらに音が聞こえ紫色の炎がいくつも現れる。


全部でいくつだ?


5、6?


だが数える途中に見えた奴らの一人の姿に数えるのをやめて凝視する。


鎧狸はその名の通り鎧を着た狸でなぜか大きく出た腹の部分だけ鎧が無くなっている。


「10匹ってところか。ウィズ」


ペアーズがウィズに合図して鎧狸に突っ込んでいく。


それに合わせてウィズが新たに炎を二つ召喚しそれをペアーズの背中にくっつけた。


タップルは刀を構えただけで動こうとしていないので、どうやら魔力がないので無理はしないと言う事だろうか。


ペアーズが一番近い鎧狸に槍で一撃を加える。


鎧の付いていない腹の部分に狙った一撃だったが、鎧狸の腹が一瞬青白く光ったと思ったら槍の攻撃をはじき返した。


そのタイミングでポンッとまた別の鎧狸から音がする。


どうやらあの音は腹を叩いているようだ。


「タップル、やつらの事を簡単に教えてくれ」


「あいつらは単体だと弱いが仲間同士で魔法を使って援護し合うんだ。今のは3,4匹の鎧狸が同時にあいつに防御壁を張ったんだ。」


「ならあいつらを倒す方法は」


「同時に複数を攻撃するか、あの防御を貫通するだけの一撃を叩き込むしかない」


「それって今のメンバーじゃ無理じゃないか?」


そう言っている間にウィズが全員の背中に炎を召喚し、その明かりで辺りがかなり明るくなる。


どうやら全員でバラバラに戦わないといけないようだ。


リロイとタップルはお互いに近い二匹を攻撃しに行った。


どうやら何かあった時にリロイを盾に戦うのだろう。


あいつら今朝方はそんな打ち合わせしていなかったのに無意識でやっているのだろうか。


とりあえず今は様子を見るほうがいいかもしれない。


リロイとタップルがほぼ同じタイミングで別々の鎧狸に攻撃する。


それに合わせて恐らくペアーズも攻撃を仕掛けた。


だが、ポンッとまた小鼓のような音と共に3人の攻撃が防がれる。


残りの7匹が合わせて障壁を張ったのだ。


これはかなり厄介だ。


ウィズの火力は分からないがヒロは小刀しかもっていない。


その小さな刀で傷を与えることはできるのだろうか。


背負っていたクロスボウに矢をかけ狙いを定める。


暗闇でクロスボウを使うのは危険なので使うつもりはなかったが、自分たちが囲まれているのであれば仲間に当たることはないだろう。


リロイとタップルがまた攻撃を仕掛ける。


今度はウィズも攻撃に参加するようだ。


「だぁぁああああ」と刀を振るうタップルの声に合わせて全員が別々の鎧狸に攻撃を仕掛ける。


すると不思議なことが起こった。


ポンッという音と共に障壁が発生しそれぞれの攻撃が弾かれたのだが一人だけ攻撃が防がれなかったのだ。


「ぎぇぇえええ」と矢が突き刺さった鎧狸が苦しそうな声を上げる。


それを機にポンッポンッと鎧狸たちが一斉に腹を叩き始めるが今までより明らかに音が大きい。


そして段々とテンポが速くなってきている。


「やばい、かわすのに集中しろ」


タップルがそう言った瞬間に辺りが一気に明るくなる。


明るくなると言っても辺りは紫色だ。


各鎧狸のまわりに紫色の大きな炎の塊が現れヒロたちに向かって一斉に放たれた。

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