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異世界転生して人外娘と恋がしたい!  作者: こま
第三章 囁く狼
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巨大猿

リロイの後ろを除いて辺り一帯はクレーターの様になにも無くなっていた。


このクレーターは巨大なサルを中心に半径50メートルほどのサイズで、やつと一緒にいたサルたちは全員どこかへ吹き飛んだようだ。


「耐えれた……」


仲間全員を散り散りにした大猿の攻撃を防げたことに驚きと安堵で声が漏れる。


恐らく一人では耐えられなかっただろう。


今、リロイの後ろには3人のオーガが共に体を支えてくれていた。


「みんな、戦うなら盾役は僕に任せて」


リロイの言葉にオーガ達は隣に並び武器を構えることで答える。


4人力を合わせて大猿をここで倒す。


もし逃げると言われていれば足の遅いリロイは一人でここに残ることを選んでいただろう。


盾に宿った魔力が弱まっていく。


どうやらシールドオブエンパイアの効果時間が切れようとしているようだ。


リロイの魔力量では日に三回の発動が限界だ。


オーガ達の回復に魔力を使ったことも考えると、あと二回発動できるかどうか分からない。


だからこそ次の30秒で決めるしかないのだ。


大猿がゴリラの様に左腕を使ってこちらに突進してくる。


右腕の刀を振り下ろしてくるのか横振りしてくるのかギリギリで見極めなければいけない。


横振りなら皆リロイの後ろに下がればいいが振り下ろしなら味方の居ない方向にいなさなければならない。


大猿が刀を振り上げる。


きっと振り下ろしだ。


「主よ、光と加護を我らに――シールドオブエンパイア!」


二度目のシールドオブエンパイアを発動する。


青白い光がリロイの盾を包み込み紋章のようなものが浮かび上がる。


初めの一撃で大猿の攻撃の威力は確認済みだ。


リロイの力では完全に盾で受け止めることはできない。


なのでオグの様に力をそらし流すしかない。


よそ見するわけにはいかないので、感覚で自身の左側にいるウィズとの距離を測る。


振り下ろされた刀を盾で受け左側へと力を流す。


そのタイミングでウィズの方に視界を向けると理解していたようでウィズは左に大きく移動していた。


大猿の刀が地面を抉る。


そのタイミングで大槌グラントを振るって大猿の指を攻撃する。


オーガ達もそれに合わせて左右から挟み撃ちを仕掛ける。


だが、大猿は一度見てわかっていたようで刀から手を放して後ろに跳ぶと両腕でオーガ達を迎撃する。


左手で地面を掴みタップルに投げつけ、その隙に右腕でウィズを殴りつける。


そのまま前転したと思ったら起き上がりに向きを変えペアーズに体当たりを仕掛けた。


咄嗟の事で次にどうしたらいいか分からない。


だが、ウィズの背に出現していた炎の塊が大猿に飛んでいき顔に直撃した。


突然の攻撃で大猿は「ぐぎぁぁぁあああ」と声を上げ、顔を抑えながら何メートルも後ろにジャンプした。


これで考える時間が少しできた。


オグならこいつを相手にどう立ち回るのだろう。


相手の注意をひくプロボーグがあるので今みたいなタイミングはしっかりと対応するのだろうか。


だとしたら今のリロイではどうしようもない。


しかし、オグが居ないのにヒロは今回の依頼を引き受けた。


しかも戦闘になる可能性が高い水車村への調査も引き受けた。


それはいったいなんでなんだろう。


オーガが強いと思ったから?それともケティがいるからだろうか。


次の攻撃に備えて前に出る。


オーガ達も先ほどと同じようにリロイの横へと並んだ。


攻撃をモロに受けているウィズとペアーズの動きが少しぎこちない。


次に攻撃を受ければ攻撃に参加するのは不可能になるかもしれない。


シールドオブエンパイアもあと一回発動するか分からないので次の攻撃で仕留めたい。


大猿が冷静さを取り戻しこちらに突進してくる。


右手に武器は持っていないので素手での攻撃だ。


もしかしたら地面を掴んで投げてくるかもしれない。


恐らくやつの利き腕である右手に集中する。


だが、大猿は途中でおおきくジャンプしてこちらに渾身の拳を振り下ろそうとした。


良かった。


勇逸何とか出来る攻撃かもしれない。


「主よ、光と加護を我らに――サンダーボルト」


グラントから手を放し右手から稲妻を発生させる。


稲妻は大猿に直撃し、大猿は痺れて拳を振るうことが出来ずそのまま突っ込んできた。


それを盾で受け止める。


大猿がリロイに覆いかぶさるような状態になってしまったが、これでいい。


この状態でオーガ達が攻撃してくれるはずだ。


しかし大猿が攻撃されることはなかった。


痺れが無くなったのか大猿がジャンプして自身の刀まで飛ぶと拾い上げ「ぐぉぉぉぉおおお」と威嚇した。


何が起きたのかわからずオーク達の方を見るとウィズの左肩辺りに刀が刺さっている。


どうやら通常サイズのサルか戻って来たのか、それとも援軍か分からないが現れえてオーガ達に投げつけたようだ。


タップルとペアーズ側には刀を持ったサルが4匹、何も持たないサルが1匹いて二人はそれに応戦している。


「疾風怒濤」


タップルの刀身を延長するように風が纏い、右腕にその効果時間を現す緑色の輪が出来る。


どうやら一気にサルを蹴散らすようだ。


大猿がこちらに突進し、刀を振るう。


それを盾で受けようとするが、リロイの盾にさっきまであった青白い魔力はない。


シールドオブエンパイアの効果が切れたようだ。


ガキンと鈍い音がして刀と盾がぶつかり、その衝撃でリロイがバランスを崩して数歩下がる。


そこにまた刀を振り下ろされあっという間に尻もちをつかされた。


まずい。


最後の一撃を大猿が振り下ろそうとすると炎の塊が大猿目掛け飛んできて、それを嫌がるように大猿は大きく後ろに跳んだ。


「私の傷を治して」


声をする方に視線を向けるとウィズが手を差し伸べてくれていた。


その手を借りて立ち上がるとサルたちを倒したのかタップルとペアーズが前に出て大猿に向かっていく。


だが、タップルの刀に疾風怒濤の効果である風はなくなっている。


どうやら彼も魔力切れのようだ。


疾風怒濤は風の上位魔法に当たるスキルで魔力消費がとんでもなく高い。


むしろ一日に二回も発動させたタップルは魔力量は多いのかもしれない。


ウィズの傷を見ると肩にかなり深い傷を負っている。


直ぐに回復させたいが、まずは二人が時間を稼げるか様子をみなければいけない。


タップルとペアーズが交互に攻撃し大猿がこちらに来ないようにしているようだが、二人は盾を持っていないので攻撃をギリギリかわしている。


あんな状態で時間を稼げるのだろうか。


それでもやるだけの事はやろう。


ウィズの傷口に手をかざし回復の魔法を発動させようとした時だ。


タップルが振り回した大猿の左腕に直撃する。


そのまま吹き飛ばされると木に直撃し、木の幹は折れタップルは動かなくなった。


それを見たからかペアーズが魔力によって槍の形になった刀を投げつける。


槍は見事に大猿の腹に突き刺さり、ペアーズが引き抜く動作をすると槍は魔力を失って刀に戻りペアーズの手元へと戻る。


だが「ぐぉぉおおお」と大猿が声を上げてペアーズに刀を横振りする。


間一髪のところでペアーズは刀を使って攻撃を受けたが耐えられずに吹き飛ばされた。


大猿が二人に止めを刺すべくゆっくりと近付く。


何とかしたいが、ウィズの治癒には時間が掛かる。


おしまいかと思ったが、大猿の頭に矢が飛んできて突き刺さった。


ヒロだろうか?


大猿にダメージが入っているようには見えなかったが、頭に何か刺さったのは分かるらしく頭をかくような仕草で矢を見つけ引き抜いた。


ほぼそれと同時に木の陰からヒロが現れたリロイの前に着地する。


「リロイ、武器はいいからこれ持ってて。中身を絶対に壊さないように護るのとオーガの手当てを」


そう言ってヒロが荷物を足元に置くと大猿とリロイの間に立った。


いったい何をするつもりだろう。


ヒロ一人でどうにかできるとは思えない。


「オーガ達聞いてくれ!今から見るのはお前たちを救うためだ、だからなにも言うな!」


そう叫ぶと大猿が頭に刺さった矢はヒロの仕業と気付きヒロに近付いてくる。


その時だ。


猫又の姿に戻ったケティが大猿の後ろから飛びかかり首に噛みついた。


大猿は驚いたが、すぐに引き離そうとケティの顔を掴む。


それでも必死にしがみついて離れないので、今度は殴ったり暴れたりし始める。


そのタイミングでヒロが跳躍強化を使って大猿目掛けて一直線に突っ込んでいった。


ジャンプの勢いで、先ほどペアーズがつけた傷口に手を突っ込む。


「ぎぁぁぁあああああああああああああああああああ」と大猿が大声を上げ、今度はヒロを攻撃しようとした時にはヒロは大猿の体を使って大きくジャンプした。


それを見て大猿がまた吠える。


しかし、急に動きが止まると膝をつき大量の吐しゃ物を吐き出した。


後はそのままケティがクビを噛みちぎり大猿は動かなくなる。


そうか、あれはヒロがオグに使っていた技だ。


恐らくは大量の魔力を使って大猿の内臓を振動させたのだろう。


傷口に手を突っ込んだのは魔法の有効範囲が狭いので外皮に邪魔されないように直接内臓を触ったのだ。


緊張状態が解けてフラフラと膝をつくと「ちょっとちゃんとやってよ」とウィズに叱られた。

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