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異世界転生して人外娘と恋がしたい!  作者: こま
第三章 囁く狼
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新しい依頼

「暑いよ~」


暑さで今にも液状化しそうなほどのだらけさでセラが机に突っ伏する。


その横にはほんのり湯気を出したオグ、それに濡れタオルをかけるヒロ。


ケティに限っては机の上でお腹を見せて仰向けでぐったりしている。


この世界に転生して何カ月がたっただろうか。


サザラテラは今夏真っ盛りでとてつもなく暑い。


温度計が無いので具体的な温度は分からないが、恐らくは異常な暑さというわけでもないだろう。


現に他の冒険者たちは普通に冒険に出ているし、皆働いている。


だが、この世界には冷房がないので暑さになれないとなかなかに辛い。


「あと一回だけ、あと一回だけお願いニャ」


「――氷の霧フリーズミスト」


ケティの懇願に答え、セラの魔法で発生した氷の霧により部屋が涼しくなる。


「あぁ天国……」


「ニャー、一生こうしていたいニャ」


各自、歓喜の声を上げるがその時間は長くは続かず、またすぐに部屋は暑くなる。


むしろ氷の霧のせいで蒸し暑くなった感さえある。


「リロイまだできそうにない?」


「もう少しだから待って」


そう言ってリロイは机の上に工具を広げて鳥かごを弄っていて、その横でアストリッドはタオルを持ってリロイの汗が机に落ちないように拭いている。


この二人は本当に仲がいいな。


「よし、出来た。後はこの魔法石に魔法をセットしてこっちの籠の上に手をのせて魔力を入れたら完成だよ」


リロイに言われて、セラが立ち上がりリロイが改造した鳥かごの上に手を置く。


「どのくらいすればいい?」


「とりあえず魔力200くらいで試してみよう」


セラの手から魔力が流れているのか鳥かごの上から薄いの光が流れていき、鳥かごの中心に入った少し大きめの魔法石が輝きだすと冷気を発生しだした。


「うん。上手くいったみたいだ。」


「やったわねリロイ」


満足そうなリロイにアストリッドが称賛の声をかける。


ヒロをはじめ他の仲間たちは鳥かごを囲み、訪れた至福の時をかみしめていた。


リロイに作ってもらったのはヒロが考案した冷房機。


エルフの里でエルフ達はビニールハウスのようなものを魔法による結界で作っていて、その維持は魔法石に魔力を蓄えて供給するものだった。


それにヒントを得て魔法石に氷の霧をセットして魔力を供給したのだ。


しかし魔法石に魔力を供給するのはいいのだが、魔法石は小さいサイズは安いが大きいのはかなり値が張る。


ヒロたちが買った少し大きめの魔法石は1ゴールドもした割に魔力を20程度しか供給することが出来なかった。


つまり街灯に使われている灯りの魔法と比べ、氷の霧は燃費が悪いので5分程度しか持たなかったのだ。


そこでドワーフのリロイの知識と技術を使って、安いこまごまとした魔法石からメインの魔法石に魔力を供給する仕組みを作ってもらい全部を鳥かごに集約した。


空を飛べる妖精のアストリッドにお願いし輪っかの付いた杭を天井に取り付け、そこに縄を通して冷房鳥かごを取り付けた。


かごの魔力が切れた時にすぐに下せるように縄の反対側は2階の手すりに縛り付けてある。


ヒロが2階から降りようとした時にちょうどトントンとドアを叩く音がした。


「どちらさまですか」と、オグが立ち上がって扉を開ける。


「どうもこんにちは。ヒロさんは御在宅でしょうか」


「ヒロさんはいますかニャン?」


どうやら来客者は二人のようで、仲間たちは席を譲りオグが二人を座らせる。


一人はいつもニコニコとした笑顔がデフォルトの商人。


もう一人は三毛猫のケットシー。


二人はそれぞれ別の商業ギルドの人物で、ニコニコしている方がカシミール商会のアルノ。


そして、ケットシーの方がマイスナー流通のタマリだ。


タマリはエンシェントドラゴンを討伐し妖精の森に行かなければならない時にマイスナー流通のドラゴンを貸してもらった。


というか実際は費用を払うつもりだったのだが、カシミール商会というかアルノと仲がいい事を知っていたのか、初回はサービスして無料で運んでくれた。


「で、二人とも今日のご用件は?」


「実はですね今回は――」


「ニャーの要件が先ニャン」


アルノの話を遮ってタマリが椅子の上で立ち上がり話そうとする。


アルノはムッとした気持ちを顔に出す訳でもなく、タマリの頭を手で押さえて座らせた。


「ニャ、何をするニャン!」


「私が先に話しますのであなたは座っていてください」


両手でアルノの手をどかそうとするタマリにアルノは負けじと腕に力を入れる。


「ニャーはいつもそうニャン。収益一位のギルドだからって調子に乗り過ぎニャン」


「ヒロさんの家に先に来たのは私ですし、あなたはドアを叩かなかったでしょ」


「ニャーが叩こうとしたらニャーが小走りでやってきて叩いたニャン!」


仲がいいのか悪いのか、二人がわちゃわちゃともめていると人間サイズになったアストリッドが水を運んできて二人の前に並べた。


「そんなに熱くならないで。せっかく部屋が涼しくなったんだから二人も涼んだらどう?」


「そういえばなんか涼しいニャン」


「ヒロさんこの技術をぜひカシミール商会に」


「ニャ、また抜け駆けかニャン?」


アストリッドの言葉に話の内容は変わったが、また二人がもめだした。


というか、アルノはニコニコしたポーカーフェイスであまり感情を表に出さないイメージがあったが、ライバルがいるとこうもあからさまになるんだな。


とりあえず二人をなだめて話を聞くと、どちらもエルフの里の時の様にギルドで契約している仕入先を見に行ってほしいというものだった。


アルノは魔法都市、タマリは鬼の村を見てきてほしいということで報酬は同じ。


ヒロ的にはセラの件で弱みを握られているアルノの話を聞きたいし魔法の勉強の為に魔法都市にもいきたい。


だが、タマリは無料で妖精の森に運んでもらった恩があるし初回のお願いを無下にするのもなんか悪い気がする。


だが、悩んでいるとタマリのある話を聞いて鬼の村に行くことに決めた。


「ニャ!どうだニャン!?ニャーの勝ちニャン」


勝ち誇って再び椅子の上に立ちタマリがアルノを見下す。


アルノは何も言わずにヒロの方を見てくるが、セラの事はどうやら切り出してはこないようだ。


「わかってますよ。リロイ、アルノと隣へ行って冷房の商談をして」


「え?僕が?」


自分には全く関係ない話だと思っていたのか、リロイが驚いた顔をする。


「技術はリロイの物だから適任でしょ?収入の半分をパーティに入れてくれれば残りはアストリッドと二人で分けて」


「わかったよ。ありがとうヒロさん」


念のためにアストリッドが立ち会うようで二人が隣の部屋へ移動する。


アルノは何も言わずタマリを見ると「どうだ?」と言った顔でリロイ達の後をついていった。


「それじゃ、明日の朝にマイスナー流通に直接行くって事で」


「ちょっと待ってほしいニャ」


タマリとの話がまとまって話を終えようとすると、これまで黙っていたケティが急に話始めた。


「鬼の村に行くならニャーはいきたくないニャ」

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