大いなる実り
「よくぞ成し遂げました。」
身長10メートルほどあるこの巨体の女性は妖精の女王ティタニアル。
今ティタニアルを中心に、妖精の森の全ての者が今ここにいるだろう。
エンシェントドラゴンを倒したヒロたちは、正式に妖精の森に招待されたのだ。
ヒロたちはティタニアルの願いを叶えるためにエンシェントドラゴンを倒したのだが、ティタニアルはまだ願っていた元のサイズにはまだ戻っていない。
「それで、アストリッドの件はもういいんですよね?」
「えぇ、もちろんです。」
ティタニアルの答えに改めてリロイとアストリッドが喜び、互いを見つめ合った。
「それでは、ここに我々を呼んだのは別に用件が?お礼ならブルーフェアリーからもう聞いているのでわざわざ呼び出さなくてもよかったのに」
「いえ、あなた達に渡したいものがあるのです」
「渡したいもの?」
物をくれると聞いてあからさまな反応をしてしまって恥ずかしかったのだが、やはり妖精の女王から貰えるとなると少し期待をしてしまう。
「人間に、いえ、他種族に渡すのはこれが初めてです。これは歴史的に凄い事なんですよ。」
そう言って、ちゃんと感謝しなさいよと言った感じで青い光のを纏った妖精、ブルーフェアリーがヒロの目の前までやって来た。
「それで、何がもらえるんです?」
「願いを叶える権利です。」
「え?」
初めは言っている意味が分からなかた。
願いを叶える権利ならアストリッドの件で願いをかなえてもらっている。
つまり、もう一つ言うことを聞いてもらえると言う事だろうか。
ならば、頼みたいことは一つである。
ふと、遥か後ろの列にいるアウラウネの集団に視線をやる。
すると、この間のアウラウネが手を振ってくれた。
あぁ、あのアウラウネさんが欲しい
アウラウネと言っても、みんな同じ見た目というわけではない。
品種?というのか種族というのか知らないが、花びらの種類的にはこの森にいるアウラウネは同じなのだが、性格や見た目は人間と同様違うのだ。
ヒロのお気に入りのアウラウネは一言で言うと肉好きがよくエロ可愛い。
この森にいるアウラウネの中では比較的胸の大きい分類に入るのだが、それ以上におしりがエロい。
掴み取ってそのまま持ち帰って枕にしたいほど見事な見た目をしている。
しかも、お腹はパーフェクトボディとはいかず、少し肉が乗っている。
それがいい。
この娘を連れて帰って一緒に暮らしたい。
あ、あと、サキュバスの様に殺しに来ないようにしてほしい。
そんな願いを叶えてくれるのだろうか。
ティタニアル達がなにか話していた気がするか、アルラウネさんの方を見て妄想していたら話は何一つ入ってこなかった。
「それではいいですね?」
「え?」
「あなたに言っていませんよ。」
ブルーフェアリーの声に反応したら、どうやら自分ではなくアストリッドに言っていたようだ。
赤、緑、青色の大妖精がティタニアルを囲むように飛び上がり、その輪の中にアストリッドも加わる。
4人は妖精の粉を振りまきながら、ティタニアルを中心に回り始めた。
粉は虹色に輝き、やがてティタニアルに変化が起こり始める。
少しずつ小さくなっている。
そういえば、ティタニアルの願いは妖精の女王になる前の元の姿に戻りたいと言っていた。
それを今叶えるようだ。
やがてティタニアルの体が小さくなるのに合わせてティアラと薄い水色のドレスもサイズが変わっていく。
170センチくらいだろうか?
隣にロンが並び、同じくらいの身長になるとティタニアルの縮小は止まった。
こう見るともはやアウラウネと変わらないが、ティタニアルの下の花びらが開き下半身があらわになる。
勿論ドレスで秘部は見えない。
綺麗な白に近い緑色の足で花から出ようとすると、ロンが跪き用意していた靴を履かせた。
すると、残った花が光り輝き、小さい光の球体になるとティタニアルの手元へ浮いていった。
「これを受け取ってください」
ティタニアルから渡されたそれをとっさに受け取ってしまったが、いったいこれは何だろう。
「これは大いなる実り」
「大いなる実り?」
食べたら凄い魔力が得られるのかと思ったが、どうやらそうではないようだ。
ティタニアルの話では妖精の王がある程度の期間を森で過ごすと、森の魔力が集中し森が実を残すというのだ。
本来は妖精たちが住処を移すときなど、かなりの魔力を使う時に使われるもので、その実は簡単に言えば妖精の粉の完全上位版。
想像できるあらゆる願いを叶えることが出来るというのだ。
なので、妖精以外。
とくに悪しき心の持ち主には絶対に渡してはいけないと言われて来たのだ。
それを人間のヒロに託すというのはブルーフェアリーの言う通り、歴史的なことになる。
どんな願いを叶えるべきだろう。
ちなみに、願い受け付けてくれるのは今日一日だけだで、○○してくれ!みたいな簡単な願いだけで複数の条件を指定するような願いはできないという。
正直そうなら事前に伝えてほしかった。
仲間たちと相談する。
人を生き返らせる等の事はもちろんできない。
不老不死にすることはできるらしいが、どういう形での不老不死か分からないので怖くてできない。
ハルトの居場所を探すことに使いたいが、シルフに訊けば済む事なのでもったいなくて使えない。
金持ちにしてもらうなんていう古典的なことも考えたが、触ったものが金になるなどのある意味呪いのようなものにされても困る。
ちなみに、アウラウネさんを連れて帰る話だが、特にティタニアルにお願いしなくても仲間になりたいものがいれば自由に連れて行っていいと言われたので、お願いする必要もなかった。
あと、シルフがいたのでハルトの事を聞いたが『答えられない』の一点張りだったのでやはりハルト捜索に使おうとしたが、アポロとアルテミスがどう思うか分からないからやめた方がいいと止められてしまった。
結果的に、叶えたい願いはなかった。
というか、願いに対して結果や方法が分からないのが怖すぎる。
仲間たちはというと、ケティ以外はヒロに任せる。
ケティは美味しいものが食べたいということだった。
「願いは決まりましたか?」
「えぇ、もうこれしかないと思います」
「それでは願いをささげてください」
ティタニアルが大いなる実りを掲げ、ヒロが願いをささげる。
やがて光が大きくなり、その場にいる全ての者が光に包まれて何も見えなくなった。
――沢山の妖精達が手を振ってくれている。
ヒロたちは複数のドラゴンが運ぶ荷台に座る。
マイスナー流通に頼んで用意した移動用のドラゴンだ。
これなら妖精の森からサザラテラまで1日で着く。
「これうちのトマトだよ。帰ったらみんなで食べてくれ」
「ありがとうございます」
マサミチからトマトが入ったかごを受け取ってオグに渡す。
「セラちゃんまた顔を見せに来てね」
「エレナさんも元気で」
顔の近くまでエレナが飛んできて、セラの頭をなでる。
そういえば、二人も古い付き合いなのか。
「なにかあれば我々に頼ってくださいね。それとアストリッドをよろしくお願いします。」
別れを告げにロンがやってくる。
勿論その隣にはティタニアルが嬉しそうに手を繋いで微笑んでいた。
「もちろんですよ。それとアウラウネさんにまた会いに来ますね」
マイスナー流通のドラゴンが羽ばたき、荷台が浮かび始める。
「そうだ、これからは奥さんに楽させてやれよ妖精王!」
向こうが返せなさそうなほど離れてからヒロは大声でロンに声をかける。
照れ臭そうに頬を掻いたロンの背中には、ヒロの願いで妖精の羽が戻っていた。




