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異世界転生して人外娘と恋がしたい!  作者: こま
第一章 ゴブリンキング
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人間かゴブリンか

「何か来るニャ」そう言ってケティがオグの前に進み出て足を止める。


ゴブリン達の砦、ゴブリン砦に入りまず驚いたのは夥しい量のゴブリンの死骸が転がっていた事だ。


先に突入した冒険者たちが頑張ったのだろう。冒険者の死体も複数横たわっていた。


今現在、敵を察知できるケティと盾役のオグを先頭にセラ、ハルト、そして後ろを取られた時ようにヒロが最後尾について進んでいる。


砦の中は洞窟に近いと思ったが、かなり広く綺麗に整備されていた。


「ニャーが飛び出したらすぐ続くニャ」


「わかった」


T字路にぶつかり左側の通路から何か来るらしく、ケティがオグに確認する。


ケティがジャンプし壁を蹴り、高い位置から敵に接近。


それを見てオグが続いた。


すぐに「ぐぎゃぁ」と言う声が聞こえ、後を追うとゴブリンが数匹瞬殺されていた。


ゴブリン数匹ではこの二人の相手は荷が勝ち過ぎるようだ。


その後も順調に進み一階の大きな空間に出た。


3階まで吹き抜けになっているその場所には先に突入した冒険者の死体が転がっている。


そしてその中心には一匹のゴブリンが大剣を地面に突き立て佇んでいた。


かなりでかい――ホブゴブリンか?


そのゴブリンは身長が180センチほどあるので間違いないだろう。


だが一匹でここまで来た手練れの冒険者を倒した?そんな訳――。


「ブレイブ、スピリットブースト、跳躍強化、アイアンフィスト、幻影移動」


ケティが強化スキルをいつもより多くかけている。そんなにまずい相手なのか?


「ホブは頼むニャ」


ケティに言われ「うぉぉぉぉぉおおおおおおお」とオグがホブゴブリンに突っ込む。


次の瞬間、各階から弓を持ったゴブリンとワンドを持ったゴブリンが一斉に現れる。


この集中攻撃でやられたのかと気付いた時には、ケティが二階のゴブリンを十匹ほどアイアンフィストの効果で鋼鉄のようになった爪で引き裂いた。


だが、ヒロたちの所にもケティはまだいる。


二階のゴブリン達がバタバタと倒れた後、ヒロたちの所にいたケティがラグで挙動が狂ったゲームキャラクターの様にケティの行動を高速でなぞる。


幻影移動――術者が完璧ではないが攻撃を行うまで透明になり、その場に自身の幻影を発生させる。幻影は術者が攻撃するまで動かず、攻撃後に術者のそれまでの行動を高速で再現し次の攻撃までまたその場で待機する。


知っていないと何が起きたか分からずかなり混乱するスキルだ。


現にゴブリン達は誰に攻撃すればいいか分からず、ケティは一発の矢も魔法も撃たせることなく50匹近いゴブリンとゴブリンメイジを瞬殺した。


オグもオグでシールドバッシュでささっとホブゴブリンの体勢を崩し、ランドバスターを突き刺していた。


本当にこの二人は強い。


現にヒロ、セラ、ハルトの3人はゴブリン砦に入ってから何もしていない。


その後、4階に上がるまで何度か戦闘はあったものの二人が瞬殺し難なくたどり着く。


恐らく5階が存在したが、床をすべてぶち抜いたのだろう。


4階はとても広い一つの空間になっていた。


そしてその奥には如何にも王が座るといった巨大な椅子が置いてあり、そいつはそこに座っていた。


横にはゴブリンが一匹一緒に座っている。


その前には2匹のホブゴブリン。


さらにゴブリンシャーマンとゴブリンメイジも1匹ずついる。


「なんでこんな事するの?」


「ニャー、これは驚いたニャ」


そいつの一言にケティが驚くのも仕方がない。


ゴブリンキングだと思われていたそいつはどうみても人間だった。


歳は16歳くらいだろうか。


「僕たちはここで暮らしているだけなのに」


「まってこの人知ってる!」


ゴブリンキングを指さしてセラが前に出る。


セラを見てゴブリンキングも「ハンバーガーの女の子」と言って椅子から立ち上がる。


確かにこの男の子は見たことがある気がする。


あぁ――思い出した。


サザラテラでハンバーガーとホットドックを売っていた時に毎回10個ずつ買っていった男の子だ。


まさか彼がゴブリンキングだったとは……。


「先に俺たちから質問させてくれ。なぜ人間の君がゴブリンキングなんて呼ばれてるんだ?あと、なんで人間を襲ったんだ?」


「狼から身を護る為に集団で身を護っていただけだ。それなのに僕たちを攻撃するから反撃したんだ。それに僕はゴブリンキングじゃない」


「人間を襲ったから討伐が冒険者ギルドに依頼されたんだぞ」


「そうなの?」とゴブリンキングがホブゴブリンに話しかけると二匹とも首を縦に振った。


「ごめんなさい。僕はそんなつもりはなかったんだ」


ゴブリンキングの顔を見ると部下のゴブリン達がしていたことは知らなかったようだ。


「それで、なんで人間の君がゴブリンと共に行動しているんだ?」


「それは……」ゴブリンキングは隣にいるゴブリンを見て「転生して一人ぼっちの僕をゴブミが助けてくれたんだ」と言い、ゴブミと呼ばれたゴブリンを抱きしめる。


転生……マジか……。


「地球、日本、東京、この中に聞き覚えがあるものは?」


「え?」ゴブリンキングは驚いた顔をして「全部知ってる」と答えた。


初めて会った転生者がゴブリンキングか……。


さてどうしたものか。


「俺の名前はヒロ。君の名前を教えてもらえるかな?」


「僕の名前はユウタ」


「ちょっと待ってほしいニャ、その雌のゴブリン――もしかして妊娠しているニャ」


ケティに言われユウタの横にいるゴブミと呼ばれたゴブリンを見ると確かにお腹が少し大きい。


「そうだよ。もうすぐ僕たちの子供が生まれるんだ」


そういうとゴブミが「ぐるる」と甘い声を出しながらお腹をさする。


いや、マジかよ。


俺も人外好きだけどゴブリンは流石にレベルが高い。


ゴブリンと言えば歴史の資料で見た河童に似ている。


河童というより、35憶歳の毛が抜け落ちたおばあちゃんと言ってもいい見た目だ。


そいつを孕ませるとは尊敬する。


「本当はそこにいるボブやマイケル達の結婚式も一緒にする予定だったんだ」


ユウタがそういうとボブとマイケルと呼ばれたホブゴブリンはそれぞれゴブリンメイジとゴブリンシャーマンと手をつないだ。


ゴブリンメイジがナンシーでゴブリンシャーマンがジェシカ。


みんな英語の教科書から名前をつけたらしい。


他にも転生後の話を訊いたがどうにも悪いやつには思えない。


というよりもゴブリン相手とは言え、自分と同じ目標を達成した同種の人間だ。


「ここは山に穴を掘って作られた砦だ。見えない抜け道はあるのか?」


「あるよ。この椅子の後ろに」


「わかった。――みんな聞いてくれ」自分の仲間たちを見て「こいつを逃がす」と伝えた。


初めは動揺したが、全員黙って首を縦に振ってくれた。


しかしそんな上手くいくわけもない。


「どうなるかと聞き耳を立てていれば、それは流石にダメでしょう」


そう言われて後ろに振り向くと見知った4人が立っている。


ハリーのパーティだ。


「残ったのは兄さんと俺たちのパーティだけ。そいつを殺したら一人2ゴールド以上貰える」


「ならゴブリンキングは倒されたことにしてくれ。それと俺たちは金は要らないからあんた達のパーティで20ゴールド貰えばいい」


「それはいい話だな」そう言ってハリーは剣を抜き「でもそれで納得するわけないよね」と言って剣をこちらに向けた。


まぁそりゃそうか。


「なら追加で20ゴールド支払うのはどうだ?」


「もっとだ」


ハリーの言葉で横にいたランドも大剣を構える。


「ニャーとオークが相手をすることになるけどいいのかニャ?」


「そりゃ構わないよ。兄さんたちは狼相手に死にかかってた雑魚中の雑魚だ。あんたとオークだけ何とかすりゃ問題ない」


「ブハハ、オークの族長の息子とは楽しみじゃないか」


「ゴブリンと人間の子など禁忌でしかありません」


「――俺は共に戦うだけだ」


ハリー達は全員ヤル気の様だ。


セラが上衣の裾を引く。


震えている。確かに人間相手の切った張ったは俺だって怖い。


オグも少し動揺している。


「ニャーはニャーの決断を尊重するニャ」


ケティはどんな選択をするのかわかっているのだろう。


こちらを真っすぐ見て動揺がない。


戦いになったら間違いなくケティに殺しをしてもらわなければならない。


どうするか――いや、俺は彼らを助けたい。


「俺とネグの事知ってるんだからわかると思うけどさ、俺は種の違いってのは気にしない。むしろ違う種と結ばれることを素晴らしい事だと思ってる―――だから」


ユウタたちを見る。ゴブリン達も震えている。


それだけハリー達は強い。


「俺はハリー達と戦ってでもこいつらを助けたい」


「私を見て!」セラが前髪を上げ仲間たちに右目を見せる「私はハーフエルフ……だから私も違う種族同士の間の子供なの――だから私も助けてあげたい」


突然のセラの告白に動揺したが「僕だってお爺ちゃんは人間だから手伝うよ」とオグは言ってくれた。


ハルトの方を見る。前髪でわからないがハルトも恐らくヒロを見ている。


「ハルトお前は純粋な人間だろ。だからお前はお前の判断に任せる」


少し間をおいて「――俺も似たようなもんだから」とハルトも同意してくれた。


ケティが前に出て「ニャーは本当に面白いニャ」と言いながらこちらを見る。


今度はセラを見て「ハーフエルフなのは分かっていたニャ。それでもしやと思ったけど――こんな問題児ばかりの仲間を増やすとは思わなかったニャ」ケティがニコッと笑う。


「ニャー達ならきっとニャーも受け入れてくれると思うニャ」


ケティが両手両足につけた金色の腕輪を外す。


「魔法使いと大剣を持った戦士はニャーに任せるニャ。さぁヒロ、合図をするニャ」


ハルトに近づき耳打ちをする。


「そういう事なんで、交渉決裂でいいかな?」


「まぁそれはそれで仕方ない」


ハリーは嬉しそうに答える。


「――なら戦闘開始だ」

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