18.5 祝勝会
桝山商業との試合が終わった6時間後、俺達はニックの両親が営む焼肉屋にいた。八幡の伝統として、野球部は毎年一回戦の後に予約を入れているらしい。勝てば祝勝会、負けたら送別会になるんだと。
「息子からきいたよ、湊くん。本日無失点に抑えただけでなく、桝山の変則投手を模倣してバッティングピッチャーまで勤めていたんだってね。」
乾杯の挨拶を待っていると、ニックの親父さんから話しかけられた。ニックと同じく恰幅がよく、そしてかなり若い。
「ええ。でも、打てたのは皆の実力ですよ」
なお、バッピする時のボールは軟球にさせてもらった。硬球より軽いから俺の肩肘の負担が減り、柔らかく潰れやすい分バッターが芯を外せば変な打球になってどうミスショットしたかすぐ分かるからな。
「いや、あの模倣は凄かったっす。変則フォーム、完コピだったっすもん」
「そうだな、なんなら湊の方が球威があったかもしれん」
謙遜してみたが、匠と真田先輩が持ち上げてくる。そう言って貰えると頑張った甲斐があるな、幼い頃からコピー能力を磨いてきてよかった。
しかし、桝山商業はやっぱりすごかった。どこかで役立つかもと思って練習試合であえて出していた『偽物の癖』、対戦したことないのに竹中監督の見立て通り把握してたっぽいし……
ウチに竹中監督がいてくれて本当によかった。俺が戦術面に若干疎いのもあるけど、社会人野球経験者ってマジで凄い。
初戦まで多少の期間があったので、監督と協議後、今回は俺が相手をコピーして打撃投手を勤めるなどの変則フォーム対策をし、春のデータから相手の配球にヤマを張って、なおかつ相手が動揺した隙をついた結果コールド勝ちできた。
だが、次回はより手強く勝ち辛くなっている事だろうというのが俺と監督の共通認識である。
「じゃあ、乾杯する前に勝利の立役者から一言貰おうか。湊鴎賀君、どうぞ!」
うえ?!
OB会長から無茶ぶりがきた。謹んで辞退しようとしたが、先輩達からいけいけーとせっつかれる……えー、なんて言おうかね。
「では僭越ながら……皆さん、目の前のお肉は新鮮で大変美味しそうではございますが、しっかり火を通し、また生肉を触る『生肉専用トング』と焼けた肉を取る『箸』はキチンと使い分けましょう」
ん?って顔をする周囲。
いやいや、大切なんだよ感染症対策って。生肉に付着するカンピロバクターなどの細菌は、キチンと滅菌しとかないと食中毒を引き起こすからね。
なのに、体育会系の焼き肉って食欲旺盛すぎてその辺の管理がちょっとずさんになる事があるんだよな。早く食べたくて生焼けを口にしたり、生肉用のトングで皿にとったりね。
「何故なら、我々は今後、勝って勝って勝ちまくり甲子園へ行くからです。安全に美味しく焼き肉を頂き、明日からまた頑張りましょう!」
よしよし、それなりに纏まったな。拍手を貰った。
ありがとう……そして、ありがとう。
ちなみにこれは余談だが、焼き肉食べてすぐにお腹がゴロゴロする場合は、大抵が食中毒ではなく脂肪の消化不良や調味料の刺激によるものだ。
だから安心しつつ対策して、美味しく食べてくれよな!
今回はハメ手気味に勝ちましたが、次回はガチンコ!
4月25日に投稿予定です。




