14.5 秋空ダリアは筋にときめく
なんかつまんないな。
秋空ダリアは最近、そう思う事が多い。
現状に何か問題や不満がある訳ではない。
勉強はあまり得意ではないが、友達もいるし、テレビもみるし、オシャレにも興味がある。結局お断りしたが同級生から告白されドキドキした事もあった。それなりに楽しい人生を過ごしているとは思う。
だが、あくまで『それなりに』だ。
このままでいいのかな。このままなんとなくこの田舎の片隅で大人になり、そのままなんとなく一生を終えるのかな。もっと何かに夢とか持って頑張らないと勿体ないんじゃないかな……なんて悩む事が多々ある。
(でも、夢中になれるものも見つからないし、見つかってもあーし、苦しい努力とかぜったい嫌になる自信がある。でもなぁ……うー、なんかモヤる。)
それはあるいは思春期特有のモラトリアムで、いずれ落ち着くものかもしれないが、とにかく今、秋空ダリアはそういう状況であった。
二年生になってすぐの昼休み、ダリアがふと校庭に目をやると片隅にある鉄棒で一人の男子が一人で黙々と懸垂をしているのが見えた。
最後の数回は本当に体力の限界だったのだろう。ブルブルと震えながら身体を持ち上げ、その後一人で飯を食べていた。その姿が妙に印象に残った。
それから少ししたある日、よくつるんでいる友人がその男子に話かけた。今まで知らなかったが、どうやら彼は注目されている野球部員らしい。
ふと、心配になった。女社会では出る杭は打たれることが多々ある。この男子、もしかして周囲から嫉妬されハブられているんじゃなかろうかと。
「どしたん、話きこか」
心配からそう声をかけたが、
「お気遣いありがとうございます。でも、ハブられてるとかじゃないんで大丈夫ですよ。」
にべもなく断られた。あと、その時のテンションが妙に落ち着いているのが気になった。
多少自惚れが入っているかもしれないが、自分も隣にいる恋多き友人もルックスが悪い方ではない。だから、男子に話かけたら『女になんて興味ない』ようなふりをしている子もキョドったりデレデレする事が多いのだ。
しかし、目の前の子は全くそんな素振りを見せない。妙に余裕があるというか、なんだか大人っぽい。年下のはずなのに……解せない。
そんな事を思っていたら、プロテインの話題を振られた瞬間物凄い勢いとテンションで語り始めた。
その急な変貌ぶりに友人はドン引きしていたが、ダリアはギャップが面白いと感じ、それと同時に『え、なんかめっちゃ賢いじゃん。すごっ』とか、『ああ、この子には夢中になれるものがあるんだなぁ、いいなぁ』なんて事を思った。
そういえば、野球部って毎日夜遅くまで頑張っているようだがそんなに楽しいものなのだろうか。ふと気になった。
「ねえ、野球部ってなんかみんなめちゃくちゃ頑張ってるけど、野球ってそんなに楽しいの?」
「あー、ごめんね鴎賀くん。あたし、そんなストイックに頑張った事って今までなかったからさ。ちょっと気になっちゃった」
我ながら浅い質問だと思うが、彼は先程までと違うキラキラした瞳で答えてくれた。よくわからないが、何かが湊くんの琴線に触れたらしい。
「野球部はキツイけど、楽しいですよ。特に高校野球は皆んなで甲子園を目指すお祭りみたいなもんです。野球部は女子マネージャーも募集していますので、興味があれば是非」
その後、友人達はちょっと変わった子だったね、とかアレはないわーとか言っていたが、ダリアは違う事を考えていた。
(そっかあ、マネージャーとかもあるのか…… それに『甲子園を目指す祭り』ってなんか楽しそうだなぁ……今、あたし自身に夢中になれるものがないなら、夢中になってる人に乗っかって応援するのもアリかも……?)
かくして彼女は野球部へ見学に出向く事になる。
ついでにいえば、ギャップがあって筋肉質な男子というのは、ダリヤ自身が未だ無自覚な彼女の『癖』でもあった。
次回、3月27日投稿予定です




