蛇足:ドバイ国籍取得IF+@
〜UAE国籍取得IFルート〜
「ふふふーん、ふふっふ〜ん」
中東の青空を軽やかに飛んでいく自家用ヘリ。そこから鼻歌交じりに下を見ると、砂漠都市にあるビル群のガラスが灼熱の太陽光を跳ね返していた。
操縦席に流れているのは『Beautiful Smile』 ーーゴキゲンな音楽である。
オッス、オラ、湊鴎賀。
日本育ちの現役メジャーリーガーだ。
しかし今の俺は日本人ではない。
昨年、UAE国籍を取得したからな。
なんでUAE国籍を取得したのかって?
愛する妻達のためさ!
過日、前世の妻との思い出に一区切りつけた俺。その脳裏に浮かんだのは高校時代、一緒に全国制覇を目指してくれた4人の女性の笑顔だった。
とは言え、結婚できるのって普通は1人だけじゃん?
『女の敵は女』なんて言葉もあるし、創作世界でさえハーレムが許されるのは男性向けのハイファンと歴史ジャンル武将ものと18禁小説だけ(偏見)だ。
一人の男を共有するなんて世界と作者が許しても、女性読者は許さない。それが出て来た時点でブクマだってはがれちゃう。なろう作家の皆は覚えておいてね(経験談)!
ってな訳で、『自分が本当に好きなのは誰なのか?』って熟考していたある日……なんとダリアパイセンと小梅ちゃんから同時に告白された。
元々仲が良かった二人、後腐れがないよう『どちらが選ばれても、両方選ばれなくても恨みっこなし!』という淑女協定を結んだ上で俺に好意を伝えることにしてくれたらしい。
あと、『とりあえずこのクソボケには自分達の気持ちを早めに伝えとかないと、いつまでも関係が進展せず別の女に掻っ攫われるんじゃないかと言う危機感もあった』と後で教えて貰った。
すみません、多分それ正解です……
で、告白された事に喜んで……そこからウンウン悩んでいるうちに気づいた。『こんなに悩むってことは俺、やっぱり二人とも大好きなんじゃーん』、って事に。
と言う事で、最悪ぶん殴られて両方から振られる事も覚悟の上で、『二人と結婚を前提に付き合いたい』という旨を伝えた。幸い、アテはあったしな。
高校時代、アンダー18ベースボール・ワールドカップに出場した時、参加した各国の選手達とは試合後に仲良くなってたんだ。皆、野球が好きだし正々堂々クリーンに戦ったからね。
で、その中の一人にUAEの王子様がいて、後日、メジャーで活躍するようになった俺に声をかけてきたわけよ。
『中東諸国はいま、スポーツ文化による国家ブランディングに命をかけている。その中核の一つを野球にしたいから、キミの力を貸してくれないか?見返りとして我が国の特別重要人物として遇するから』
ってな。
野球って年間150試合くらい開催できるから、他のメジャースポーツよりも興行・マネタイズ面で非常に強力なんだよね。
そう言えば前世でも2020年代から中東地域において『ベースボール・ユナイテッド』ってプロ野球リーグが発足していた記憶がある。
それで『素敵な案だと思うけど、ちょっと考えさせてくれ』って保留している間に、パイセンと小梅ちゃんから告白されたわけだ。
で、二人から了承して貰った後、王子に『UAE国籍くれるなら無償協力するで』って言ったわけよ。中東へ帰化し、便宜上イスラム教に改宗すれば『最大4人までの重婚』が合法化されるからね。
そこから先はトントン拍子に決まった。UAEって国籍取得が世界で一番難しい国なはずなんどけど、王族パワーって凄いね。
ちなみにその後、色々あった末に冬雪先生と夏日も妻に迎える事になった。
その結果、細川みたいな同級生だけじゃなく、竹中監督のような恩師や真田さんみたいな先輩、上杉みたいな後輩まで招待してUAEで盛大な結婚式を開く事に!
勿論、旅費やホテル代は全てこっち持ちにしてね。おまけに観光ツアーもセットでつけさせてもらった。
金は天下の周りもの。もちろん無駄遣いはダメだけど俺ちゃんってばこれでも結構稼いでいるから、こう言う時には景気良く使わないとな。
その甲斐もあってか、当日は皆、手荒く祝福してくれた。
式のライスシャワーの時なんかは野球仕込みの強肩でバシバシ米をぶつけてくるなどちょっと痛いくらいだったけど、きっとそれだけ祝福の気持ちを込めてくれていたんだろう。ありがたい限りだ。
俺は転生者ゆえ結構信心深いんだけど、その辺も問題なし。だって、キリストだろうがお釈迦様だろうがアッラーだろうが、世界中で信仰されてる宗教の神様ってもれなくいい神様だろうからな。好きな女性と幸せになれる宗教で楽しくナムナムすればいいだろう。
ちなみに、当然の帰結として日本国籍は自動喪失したんだけど、メジャーリーガーとして活動することは問題なし。サウジ国籍のパスポートでアメリカの就労ビザが再取得できたからな。
次回以降のWBCはUAE代表として出ることになる。きっと日本とも戦う事になりそこには複雑な気持もあるけど、高校時代からのライバル達と一発勝負のガチンコできるのも結構楽しみだったりする。
まあ、いいんじゃないかな。スポーツの本質って国威発揚じゃなくて楽しさと友誼だから。将来的にはUAE監督として世界一を目指す日が来るかもね。
そんなワールドワイドな今の人生に満足しているかと聞かれたら、迷わずこう答えるだろう。
『YES! 大満足です』
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〜蓄電池IFルート〜
「なんか、気づけばずっと一緒にいるよな俺達」
ふと思った事を隣にいる匠に話しかけた。
「どうしたんすか、藪から棒に」
「いや、中学、高校、プロと同じチームになって結局メジャーリーグやオリンピックでもバッテリー組んでるじゃん?」
先にメジャー入りしたのは俺だが、匠も後を追うようにFAで海を渡ってきた。そして今ではデビルズで再びチームメイトになっている。
「まあ、言われてみれば確かにお互いの嫁さんより顔を合わせてるかもしんないっすね」
流石にそこまでは……いや、あるな。
シーズン中の約200日に加えて、オフも合同自主トレとかで一緒にいるもんな。よく考えたら年間300日くらいは朝から晩まで一緒にいたわ。
「プロ野球選手って単身赴任も多いしなぁ」
「移動が多いから仕方ない所ではあるっすけどね」
だよなぁ。
だからだろうか、ひと昔前までは現地妻を囲うような野球選手も多かったときく。まあ、流石に最近そう言うのは殆ど無いらしいが。
「ところで匠さんや」
「なんですかな鴎賀さんや」
「新婚生活は上手くいってる?」
「心配ご無用っすよ。お・に・い・さ・ん」
「やめて、ぞわっとするんだけど」
そう、なんとコイツは我が妹、美波と結婚して戸籍上の義弟になったのである。しかも画数の縁起が良いとかで妻の姓を選択し、現在は湊姓というおまけ付き。
「彼女は快く送り出してくれてるっすよ、『お兄ちゃんと存分に仲良くしてきてくれ、かわりに色々楽しそうな写真は送ってね』とか言って」
昔は寂しがりやで俺にべったりだったのに、アイツも成長したなぁ……
少し寂しい気もするが、喜ばしい変化でもある。まあ、最近は小梅ちゃんと仲良しみたいだし色々と世界が広がったのだろう。
「てなわけで、彼女達に送るように一枚ツーショット自撮りどうっすか?ア・ニ・キ」
「いらんよ、試合や取材で散々撮られてるんだから。あと、その呼び方もやめて」
「じゃあ、アナタ」
「なんでやねん」
いやまあ、夫婦はバッテリーに例えられることもあるし、日本語的に間違ってもないんだけどさぁ。
「おっと、ふざける間にもうこんな時間っすね」
「よっしゃ、チームミーティングに行くか!」
「次の試合も頼むっすよ」
「こちらこそ、頼りにしてるぜ」
そんなこんなで、コイツとはこうやって時々ふざけつつも長年仲良く楽しくやれている。
腐れ縁は、今後も長いこと続いていきそうだ。
これにて完結となります!
湊鴎賀くんの物語に最後までお付き合い下さり、本当にありがとうございました。
これで貴方は、書籍換算で3冊をゆうに超える本作を読了した事になります。凄い!きっと全国に300万人いるなろうユーザーの中でも、トップクラスの野球通、科学的トレーニング通になっている事でしょう。
当初、15話くらいで終わる予定だった本作。
ですが皆様の応援のお陰で、尊敬する中村颯希先生の処女作『無欲の聖女は金にときめく』と同じ150話まで書く事に成功。やったぜ!
改めて、ご声援ありがとうございました&これからもよろしくお願いいたします。
ついでに、読了記念としてポイント、感想、レビュー等を一発かまして頂けると作者は味方がサヨナラホーンランを打った時の様に喜びます。
(*´ω`*)
追記:不定期更新で番外編始めました。4~5話くらい投稿予定。




