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その野球小僧、前世知識で鍛錬中につき  作者: いのりん


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96. アフリカの格言

 現在、プロ一年目のシーズンオフ。


 俺は、自分が現在持っているトレーニング知識や野球に関する知見を動画にまとめて、世界的に有名な動画配信プラットフォームにて無料公開する事にした。


「湊選手の準備ができました。それでは撮影始めまーす。3、2、1……」


 今後、結構膨大な量を、体系立てて、多言語字幕付きで投稿していく予定だ。そのためのスタッフも雇った。


「本日お伝えしていくのは『ブリッジ』です」


 ちなみにブリッジってなんぞやと言うと、仰向けに寝たところから両膝を立てて、両手は耳の横において、ふんっと身体を持ち上げる運動になる。


「もし、『世界中で最も大切な基礎エクササイズが何か?』と問われたら私はブリッジだと答えるでしょう。アスリートからデスクワーカーまで、満遍なく取り入れて欲しい種目です」


 というか、運動不足で肩こりや腰痛に悩んでいる人ほど、是非取り入れて欲しい。ウェブ小説家の人とかね。


 なぜかというと、人間って何も対策しないと段々背中側の筋肉が弱って背中が丸まってくるんだよ。で、そのまま固まっちゃう。


 ほら、生活って身体丸めることばかりじゃん?


 パソコンを打つ、テレビをみる、お料理に、靴紐を結ぶ。ぜーんぶ、前屈みばかりで、反らす動きは全くない。


 だからナウなヤングマンは背筋がピンとしてるけど、ご高齢に従い背中が丸まってくる人が増えていく。


 で、そのままの姿勢が続くと、背骨の間にあるクッションが後ろに押し出されて、ヘルニアとかにもなりやすい。


 困ったものだよな?

 しかし、その特効薬になるものがある。


 そう……ブリッジだ。自分の筋肉を使って、前屈み方向に歪んだ背骨の異常な配列を正しい位置に戻すってワケ。


 血流も良くなって、背中側の筋肉は満遍なく強くなる。体の前側の筋肉は逆に伸ばされて、しなやかな身体も取り戻せちゃう。


 長時間パソコン作業とかした後、のびーっと背伸びとかすると気持ちいいじゃん。ブリッジはあの上位互換。


 寝る前に布団の上とかで一度やってみたら、あなたの背中側の筋肉にはチカラが入り、お腹や胸や首の前側の筋肉はよく伸びること請け合い。加えて言うと、寝つきも良くなる。


 ちなみに『そんなんできんわ。筋肉をつけるための筋肉が、そもそもないんじゃい!』って人は身体が浮かなくても大丈夫。浮かそうと力を入れるだけで効果がある。


 身体が硬かったり痛かったりでそれも出来ない場合は、上半身なしでお尻だけ浮かすとか、壁に背中を向けて立った状態から壁に手を置いて上半身だけブリッジのポーズをするとかでもOKだ。


「と、ここまでがエクササイズとしての一般的なブリッジの説明になります。この先は、トレーニングも兼ねたアスリート向けの高強度バージョンを説明、そして実演していきますね!」


 なんでこんか事をするのかって?


 前世の俺の様に知識不足で努力がなかなか報われない運動部員が減ると嬉しいし、こういうアウトプットって自分の理解を深めるのにも記憶を定着させるのにも凄くいいからな。


 それともしかしたら、いつかこの動画で学んだ野球少年がチームメイトになる日が来るかも知れない。夢がひろがりんぐ。


 また、こうやって自ら情報発信していると時々嬉しい特典もついてくる。


「もし、ご視聴のされている中に専門家の方がいれば、是非こちらのDMにご意見、アドバイスなどを下さい」


 時々、各種分野について自分よりもずっと詳しい人からメッセージを貰えたりするのだ。


 前世知識のアドバンテージは、この先どんどん無くなっていくからね。プロ水準だと身長をはじめとした遺伝的な才能には乏しい分、今後も活躍していくためにはこういう繋がりを今まで以上に大切にし常に最新の理論でトレーニングしていく必要がある。


 そして幸い、今日までの間でも既に、メジャーリーグのレジェンドやスポーツに詳しい海外の大学教授なんかから非常に役立つ助言を頂くことができた。

 もちろんこちらからもお返しとして、相手に役立ちそうやデータや情報を色々と提供させて貰っている次第だ。


 海外の諺に、こう言うのがあるらしい。


『早くいきたいなら一人で行け。遠くへ行きたいなら皆で行け』


 俺は将来、海を渡って活躍したい。


 今はまだ遥か遠きメジャーリーグ。その頂点であるサイ・ヤング賞を取りたいし、WBCやオリンピックでも優勝したい。そのためにも、今後は世界中に頼れる仲間を作っていく所存だ。


 なにせ人間の集合知ってのはすごいからな、三人寄ればナントやらだ。もっと集まれば、海を渡るための船どころか宇宙船だって作れちゃうだろう。


「と言うわけで、今回の動画は以上となります。ご視聴頂き、ありがとうございました」



 無限の彼方へ、さあ行くぞ!

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